『タリウム少女の毒殺日記』の土屋豊監督と依田巽チェアマンが登壇

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第25回東京国際映画祭「日本映画・ある視点」部門作品賞受賞作品『GFP BUNNY タリウム少女のプログラム』(公開タイトル『タリウム少女の毒殺日記』)の記者会見が11月12日、日本外国特派員協会で行われ、依田巽チェアマンと土屋豊監督が登壇。土屋監督が外国特派員からの質疑に答えた。

【写真を見る】2005年に実際に起きたタリウムによる母親毒殺未遂事件をモチーフに描く衝撃作『タリウム少女の毒殺日記』

本作は、2005年に実際に起きたタリウムによる母親毒殺未遂事件を起こした“タリウム少女”をモチーフに描くメタフィクション映画。フィクションと並行して、実在の科学者や専門家の解説を交える斬新な構成により、独自の世界観を展開している。インディーズ映画シーンの最先端を紹介する「日本映画・ある視点」部門で見事、作品賞を獲得した。依田チェアマンは「意表をついた独創的な作品。是非、こういう監督が巣立って、成功してほしい」と激励、固い握手を交わしていた。

本作は医療、デジタルなど科学技術が進歩するなかで、“タリウム少女”を通して生き物の本質を探ろうとする意欲作だ。物語の着想はどこから来たのか尋ねられると、土屋監督は「(事件を起こした)彼女のブログがまだ読めるようになっているので、その日記から読み取れる印象を基に、彼女の考え方や世界観を想像して。2005年の彼女を2011年に持ってきた場合、彼女がこの世界をどう見るだろうかと考えて作り上げていった」とフィクションであることを強調。「彼女の観察者としての視点に興味を持った。蟻やハムスターと同じく、等価でお母さんを観察しているのではないかと。今の社会は、どんな思想を持っていようと、人間をデータでとらえて、等価として数値的に判断している。そこが、僕の想像する“タリウム少女”の視点と重なった」と発想力の源を教えてくれた。

東京国際映画祭の授賞式でも、日本のインディーズ映画における苦しい現状を訴えていた土屋監督。本作の配給宣伝費も、小額の寄付金をインターネットを通じて募るクラウドファンディングシステムを使って調達している。完成までにも紆余曲折があったようで、「(本作の)前バージョンとして『NEW HELLO』という企画があって、マーケットに出すことができた。物語がしっかりとあるドラマとして作っていたが、資金が思うように集まらなくて。自分の作りたいものと違うなという思いもあった」と述懐した。

続けて「その頃は勘違いをしていて、映画としてお金を集めるためには、無理してでも映画のフォーマットに則ったものを作らなければお金が集まらないと考えていた。お金が集まらなくてムカついていたこともあって(笑)。その反動から、映画を作りたいというよりも、映画自体のフォーマットを壊していきたいということが自分のやりたいことなんじゃないかと初心にかえって作った」と、映画作りへの思いを明かしてくれた。

大胆な発想と構造の下、映画の可能性にチャレンジした本作。土屋監督は「クラウドファンディングに頼らなければいけない現状を嘆く面も、ポジティブに思う面もある。色々な支えのシステムを組み合わせてやっていくのが健全なやり方だと思っている」と語り、「今週の金曜日がデッドラインで、あと80万円必要なんです」とアピールした。インディーズ映画の持つ、ほとばしる熱意やエネルギーこそが映画文化の発展を担っている。2013年春の公開が決定したものの、現在もクラウドファンディグ中!是非これからも本作の旅路を見守っていきたい。【取材・文/成田おり枝】