“日常”を切り口に社会課題解決や新しい価値創造を図るべく/小槻 博文
■ベンチャー・中小企業・NPOなどのコミュニケーション活動事例■
歩いたり走ったりするだけで社会貢献できる「Road+」をはじめ、最近では“興味”を軸にしたグループ型のSNS「Fablis」をリリースするなど注目のベンチャー企業・ダイマーズラボ株式会社。
今回は同社代表取締役の長野英章氏に、起業の経緯、サービスの話、そしてコミュニケーションの取り組みなど、さまざまな話を聞いた。
【インタビュー企画・実施】 「広報スタートアップのススメ」編集部
(運営会社:合同会社VentunicatioN)
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歩いたり走ったりするだけで寄付!?
もともと同社は、歩いた距離に応じてポイントを貯め、そのポイントをクーポンのほか寄付などにも交換・活用できるなど、社会貢献と健康促進を両立させることが出来るアプリとして「Road+(ロードプラス)」というサービスを展開するために起業したベンチャーだ。
東日本大震災の時、長野氏は関西にいた。何かしなければと思いながらも、何が出来るかわからないままに東北や関東に行っても意味がないため、では関西にいながらにして出来ることは何だろうかといろいろ考えた末に、寄付を集めようと考えたそうだ。
しかし「人間は対価を求める生き物であり、ただ街頭で募金を呼びかけてもなかなか集まらないことは以前の経験からわかっていた」と長野氏は語る。そこで「イエローバンド」をつくり、その収益を寄付に充てる形で動いたところ1,000万円くらい集めることが出来たそうだが、その一方で商品は一度購入したらそれでおしまいになってしまうため、継続的に寄付を集めるにはどうすれば良いだろうかと次第に考えるようになっていった。
そうしたなかで当時在籍していた企業での経験を通じて、企業に対して意義のある“広告商品”を提供すれば、継続的にスポンサーになってくれるのではないかと仮説を立てるとともに、ユーザーを巻き込むための仕掛け、つまりユーザー参加型の寄付広告をつくろうという考えに至った。そしてユーザーを巻き込むにはプラスアルファで何かをしてもらうのではなく、日常の行動を対価にするほうが適しているのではないかと思案した結果、「歩く」ことを対価に寄付する仕組みとして生まれたのが「Road+」だった。
メッセージやコンセプトこそ全ての源
現在の利用者数は約65,000人で、主なユーザーはランニング愛好家の30代の男性だそうだ。またBtoC企業を中心に現在までに累計6社ほどが寄付スポンサーとして協力している。
そうしたなかでユーザーに対するコミュニケーション活動については、大きくは潜在層に対してはパブリシティ活動を、既存層に対してはSNSを活用したコミュニケーションを中心に展開している。
まずパブリシティ活動については、随時メディアに対して情報発信を行っているものの、全体としてはローンチの際にきちんとメッセージやコンセプトを固めて、そのうえで情報発信を進めた結果、その時の報道がまた次の報道につながるなど、ロングテールで取り上げられる状況が続いているそうだ。
確かに発信する情報自体をきちんと固めておかなくては、いくら手段を尽くそうとも成果を得ることは難しいだろう。では具体的にメッセージやコンセプトの作りこみはどのように行ったのだろうか?
「“歩くを寄付化する”“日常の行動を寄付化する”“歩くことで寄付できる”など、そのメッセージを見聞きした際に直感的にサービスの世界観が伝わることが重要ですので、メッセージやコンセプト作りを2か月かけてじっくりと検討しました。その結果、きちんとメッセージやコンセプトを固めたおかげで『歩いただけで寄付できるってどういうことなのか?』と関心喚起につながり、メディアから取材をいただいたり、その気軽さが受け入れられて利用に結び付いたりなどしています。」(長野氏)
「もちろんKPIを追いかけることも重要ですが、初期段階ではそれ以上にコンセプトやメッセージをきちんと時間をかけて作っていくことが大切だと考えています。」(同)
一方既存層に対しては、寄付してもらっておしまいではなく、寄付がどのように使われたかなどの結果を、こまめにFacebookページを通じて報告するようにしている。メールなどのやり方も考えられるが、1:1のコミュニケーションを嫌うユーザーもいるため、Facebookページの方がユーザーのペースでコミュニケーションを取るのに適していると同社では考えているそうだ。
“テレパシー”のようなユーザー体験を実現すべく
このように「Road+」を軸に成長してきた同社だが、今後は「Road+」を安定成長させながら、2013年3月に開始した親しい友人同士が興味・関心を通じて情報をシェアし合うことが出来るSNS 「Favlis」の拡大に向けてより注力していく予定だ。
「30年後はデバイスが今よりももっと小さくなって脳の中に埋め込まれる形になり、“テレパシー”のような感覚で情報をやり取りする時代になると言われています。そうなると『あ、この風景良いな』と思ったら、その感情がそのまま友人に送られて、その友人が後日近くを通りかかったら『○○さんが気に入っている風景だ』と脳に信号が送られるといったようなことが当たり前になります。」(長野氏)
「その感覚を現在のデバイス、つまりスマートフォンで実現しようとすると、例えば映画情報がシェアされると、上映されている映画館がマッピングされ、そしてその近くを通ると『○○が上映中です』などとプッシュ通知が来るとともに、上映時間やチケット状況なども把握できるようにするなどのことが考えられます。」(同)
「このようにさまざまな情報を組み合わせて、そして最適なタイミングでデリバリーすることで“テレパシー”のようなユーザー体験を実現させるとともに、ひいては一人ひとりの人生の充実化につなげられるようなサービスに『Favlis』を成長させていきたいと思います。」(同)
“日常の行動”を切り口に社会課題の解決や新しい価値創造に向けて取り組む同社。今後これら新しい価値をどのように世の中へ浸透させていくのか、同社の手腕に期待したい。
歩いたり走ったりするだけで社会貢献できる「Road+」をはじめ、最近では“興味”を軸にしたグループ型のSNS「Fablis」をリリースするなど注目のベンチャー企業・ダイマーズラボ株式会社。
今回は同社代表取締役の長野英章氏に、起業の経緯、サービスの話、そしてコミュニケーションの取り組みなど、さまざまな話を聞いた。
【インタビュー企画・実施】 「広報スタートアップのススメ」編集部
(運営会社:合同会社VentunicatioN)
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歩いたり走ったりするだけで寄付!?
