一人ひとりが伝道師となって支援・参加の輪を広げるために/小槻 博文
■ベンチャー・中小企業・NPOなどの広報・PR活動事例■
高校生の約7割弱が、自分が参加しても社会は変わらないと考えているそうだ。(※「高校生の心と体の健康に関する調査」)
そこでこの状況を打破すべく、子どもや若者が社会や自分に希望を持つことでもっと明るい未来をつくるために、高校生のキャリア学習プログラムや被災地の放課後学校を展開しているのが、認定特定非営利活動法人NPOカタリバだ。
【インタビュー企画・実施】 「広報スタートアップのススメ」編集部
(運営会社:合同会社VentunicatioN)
-----------------------------------
生き抜く力を、子ども・若者へ
NPOカタリバでは高校生を対象にしたキャリア学習プログラムの出張授業「カタリ場」と、被災地の子供たちのための学習支援と心のケアを行う放課後学校「コラボ・スクール」の2つの活動を中心に展開している。
なかなか高校時代から明確に将来のキャリアを考えている高校生は少なく、将来の目標に向かって取り組むこともほとんどないままに高校生活を過ごしてしまう高校生が大半だ。そこで「カタリ場」では、高校生たちと年齢が近い大学生や若手社会人をボランティアスタッフとして派遣して、1回2時間程度にてコーチング形式を採りながら将来のキャリアを考えるきっかけづくりを行っている。
一方「コラボ・スクール」は、東日本大震災の被災地の中でも特に津波の被害が大きかった宮城県女川町と岩手県大槌町にて放課後学校として運営されている。最近でこそ仮設住宅が出来るなど少しずつ環境が整備されつつあるが、震災直後は子供たちが勉強する場所は全くなかった。
しかし震災を理由に将来の夢をあきらめてしまうようなことは絶対避けないといけない。そこでまずは子供たちが勉強できる場所をつくろうということで、2011年7月に「コラボ・スクール」が開設された。「コラボ・スクール」では、従来の学習塾の代替機能として勉強を教えたりするほか、全国から集まってきたボランティアスタッフとの交流を通じて、キャリア学習につなげられればと考えているそうだ。
また最近は「コラボ・スクール」で学んだ子供たちから、今度は自分たちの手で復興に向けて取り組みたいという声が挙がり始めているという。そこでその実現に向けてどのように考え、どのように進めれば良いのかをプロジェクト学習という形でサポートもしている。
実務活動を行うための環境をつくるのが広報・PRの役割
「カタリ場」では、年間1,000人以上のボランティアスタッフを派遣し、累計約600校・約12万人の高校生たちに授業を行ってきた。設立当初は開催を申し入れることが多かったが、最近では学校側から依頼が来るケースがほとんどだという。
そうした中でボランティアスタッフ集めや受け入れ先探し、また活動資金集めなどさまざまな側面が考えられるが、カタリバにとっての広報機能の役割とはどのようなことなのか聞いた。
「学校はどうしても外部との交流が少なくなってしまいがちですので、私たちは“教室に社会を届ける”を合言葉に、学校外のさまざまな人々と学校、つまりボランティアスタッフや各分野の第一線でご活躍されている方など外部の方々と、学校関係者や教育委員会などの内部の方々との連携の輪を広げるべく、広報・PR活動に取り組んでいます。」(NPOカタリバ 広報ファンドレイジング部部長 山内悠太氏、以下同様)
「最終的にボランティアスタッフになってもらったり、学校側と調整したり、また支援を働きかけたりするのは事業部門ですが、まずは世の中にカタリバという存在を知ってもらい、そしてどのような活動をどのような想いで取り組んでいるのかを広く訴求する、つまり各種実務活動を行うための環境をつくるのが広報・PRの役割であり、重要な機能と位置付けています。」
具体的には全方位型のコミュニケーションとしてパブリシティや、WEBサイト・SNSなどのオンラインコミュニケーションを、また寄付者に対するコミュニケーションとして支援者への報告や、寄付者向けイベントの企画・運用などを行っている。
またクチコミを広げやすくするために会った人たちに渡せる広報ツールとして、ポストカードサイズのリーフレットやステッカーなどの制作も手掛けている。
オンラインコミュニケーションを軸にしながらインバウンドを
その中でも特に力を入れているのがオンラインコミュニケーションだ。WEBサイトやSNSなどオンラインを軸にしながら積極的に情報発信をしていこうと考えるとともに、現場の情報を出来るだけ発信することを特に意識していて、例えば「コラボ・スクール」においては、女川町・大槌町それぞれに広報スタッフを置いて、逐次生の情報を発信するようにしている。
