7日に行なわれたユーロ2012予選グループDの第2節で、フランスがアウェーでボスニア・ヘルツェゴビナを相手に2―0と快勝した。

 翌日のレキップ紙の見出しは「気分爽快」。選手、監督、サポーターの気持ちを代弁している。それもそのはず、フランス代表にとっては8試合ぶりの勝利。ブラン新監督が2連敗後にようやくあげた初白星だった。

 前回の勝利は、ドメネク前監督時代の5月26日、W杯前の強化試合だったコスタリカ戦。システムを変更し、それが実を結んだかに見えた一戦だった。しかし結局はぬか喜び。その後の強化試合2戦で結果が出せず、W杯本番で再びシステムを変更、戦術の迷いがプレーに反映し、低空飛行に終わった。

 その前にも“ぬか喜び”はあった。ちょうど1年前のW杯欧州予選セルビア戦だ。結果は1―1の引き分けだったが、80分間を10人で戦う不利な状況の中、攻撃の連係が機能し、その後に期待を抱かせる内容だった。しかし2ヶ月後には予選プレーオフでアイルランドを相手に苦戦、決定力不足という悩みを抱えつづけることになる。

 決定力不足の原因は何より、難局を力技で切り開く“真のストライカー”の不在だった。W杯でドメネク前監督はアネルカにその期待を託したが、その戦術と選手個人のプレースタイルがマッチしていなかったのは、のちの“空中分解”を見ても明らかだ。

 ブラン監督も最初の2試合で同じ悩みを抱えた。4-4-2というシステムを選択したのは、1人でトップを張れる人材を欠くゆえのやむを得ない選択と言えた。しかし前のベラルーシ戦で2トップのオアロとレミが負傷、控えのサアもケガで欠き、7日のボスニア・ヘルツェゴビナ戦には、1トップ、1ボランチの4-3-3を選択せざるを得なくなった。

 しかしこれは本来ブラン監督が好むシステム。ベンゼマのケガが癒えたことで賭けに踏み切ることができた。ブラン監督がボルドー時代から信頼を寄せるアルー・ディアラをボランチに置き、成長著しいディアビとエムヴィラを攻撃的な中盤で起用できる。そしてベンゼマこそ、ここ数年フランスが待望していた“真のストライカー”。ドメネク監督時代に力を出し切れずにくすぶり、W杯出場を逸したが、その実力は誰もが認めるところ。あとは結果、つまりゴールだった。

 個人にとってもチームにとっても瀬戸際という舞台で、そのベンゼマがついにゴール前の個人技で状況を打開する先制点をマーク。試合後に「(代表戦の)これまででいちばん重要なゴール」(AFP)と胸を張った。

 チームも自信を取り戻し、ゴール前のすばやいパス回しからマルダが2点目を追加。終盤にはベンゼマがGKと1対1になる場面もあったが、3点目は逃した。試合終了のホイッスルとともにピッチに駆け寄ったブラン監督が、ベンゼマに「もう1点とれたぞ!」と冗談まじりに叱責した(M6局)のも、この自信を絶対なものにしておきたかったからだろう。

 これでひとつシステムは固まった。今後の課題は、かつてのリヨンが一時期陥ったような“ベンゼマ依存症”にかからぬよう、べつの攻撃オプションをつくりあげることだろう。10月には、リベリやグルキュフらも復帰するメドが立つ。「これが出発点」(レキップ紙)というブラン監督の言葉通り、新生フランス代表がトンネルを脱出し、ようやくスタートラインに立った。