2011年の1年間に発生した従業員の30日以上の休業原因は「メンタル疾患」が68%で最多となっていることが、メンタルヘルスケア対策、就業障がい者支援事業などを展開するアドバンテッジリスクマネジメント(東京・目黒、鳥越慎二社長)が、14日に発表した「企業における長期休業者に関する実態調査」で分かった。

 ケガや疾病などの就業障害により30日以上の休業に至ったケースのうち(1200例=男性791例、女性409例/各年100例を無作為に抽出)、休業の原因として「うつ病」を中心とするメンタル疾患の割合が68%と半数以上を占める結果となった。

 過去の数値と比較すると、2009年の71%をピークに、直近2年間ではメンタル疾患の割合は若干低下傾向にあるが、依然として高止まりしている。次いで多かった休業原因は「がん」(8%)、「脳疾患」(5%)、事故・外傷(4%)となっている。「その他」は15%だった。

 こうした傾向について同社では、「メンタル疾患による休業が他の年代に比べて多い若年層の割合が、就業労働人口の高齢化により減少していることなどにより、『がん』『脳疾患』などのフィジカルな疾患に対するメンタル疾患の比率が下がっていることや、企業のメンタルヘルスケア対策の浸透してきている」ことなどが影響していると推測している。

 一方、2000年から2011年までの期間、メンタル疾患を除いたフィジカル(身体)な病気やけがを原因とする1.5年以上の長期休職者のうち、1.5年以上3年未満の割合は59.6%となった。しかし、5年以上の休業者12.3%、3年以上の休業者28.1%と合わせると長期間の休業者が40.4%を占めており、身体的な病気やけがで一度就業不能状態に陥ると、長期にわたり職務に復帰できない状態が続いてしまうことが判明した。

 メンタル疾患で長期にわたり休職する従業員が増加している一方で、休職して一度復職した後に再び欠勤や休職を繰り返す従業員への対応に悩んでいる企業も多い。 こうした従業員への対応について、企業の労務問題に詳しい安西法律事務所の梅木佳則弁護士は次のように話す。

 「メンタル疾患の場合、長期欠勤するのではなく、断続的に欠勤することも珍しくありません。この場合、就業規則の規定がたとえば『2カ月以上欠勤を続けたとき』に休職とするとあるだけでは、休職を命じることは容易ではありません。断続的に欠勤する社員に対して休職を命じることができるように、たとえば、?『同一または類似の事由により欠勤する場合の欠勤期間は前後通算する』との規定を設けたり?休職を命じることができる場合として『その他前各号に準じる事由があり、会社が休職させる必要があると認めたとき』を挙げておく必要があります」

 就業規則を変更する場合は、就業規則の不利益変更に当たり得るが、変更の合理性が認められた野村総合研究所事件(東京地裁平成20年12月19日判決)の判例も出ている。欠勤や休職を繰り返す従業員が出ると、周囲の従業員に対する影響が大きいため、就業規則の見直しは欠かせない対応の一つとなっている。

[人材採用・育成の人事専門誌「日本人材ニュースHRN」Vol.156(2012年9月14日発行)より転載] ※記事の内容は取材時点のものです。

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