なおこれは「コラボ・スクール」に限った話ではなく、広報部門には職員・スタッフが現在5名いるが、それ以外にも事業部門や現場にも広報スタッフを置くなど、関係者全員が広報マインドを持ち合わせていて、それをプロデュースするのが広報部門であるという位置づけで運営しているそうだ。
一方でメディアに対する能動的な情報発信はあまり取り組めていないという。但しオンラインにて積極的に情報発信することでメディアの目に留まり、そこから取材依頼が来るなど、インバウンドでの取材依頼は数多く舞い込んできているそうだ。
とはいえ、メディアの関心はどうしても被災地での取り組みということで「コラボ・スクール」に集中しがちであり、「カタリ場」に対しても同様に関心を持ってもらえるようにもっと働きかけていかなくてはならないと課題を感じている。
そこで同団体では広報・PR活動を推進するための人材採用を現在進めている。以前はインターン生を中心に実務を進めてきたが、インターン生はあくまでテンポラリースタッフであり、どうしても取り組める業務は限定的だった。しかしボランティアスタッフや支援者などを募るにあたり、広報・PR活動の効果が団体内に浸透してきていることから、その効果をさらに高めるためにリソースをきちんと投入しようという気運が高まっているとのことで、きちんと職員として広報・PR活動を推進できる人材を登用し、さらに活動の幅を広げていきたいとしている。
一人ひとりが伝道師となって支援・参加の輪を広げていくために
さらには職員やボランティアスタッフ、また寄付者など一人ひとりが伝道師となって、支援の輪・参加の輪を広げていくことが出来るように、その体制や仕組みをきちんと整備していきたいと考えているそうだ。その一環としてリーフレットやステッカーなどの制作はもちろん、Facebookページやtwitterの投稿を充実させ、それを職員やスタッフが周囲にシェアしていくなど、「一人ひとりがカタリバのことを伝えやすいような環境」をつくっていきたいという。
「私たちのような活動はやはり“共感”が全ての源泉ですので、なぜこのようなことに取り組むのかといった想いや、どのような取り組みを行っているのか現場の生の情報を大事にしながら、“共感”の輪を広げられるように取り組んでいきたいと思います。」
夢や希望を持ち、そして目標に向かって生きる若者が増えれば、現代のような卑しい社会などではなく、もっと希望に満ち溢れた社会に生まれ変わることが出来るのではないだろうか。そんな期待を込めながら、今後も同団体の活動をウォッチしていきたい。
高校生の約7割弱が、自分が参加しても社会は変わらないと考えているそうだ。(※「高校生の心と体の健康に関する調査」)
そこでこの状況を打破すべく、子どもや若者が社会や自分に希望を持つことでもっと明るい未来をつくるために、高校生のキャリア学習プログラムや被災地の放課後学校を展開しているのが、認定特定非営利活動法人NPOカタリバだ。
【インタビュー企画・実施】 「広報スタートアップのススメ」編集部
(運営会社:合同会社VentunicatioN)
-----------------------------------
生き抜く力を、子ども・若者へ
NPOカタリバでは高校生を対象にしたキャリア学習プログラムの出張授業「カタリ場」と、被災地の子供たちのための学習支援と心のケアを行う放課後学校「コラボ・スクール」の2つの活動を中心に展開している。
なかなか高校時代から明確に将来のキャリアを考えている高校生は少なく、将来の目標に向かって取り組むこともほとんどないままに高校生活を過ごしてしまう高校生が大半だ。そこで「カタリ場」では、高校生たちと年齢が近い大学生や若手社会人をボランティアスタッフとして派遣して、1回2時間程度にてコーチング形式を採りながら将来のキャリアを考えるきっかけづくりを行っている。
一方「コラボ・スクール」は、東日本大震災の被災地の中でも特に津波の被害が大きかった宮城県女川町と岩手県大槌町にて放課後学校として運営されている。最近でこそ仮設住宅が出来るなど少しずつ環境が整備されつつあるが、震災直後は子供たちが勉強する場所は全くなかった。
しかし震災を理由に将来の夢をあきらめてしまうようなことは絶対避けないといけない。そこでまずは子供たちが勉強できる場所をつくろうということで、2011年7月に「コラボ・スクール」が開設された。「コラボ・スクール」では、従来の学習塾の代替機能として勉強を教えたりするほか、全国から集まってきたボランティアスタッフとの交流を通じて、キャリア学習につなげられればと考えているそうだ。
また最近は「コラボ・スクール」で学んだ子供たちから、今度は自分たちの手で復興に向けて取り組みたいという声が挙がり始めているという。そこでその実現に向けてどのように考え、どのように進めれば良いのかをプロジェクト学習という形でサポートもしている。
