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コンピュータで制作した3Dモデルをそのまま出力できる「3Dプリンター」は、製造業を始めとした様々な分野で大きな話題を呼んでいる。フィギュアやアクセサリーなどの小物から、自動車のエンジン部品、さらには「Urbee2」のように車体全体を3Dプリンターで作ろうという試みもある。建築分野でも3Dプリンターは注目されており、「D-Shape」という製品が登場している。多くの3Dプリンターと同じく、D-Shapeはレイヤーを重ねながら造形する方式をおとっており、まずコンピュータで作った3DCGモデルが、5mm刻みのレイヤーに分割される。そして、D-Shapeから一層分の砂がシート状に敷かれ、必要な箇所に凝固剤が噴射され固められる。そして、また次の層が敷かれて、凝固剤が噴射され……というプロセスを繰り返し、最後に余分な砂を払えば、造形物が得られるというわけだ。

このD-Shapeを使って、月面基地を作ろうというアイデアも出てきた。イギリスのフォスター+パートナーズは、ESA(欧州宇宙機関)と協力して、計画の実現性を検討することを発表。この計画では、ロケットによって3Dプリンターと筒状のモジュールを月面に運ぶ。筒型モジュールの端からエアドームが膨らまされ、このエアドームを覆うようにして3Dプリンターで壁を印刷していく。壁の材料となるのはレゴリスと呼ばれる月の砂である。壁は、放射線や隕石、急激な温度変化を防ぐために、細かな空間に区切られたセル状構造になっている。セル状構造の例としては鳥の骨が挙げられるが、こうした構造にすることで、軽量さと強靱さを両立することが可能になる。

すでにレゴリスを模した月の模擬表土で1.5トンの壁は印刷されている。現在は、月の環境に近づけた真空チャンバーを使って3Dプリンターのテストが行われているという。

(文/山路達也)

記事提供:テレスコープマガジン