もともと同社は、歩いた距離に応じてポイントを貯め、そのポイントをクーポンのほか寄付などにも交換・活用できるなど、社会貢献と健康促進を両立させることが出来るアプリとして「Road+(ロードプラス)」というサービスを展開するために起業したベンチャーだ。
東日本大震災の時、長野氏は関西にいた。何かしなければと思いながらも、何が出来るかわからないままに東北や関東に行っても意味がないため、では関西にいながらにして出来ることは何だろうかといろいろ考えた末に、寄付を集めようと考えたそうだ。
しかし「人間は対価を求める生き物であり、ただ街頭で募金を呼びかけてもなかなか集まらないことは以前の経験からわかっていた」と長野氏は語る。そこで「イエローバンド」をつくり、その収益を寄付に充てる形で動いたところ1,000万円くらい集めることが出来たそうだが、その一方で商品は一度購入したらそれでおしまいになってしまうため、継続的に寄付を集めるにはどうすれば良いだろうかと次第に考えるようになっていった。
そうしたなかで当時在籍していた企業での経験を通じて、企業に対して意義のある“広告商品”を提供すれば、継続的にスポンサーになってくれるのではないかと仮説を立てるとともに、ユーザーを巻き込むための仕掛け、つまりユーザー参加型の寄付広告をつくろうという考えに至った。そしてユーザーを巻き込むにはプラスアルファで何かをしてもらうのではなく、日常の行動を対価にするほうが適しているのではないかと思案した結果、「歩く」ことを対価に寄付する仕組みとして生まれたのが「Road+」だった。
メッセージやコンセプトこそ全ての源
現在の利用者数は約65,000人で、主なユーザーはランニング愛好家の30代の男性だそうだ。またBtoC企業を中心に現在までに累計6社ほどが寄付スポンサーとして協力している。
そうしたなかでユーザーに対するコミュニケーション活動については、大きくは潜在層に対してはパブリシティ活動を、既存層に対してはSNSを活用したコミュニケーションを中心に展開している。
まずパブリシティ活動については、随時メディアに対して情報発信を行っているものの、全体としてはローンチの際にきちんとメッセージやコンセプトを固めて、そのうえで情報発信を進めた結果、その時の報道がまた次の報道につながるなど、ロングテールで取り上げられる状況が続いているそうだ。
確かに発信する情報自体をきちんと固めておかなくては、いくら手段を尽くそうとも成果を得ることは難しいだろう。では具体的にメッセージやコンセプトの作りこみはどのように行ったのだろうか?
「“歩くを寄付化する”“日常の行動を寄付化する”“歩くことで寄付できる”など、そのメッセージを見聞きした際に直感的にサービスの世界観が伝わることが重要ですので、メッセージやコンセプト作りを2か月かけてじっくりと検討しました。その結果、きちんとメッセージやコンセプトを固めたおかげで『歩いただけで寄付できるってどういうことなのか?』と関心喚起につながり、メディアから取材をいただいたり、その気軽さが受け入れられて利用に結び付いたりなどしています。」(長野氏)
「もちろんKPIを追いかけることも重要ですが、初期段階ではそれ以上にコンセプトやメッセージをきちんと時間をかけて作っていくことが大切だと考えています。」(同)
一方既存層に対しては、寄付してもらっておしまいではなく、寄付がどのように使われたかなどの結果を、こまめにFacebookページを通じて報告するようにしている。メールなどのやり方も考えられるが、1:1のコミュニケーションを嫌うユーザーもいるため、Facebookページの方がユーザーのペースでコミュニケーションを取るのに適していると同社では考えているそうだ。
“テレパシー”のようなユーザー体験を実現すべく
このように「Road+」を軸に成長してきた同社だが、今後は「Road+」を安定成長させながら、2013年3月に開始した親しい友人同士が興味・関心を通じて情報をシェアし合うことが出来るSNS 「Favlis」の拡大に向けてより注力していく予定だ。
「30年後はデバイスが今よりももっと小さくなって脳の中に埋め込まれる形になり、“テレパシー”のような感覚で情報をやり取りする時代になると言われています。そうなると『あ、この風景良いな』と思ったら、その感情がそのまま友人に送られて、その友人が後日近くを通りかかったら『○○さんが気に入っている風景だ』と脳に信号が送られるといったようなことが当たり前になります。」(長野氏)
「その感覚を現在のデバイス、つまりスマートフォンで実現しようとすると、例えば映画情報がシェアされると、上映されている映画館がマッピングされ、そしてその近くを通ると『○○が上映中です』などとプッシュ通知が来るとともに、上映時間やチケット状況なども把握できるようにするなどのことが考えられます。」(同)
「このようにさまざまな情報を組み合わせて、そして最適なタイミングでデリバリーすることで“テレパシー”のようなユーザー体験を実現させるとともに、ひいては一人ひとりの人生の充実化につなげられるようなサービスに『Favlis』を成長させていきたいと思います。」(同)
“日常の行動”を切り口に社会課題の解決や新しい価値創造に向けて取り組む同社。今後これら新しい価値をどのように世の中へ浸透させていくのか、同社の手腕に期待したい。