被災者の心を響かせた話題の創作童話がCDブックに

写真拡大

 ある牧場で生まれた3頭の子馬。
 1番目のお兄さん馬は、元気で走るのが大好きな馬です。2番目の真ん中の馬は、足は遅いけど身体が大きくしっかりしています。そして、3番目は生まれつき身体が弱く、長生きできるかどうかわかりません。
 3匹の馬は大きくなり、それぞれが一番得意な仕事をするようになります。お兄さん馬は競馬で活躍、真ん中の馬は大きな体を生かして山越えをしたり馬車をひいたりします。しかし、3番目の馬は自分が何にも役に立てないことをいつも心苦しく思っていました…。

 これは、主婦の友社から出版されたCDブック『光になった馬。―たったひとつの―』(EPO/著)に収録されている創作童話「光になった馬。」の冒頭のあらすじです。
 3番目の馬は、自分が何の役にも立てないと思い込みながら息を引き取ります。しかし、神様から翼をもらい、空の上からのぞいてみると、自分の亡骸の隣で悲しむ家族や大勢の人たちを見て、自分はどれだけ愛されていたか気づきます。
 果たして、3番目の馬は幸せだったのでしょうか? 著者で歌手、セラピストとしても活躍しているEPOさんは、ポッドキャスト番組「新刊ラジオ」で次のように話します。

EPO「私自身が、人はどうして生きているのかということを、仕事柄考えることが多いんです。よく『なんで生きなきゃいけないと?』と聞かれることがあるんですが、、それを探すのが人間の目的というか、『なんで生きていなきゃいけないの?』というのを考えることが、生きていることの目的だと思うんです。
このお語の中の3番目の馬は何の取り柄もなくて、『いいなあ、お兄さんたちは』ってうらやましがっているけれど、実は何もしなくても愛されている、無条件の愛に包まれて存在していたんですよね。ただ、それが生きているときには気づけなくて、亡くなったあとに俯瞰してみて、自分は愛されていたんだと気づくんです」


 また、俳優で、付録CDに収録されている「光になった馬。」の朗読を担当している宮川雅彦さんは、同じく新刊ラジオ内で、童話とともに描かれている絵について言及します。

宮川「2番目のお兄さんが(3番目の馬に)『一番可愛がられているのはお前の方さ』と言うくだりがありますよね。僕はあの辺がすごくホッとするんです。絵がすごくいいんですよね。3番目の馬が花や鳥たちと一緒に描かれているこの絵が、一番のポイントかも知れない」

 自分は役に立っていないけれど、みんなから愛されていた3番目の馬。ブックナビゲーターである矢島雅弘さんの「どうしても人は世の中の役に立ってなければいけないと思ってしまう」という言葉に、EPOさんはこう答えます。

EPO「人の役に立つようにしろ、自分より人のことを考えろといわれて、頑張ろうとしちゃうと、壊れてしまうんですよね。だからまずは自分が一番幸せであるということに気づくこと。自分を大切にするということができないと、他人も幸せにすることはできないと思います」

 自分が周囲に幸せを振りまいていたということに、3番目の馬は気づくのが少しだけ遅かったのかも知れません。この創作童話は様々な感情を読者にもたらしてくれます。

 本作は、今年5月末、東日本大震災で愛する子どもを失った宮城県の女性が、ラジオで放送されたのをたまたま耳にし、「昔話を探しています。」と投稿サイト「発言小町」に投稿。それをきっかけに作者探しが始まったというサイドストーリーを持つ作品です。
 もともと、2007年にEPOさんのファンクラブ通信で掲載され、「うたいかたり」というシーンの中で、本作の朗読とCDに収録されている「たったひとつの」とともにカップリングで演じられているそうです。

 自分の生きている意味とは何か? 本当の幸せとは何か? テキストと朗読とCDから、読者に訴えてくる作品です。
(新刊JP編集部/金井元貴)

■EPOさん&宮川雅彦さん出演「新刊ラジオ」はこちらから
http://www.sinkan.jp/radio/radio_1479.html



【関連記事】 元記事はこちら
“ナンバーワンよりオンリーワン”を体現する動物って?
生物多様性はどうして必要なのか?
あの人気作家が猫の着ぐるみを…? 笑いあり涙ありの朗読会をレポート
男性サラリーマンも注目する美容器具とは?