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ダイヤモンドといえば天然で最も固い物質だが、それを上回る硬度を持った物質が開発された。中国の燕山大学、吉林大学、米国のシカゴ大学、ニューメキシコ大学などの研究チームが発表したこの新物質は無色透明で硬度が高い点は、ダイヤモンドに似ている。しかし、ダイヤモンドが炭素で出来ているのに対し、新物質はホウ素と窒素でできた「ナノ双晶型立方晶窒化ホウ素」なのである。
物質の「硬さ」にはさまざまな基準があるが、最も広く普及しているビッカース硬度は、正四角錐のダイヤモンドを計測する対象物質の表面に押し込んで、できたへこみから硬度を算出する。人工ダイヤモンドのビッカース硬度は100GPa(ギガパスカル)、ナノ双晶型立方晶窒化ホウ素は108GPa。天然ダイヤモンドは70〜150GPaなので、それよりはやや劣る。窒素とホウ素でできた物質としては立方晶窒化ホウ素という物質があり、すでに商品化もされているが、ナノ双晶型立方晶窒化ホウ素はこれの2倍以上硬いということになる。

ナノ双晶型立方晶窒化ホウ素は、窒化ホウ素のナノ粒子から作られる。このナノ粒子は窒素とホウ素の原子がタマネギのように層状になっており、ペレットに押し込め1800℃の高温で圧縮すると、ナノ双晶型立方晶窒化ホウ素になる。

研究を主導した燕山大学のTian博士によれば、超硬度の物質を作成するため、従来の研究では個々の粒子の間隔を狭くしており、粒子同士の距離が一定の値(約10ナノメートル程度)を超えると構造が弱くなるという欠点があったという。

これに対して、今回の研究ではナノ双晶構造を用いているのが特徴だ。双晶というのは2個以上の結晶が、ある幾何学的な規則性で一体として結合しているもののこと。ナノ双晶構造を持った窒化ホウ素は、粒子間の距離が平均3.8ナノメートルでも安定した硬度を示す。

窒化ホウ素は硬度以外にも、メリットがある。ダイヤモンドは高温の環境では鉄などの金属と化学反応を起こすが、窒化ホウ素は高温でも安定している。そのため、これまでダイヤモンドドリルが使えなかった材質の加工など新たな利用の可能性が考えられている。

(文/山路達也)

記事提供:テレスコープマガジン