実務活動を行うための環境をつくるのが広報・PRの役割
「カタリ場」では、年間1,000人以上のボランティアスタッフを派遣し、累計約600校・約12万人の高校生たちに授業を行ってきた。設立当初は開催を申し入れることが多かったが、最近では学校側から依頼が来るケースがほとんどだという。
そうした中でボランティアスタッフ集めや受け入れ先探し、また活動資金集めなどさまざまな側面が考えられるが、カタリバにとっての広報機能の役割とはどのようなことなのか聞いた。
「学校はどうしても外部との交流が少なくなってしまいがちですので、私たちは“教室に社会を届ける”を合言葉に、学校外のさまざまな人々と学校、つまりボランティアスタッフや各分野の第一線でご活躍されている方など外部の方々と、学校関係者や教育委員会などの内部の方々との連携の輪を広げるべく、広報・PR活動に取り組んでいます。」(NPOカタリバ 広報ファンドレイジング部部長 山内悠太氏、以下同様)
「最終的にボランティアスタッフになってもらったり、学校側と調整したり、また支援を働きかけたりするのは事業部門ですが、まずは世の中にカタリバという存在を知ってもらい、そしてどのような活動をどのような想いで取り組んでいるのかを広く訴求する、つまり各種実務活動を行うための環境をつくるのが広報・PRの役割であり、重要な機能と位置付けています。」
具体的には全方位型のコミュニケーションとしてパブリシティや、WEBサイト・SNSなどのオンラインコミュニケーションを、また寄付者に対するコミュニケーションとして支援者への報告や、寄付者向けイベントの企画・運用などを行っている。
またクチコミを広げやすくするために会った人たちに渡せる広報ツールとして、ポストカードサイズのリーフレットやステッカーなどの制作も手掛けている。
オンラインコミュニケーションを軸にしながらインバウンドを
その中でも特に力を入れているのがオンラインコミュニケーションだ。WEBサイトやSNSなどオンラインを軸にしながら積極的に情報発信をしていこうと考えるとともに、現場の情報を出来るだけ発信することを特に意識していて、例えば「コラボ・スクール」においては、女川町・大槌町それぞれに広報スタッフを置いて、逐次生の情報を発信するようにしている。
なおこれは「コラボ・スクール」に限った話ではなく、広報部門には職員・スタッフが現在5名いるが、それ以外にも事業部門や現場にも広報スタッフを置くなど、関係者全員が広報マインドを持ち合わせていて、それをプロデュースするのが広報部門であるという位置づけで運営しているそうだ。
一方でメディアに対する能動的な情報発信はあまり取り組めていないという。但しオンラインにて積極的に情報発信することでメディアの目に留まり、そこから取材依頼が来るなど、インバウンドでの取材依頼は数多く舞い込んできているそうだ。
とはいえ、メディアの関心はどうしても被災地での取り組みということで「コラボ・スクール」に集中しがちであり、「カタリ場」に対しても同様に関心を持ってもらえるようにもっと働きかけていかなくてはならないと課題を感じている。
そこで同団体では広報・PR活動を推進するための人材採用を現在進めている。以前はインターン生を中心に実務を進めてきたが、インターン生はあくまでテンポラリースタッフであり、どうしても取り組める業務は限定的だった。しかしボランティアスタッフや支援者などを募るにあたり、広報・PR活動の効果が団体内に浸透してきていることから、その効果をさらに高めるためにリソースをきちんと投入しようという気運が高まっているとのことで、きちんと職員として広報・PR活動を推進できる人材を登用し、さらに活動の幅を広げていきたいとしている。
一人ひとりが伝道師となって支援・参加の輪を広げていくために
さらには職員やボランティアスタッフ、また寄付者など一人ひとりが伝道師となって、支援の輪・参加の輪を広げていくことが出来るように、その体制や仕組みをきちんと整備していきたいと考えているそうだ。その一環としてリーフレットやステッカーなどの制作はもちろん、Facebookページやtwitterの投稿を充実させ、それを職員やスタッフが周囲にシェアしていくなど、「一人ひとりがカタリバのことを伝えやすいような環境」をつくっていきたいという。
「私たちのような活動はやはり“共感”が全ての源泉ですので、なぜこのようなことに取り組むのかといった想いや、どのような取り組みを行っているのか現場の生の情報を大事にしながら、“共感”の輪を広げられるように取り組んでいきたいと思います。」
夢や希望を持ち、そして目標に向かって生きる若者が増えれば、現代のような卑しい社会などではなく、もっと希望に満ち溢れた社会に生まれ変わることが出来るのではないだろうか。そんな期待を込めながら、今後も同団体の活動をウォッチしていきたい。