2008年6月現在、マイクロソフトは、リッチコンテンツ市場でAdobe Airに対抗するSiverlight、仮装化市場でVMWareやXenに対抗するHyper-V、SaaS市場で、S+S(Software Plus Service)といった局地戦を戦っている。

それぞれ単独では局地戦ではあっても、トータルで見ればWindowsとOffice製品を守る戦いである。
しかし、良くも悪くもユーザーに直結しているWindows関連でマイクロソフトが局地戦に参戦すると、エンドユーザーが最も酷い目にあうことになるのである。

本記事では、これまでマイクロソフトが参戦してユーザー環境を混乱させた後、撤退した記録を振り返り、これからの局地戦がどうなるのかを考えてみたいと思う。


(1)VBScript

1996頃、インターネットブラウザを巡って、ネットスケープ社と激しい戦いを繰り広げていた時代、Internet Explorerでしか動作しないスクリプト言語として登場した。ネットスケープ社のJavascriptに比べ習熟が容易であるため、普及するかに思えたが、IEでしか動作しない仕様のため、Javascriptに破れ一次敗退。その後、ActiveX戦略の下での標準スクリプト言語として再参戦したが、セキュリティ面の問題が多く、普及は進まず。その後、新戦略.NETにおいては、採用されず。ほぼ絶滅状態である。エンドユーザーにとっては VBScript技術習得に要した時間は無駄だったという結果になった。


(2)Microsoft JavaVM

サン・マイクロシステムズが発表したプログラム言語「Java」で記述されたアプリケーションの動作環境である。Javaのセールスポイントは、「一度プログラムを書けば、どのプラットフォームでも動く(OS非依存)」ということだったが、マイクロソフトが独自拡張した言語仕様で動作するMicrosoft JavaVMをOSに標準搭載したため、複数種類のJavaVMが存在することになり、「あっちのアプリはMicrosoft JavaVMでしか動かない、こっちのアプリはSunのJavaVMでしか動かない」といった大混乱を引き起こすことになった。
長期間に渡り両者の戦いは続いたが、最終的にマイクロソフトが敗退し、WindowsXP SP1からはMicrosoft JavaVMは非搭載となった。
馬鹿を見たのは、Microsoft JavaVMで動作するアプリケーションを使っているユーザーである。


(3)DynamicHTML(MS版)

DynamicHTMLとは、静的なHTMLを動的に変更するための概念を指し、目的はブラウザを問わずJavascriptが実行できる環境の構築である。
ところが、上述(1)で紹介したブラウザ戦争の最中に生まれた仕様であるため、マイクロソフトのDynamicHTMLはIEでしか動作しない。実態としては、Webサイトの文字がするすると飛んできたり、画像が突然切り替わったりする視覚効果に用いられた。
この種の視覚効果では、Adobe Flash(当時はMacromedia)が先進を行っていたため、マイクロソフト仕様のDynamic HTMLで記述されたサイトを見ることはほとんどなくなった。


(4)Microsoft HTML


こういう名前の規格があるわけではないが、ワードで作成したファイルをHTML形式で保存すると、ワードとの互換を保つため、余計なタグが付く。慣れ親しんだワードでホームページが作れるというフレコミに反して、この余計なタグは非常に不評で、プロ向け業界標準HTMLオーサリングソフトの Dreamweaverでは、ワードのタグを削除する機能を用意したりしていた。


(5)Office Document Image

文書ドキュメント閲覧ファイル形式としてデファクトスタンダードの地位を築いたPDFに対抗して、Office製品で作成した文書を独自形式でイメージファイル化する機能を搭載した。イメージ化したファイルはIEで読み込めるが、いうまでもなくユーザーはOfficeだけを使っているのではない。あらゆる形式のドキュメントをイメージ化できるPDFにかなうはずもなかった。しかし規格自体はひっそりと生き残っている。


(6)Office OpenXML

Officeで作成したドキュメントは、長年、独自のバイナリ形式を採用していたが、Office 2007からは、新たにXMLで記述された規格をデフォルトとして採用した。これにより、OfficeがインストールされていないPCでもOffice文書が閲覧できるなどのメリットが生まれた。
しかし、OpenOffice.orgなどが旗振りとなって策定したODF(Open Document Format)が、ISO認定され、国際標準規格としての地位を固めていることにより、結果として、またも独自規格の道を歩むことになった。
艱難辛苦の上、2008年4月にOpenXMLもISO認定されることになったので、今後、電子文書資産保存形式の標準を巡って、新たな戦いの火ぶたが切って落とされることになった。
なお、マサチューセッツ州などが、電子文書保存形式としてODFを採用したため、マイクロソフトではOpenXMLをODFに変換するプロジェクトを立ち上げている。

(続く)

(編集部 真田裕一)