日中外交ばかりが注目を集めているが、野田内閣の「親米路線」の本質が、対米服従であることが、3回連続の服従で露わになった。第一は、原発ゼロ問題だ。
 野田総理は、民主党代表選挙に立候補するにあたって「2030年代に原発稼働ゼロ」を打ち出した。ところが、9月19日に閣議決定された環境・エネルギー戦略は、大まかな方針を示すだけにとどまり、原発ゼロ目標は参考文書に格下げされてしまった。
 突然の方針変更は、閣議決定の直前に、アメリカ政府が原発ゼロ目標を見送るよう圧力をかけてきた結果だ。アメリカの原子力産業は、共同事業といってよいくらい日本の重電メーカーと深く結びついている。日本だけが勝手に降りることは許さないというのが、アメリカの言い分なのだ。
 しかし、原発ゼロというのは、福島の事故以来、政府が国民との対話を積み重ねて出した結論だったはずだ。それがアメリカの一言でひっくり返った。それどころか、政府が言い続けてきた原発の新設は行わないという方針も、「地元と協議のうえ判断する」と大きく後退してしまったのだ。

 第二の対米服従は、オスプレイ配備問題だ。9月21日に森本敏防衛大臣は、「オスプレイの運用上の安全性を確認した」として、運用を容認する考えを示した。これを受けて、米軍は岩国基地での試験飛行を始めた。今後、オスプレイは沖縄県の普天間飛行場に配備され、全国で低空飛行訓練を行うことになる。
 なぜ運用上の安全性が確認されたのか、根拠がまったくわからないうえに、配備に明確に反対している沖縄県の意向を無視しての強行突破だ。また、米国内では低空飛行訓練を中止しているのに、日本ではそれをやる。しかも、オスプレイがいつどこを飛ぶのかは、日本側には一切明らかにされない。こうなると、日本の扱いは、占領地以外の何ものでもない。

 そして第三の対米服従は、金融緩和の先送りだ。米国は、9月13日にQE3と呼ばれるリーマンショック後第3次となる金融緩和に踏み切った。FRBが、住宅ローン証券などを毎月400億ドル(3兆2000億円)ずつ、無期限で買い続けるのだ。これによって、為替は1ドル=77円台の超円高に突入した。さすがにこの為替では日本経済がもたないので、日銀は金融緩和を繰り上げて実施した。
 9月19日に資産買い入れ枠の10兆円増額を決めたのだが、買い入れ期限は、来年の12月末だった。1年4カ月もかけて、のんびり緩和をしても効果はない。案の定、為替は1ドル=77円台に戻ってしまった。
 日銀が思い切った金融緩和に踏み切れない一つの理由は、米国への配慮だといわれる。アメリカがドル安を望んでいる以上、ドル高につながる金融緩和はできないというのだ。
 しかし、もはや為替相場をコントロールしていない国は、日本だけになった。このまま何もしないでいると、日本経済は円高でつぶれてしまう。

 外交交渉というのは、相手があることだから、何でもかんでも思い通りになることはあり得ない。何かを譲ったら、何かを取る。ギブアンドテイクが原則だ。ところが、いまの日本政府の対米政策は、ギブギブギブで、テイクがない。
 日中関係にばかり目を奪われて、対米服従ばかり続けていると、日本経済はやがて破滅するだろう。