ふるい日本をアップデートするのは、小さくて地道な一歩の積み重ねだよ

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日本にGoogleやFacebook、Twitterのような世界サイズのプラットフォームがないことを批判したり、嘆いたりする声はよく聞きます。日本が築いた情報ネットワークの規格は、ことごとく世界展開に失敗している。例えばドコモのiモードなんかは、日本では大成功しましたけれども、結局ガラパゴスのそしりから逃れられるものにはなれませんでした。

どうして日本にはGoogleみたいな存在がないのか。かつて日本を世界有数の経済成長に導いた「ものづくり」の感覚が、古くなっているせいではないのか。茂木健一郎さんがそう指摘していて、なるほどなと思います。

では、古くなったそうした感覚を現代向けにアップデートするためにはどうすべきなのか。このことに関しても、多くの識者がたくさんの意見を発表しています。

今の日本には、なおすべきところがたくさんある。教育の問題。一括採用・終身雇用という、おそらくは当の企業自身も守れるとは思っていないのに従っている慣例。地方自治の問題。何十年も問題が指摘されていながら、いっこうに改善することができない官僚の天下り問題……枚挙にいとまがありません。

日本は今のままじゃダメなんだ、という意見は、本当によく見ます。そうした論を述べる方は、もちろん批判するだけじゃない。理想的な解決法は必ず述べられていて、その点では、論として完璧に近いものが多いです。

でも、問題が大きいぶん、提示された解決法はたいがい日本のシステムのグランドデザインに関わっているんですよね。立法やら行政やら日本人の特性やらに関わっていることは、動かそうったってそう簡単に動くもんじゃない。それこそ何十年も問題になり続ける天下り問題がいい例です。語る人も、たぶんそれを理解した上で語っていることと思います。

かつてエレファントカシマシは、「なあおまえ、ニッポンの現状をどう思う?」という問いを発し「いいとも悪いともいえねえなあ俺は」と答えました(「ガストロンジャー」)。

でも、00年代ならいざ知らず、今はもう「悪い」と認めたっていいんじゃないか。旧システムの疲弊はけっこうやばいところまで来ているんじゃないか。抽象的な物言いでちと歯がゆいですが、多くの人が、この感覚に賛同してくれると思います。

批判と理想的解決法を述べる。それはとても大切なことだし、そうした意見を知ることもおろそかにしてはいけません。だから、論者の方々を批判するつもりは毛頭ありません。

でも、それじゃ「今・ここ」は決して良くならないんです。少しでも良くするためには、言うだけじゃなくて、実際に動かなきゃいけない。

そういう気持ちをもって実際に動いている人を私は何人も知っています。でも、彼らの戦いは決してラクなもんじゃない。所詮、個人とか、小さな仲間どうしでできることなんかたかがが知れている。必ず壁にぶちあたって悩むんです。


私自身も今年の4月から、子どもたちにICT技術とプログラミングを教える、言葉どおりの意味での私塾「TENTO」を運営しはじめています。私なりに日本の「今・ここ」を改善するために、自分にできる小さな一歩としてはじめたものです。海外にはTENTOみたいな仕組みがたくさんあるのに、日本にはない。それは大きな問題だと思ったから。

始めて半年経ちますが、ぶっちゃけた話、悩むことすごく多いんですよ。めんどくさいことたくさんあるし。どうしてこうなんだよ、日本なっちゃいねえよ。そんな文句を言いたくなることもしょっちゅうです。

でも、そんな文句は正直、もうたくさんだとも思っています。言ったところでどうなるもんでもない。壁がどんなに分厚くても、めんどくさくても、地道に小さな一歩を積み重ねていくしかないんです。

小さな一歩を歩んでいる人のやっていることは、ニュース性や一般性に欠けることが多く、部外者には何それ?なものがとても多くなっています。所詮、少ない人数で何かをしようとしたら、どうしたってそうなってしまう。

でも、モノ書きのはしくれとして、そういうものは今後できるかぎり拾い集め、場所を見つけて提示していきたいと思っています。実は、多くの人がぶちあたる「壁」って、共通しているか、共通する部分があるかのどちらかなんです。全く異なるということはない。だとすればそこにはとても一般的な、普遍的な問題が横たわっているはずです。

冒頭の「ものづくり」の感覚が古くなっている、という話に戻りましょう。

たしかに世界は変わっていて、現代のビジネスはGoogleやFacebookみたいな国際的なプラットフォームにシフトしているのかもしれません。日本が世界に誇るものづくり感覚と技量は、残念ながらそれに乗り切れていないのかもしれない。

でも、GoogleやFacebookみたいなもんを日本で一から作ろうったって、そうやすやすとできるもんじゃないんですよ。日本の企業は、日本の精神は、日本のシステムは今のところそういうふうになってない。

だから日本人は考え方を改めねばならぬ、企業文化を変革せねばならぬ、というのは簡単です。でも、実際にやるのは手間と時間がかかる。越えなきゃいけない壁がすごくたくさんあるんだから。

だとすれば、今あるものの中で少しずつ変えていくしかありません。そういう努力をしている人はたくさんいるし、それは「ものづくり」の大企業だって同じです。

一例をあげましょう。

今後、自動車はネット接続し、クルマそのものがデバイスになる時代がやってきます。そうなれば、車載コンピューターは今までよりずっと複雑なものにならざるを得ません。

この動きに対する準備をするためのカンファレンスが、世界に先駆けて日本で開催されます。主催はLinux Foundationですが、むろんトヨタやニッサンなど日本の自動車メーカーも参加します。ものづくり日本の自動車メーカーが、ある種の危機感と未来に対する展望を考えた結果でしょう。そうでなければ、日本でやろうなんて話になるわけがない。

私は完全に門外漢ですが、このニュースを知ってすごく心強く思いました。言うまでもなく自動車は日本の基幹産業です。そのメーカーがきっちり情報ネットワークの時代に対応する意欲を持っていることに。

小さな動きではありますが、遠くない将来にきっと大きな花が開くものと思っています。ものづくり日本の延長線上に築ける未来だってあるはずなんです。

「ものづくり2.0」時代に日本が乗り遅れている理由/茂木健一郎

http://president.jp.reuters.com/article/2011/08/25/2BBBE578-C6FD-11E0-9D70-A6B03E99CD51.php

TENTO

http://www.tento-net.com/

初めての「自動車のためのLinuxサミット」をLinux Foundationが日本で開催

http://jp.techcrunch.com/archives/20111010the-linux-foundation-announces-first-ever-automotive-linux-summit/

(草野真一)