金利が定期預金の2倍以上…FP推奨「元本保証で1万円から始められる生活防衛資金の最有力の置き場所」

■「安全な置き場所」の常識が変わった
日本の金利が、着実に上がり始めている。
ほんの数年前まで、銀行にお金を預けても利息はほとんど付かなかった。それが今では、大手銀行の5年定期が年1%、高金利をうたうネット銀行では年2%前後の商品も見られる。「預けても増えない」時代は、終わりつつある。
投資はしないが貯蓄を少しでも増やしたい人はもちろん、積極的に投資をしていきたい人にとっても、この変化は見逃せない。株式や投資信託でリスクを取る一方で、「値下がりさせたくないお金」をどこに置くかは、資産全体の成績を大きく左右するからだ。生活防衛資金、数年内に使う予定のあるお金、ポートフォリオの守りの部分--そうした資金の置き場所として、いま最も有力な候補が個人向け国債である。
大手銀行はもちろん、金利の高いネット銀行の定期預金と比べても、個人向け国債のほうが有利なケースが多い。
■国債とは「国にお金を貸す」商品
銀行預金は、私たちが銀行にお金を預け、銀行から利息を受け取る仕組みだ。
これに対して国債は、国が発行する借用証書のようなものである。国債を買うことは、国にお金を貸すこと。その代わり半年ごとに利息を受け取り、満期になれば元本が戻ってくる。
個人が買いやすいように設計された「個人向け国債」には、次の3種類がある。

いずれも1万円から1万円単位で購入でき、購入手数料は原則としてかからない。投資信託のような信託報酬もない。利息は半年ごとに現金で支払われ、自動的に元本に組み入れられるわけではないため、基本的には単利の商品と考えればよい。
■安全性は、銀行預金より一段上
銀行預金も安全性の高い商品だが、銀行が絶対に破綻しないとは限らない。

万一の場合、普通預金や定期預金は、1つの銀行につき預金者1人当たり「元本1000万円と破綻日までの利息」が預金保険制度で保護される。例えば100万円の預金なら保護範囲に収まるが、実際に破綻が起きれば、残高の確認などに時間や手続きが必要になる可能性はある。
ここで注目したいのは、その預金保険制度が法律に基づく公的な制度であり、最終的には政府の信用に支えられているという点だ。つまり銀行預金は「銀行に預け、公的制度に守ってもらう商品」。一方の国債は「初めから国に直接貸し、国が元本と利息を支払う商品」である。守ってもらう相手に、直接貸している--そう考えると違いが分かりやすい。
日本政府が支払い不能になる可能性も理論上はゼロではない。それでも、一般の銀行と日本政府を比べれば、通常は日本政府のほうが高い信用力を持つと考えられる。安全性を最優先する資金にとって、これは小さくない差である。
■金利は大手銀行の2倍以上
2026年9月募集分の個人向け国債は、固定3年が年1.96%、固定5年が年2.24%、変動10年が初回年1.95%である。
これに対して、三菱UFJ銀行と三井住友銀行の定期預金は、3年物が年0.80%、5年物が年1.00%だ。

いずれも税金を引く前の年利である。
この差は、金額にするとはっきりする。100万円を5年間預けると、個人向け国債・固定5年の利息は税引前で合計11万2000円、税引後で約8万9200円。一方、年1%の5年定期なら、税引前で約5万円、税引後で約3万9800円である。100万円でも、5年間で手取りに約4万9400円の差が出る。
同じように元本の安全性を重視する商品でありながら、金利は2倍以上。“リスクを取らずに得られる差”としては、かなり大きい。
■高金利のネット銀行よりも有利
ネット銀行や信託銀行の中には、定期預金に大手銀行より高い金利を付けているところがある。
三井住友信託銀行の5年物は、100万円以上なら年2.00%とかなり高い。それでも個人向け国債・固定5年の年2.24%には届かない。
しかも、これらの高金利商品には条件が付くことが多い。新しく口座を開設する人限定、30万円・50万円・100万円といった最低預け入れ額、そして基本的にインターネット口座限定--。条件を満たせない人や、ネット操作が苦手な人には使いにくい。
個人向け国債は1万円から、そうした条件なしで買える。少額から始めたい人、口座をいくつも管理したくない人にとって、この差は意外に大きい。
銀行の利息は、広告で目にする「新規口座限定」「3カ月だけ特別金利」といった表示にも注意したい。表示されているのは年利なので、年2%でも、6カ月ものなら実際に受け取る利息は元本の1%、3カ月ものなら0.5%にすぎない(税引前)。表示された金利が5年間続くとは限らないため、特別金利の適用期間と、その後に適用される金利を必ず確認しておきたい。

■税金は金利差がそのまま残る
銀行預金の利息も国債の利息も、原則として同じ20.315%が課税される。
税率が同じということは、金利の高さがそのまま税引後の手取りの差になるということだ。せっかくの金利差が、税金で目減りすることはない。
■証券会社の口座がなくても買える
個人向け国債を買うために、必ずしも証券会社に口座を作る必要はない。
三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、ゆうちょ銀行のほか、多くの地方銀行や信用金庫でも購入できる。普段使っている銀行が取り扱っていれば、そこで国債用の口座を開設すればよい。

最初は本人確認や口座開設が必要なので、定期預金より少し手間がかかる。しかし、一度口座を作ってしまえば、インターネットで購入できる金融機関もある。
個人向け国債は毎月募集されるので、毎月1万円ずつ買うこともできる。ただし自動積立に対応していない金融機関もあるため、手間を減らすなら、お金がある程度たまったところで3カ月や半年に一度購入する方法が現実的だろう。
■「変動10年」なら金利上昇に連動
投資に関心がある人にとって、いちばん面白いのは変動10年かもしれない。
固定3年と固定5年は、購入時の金利が満期まで変わらない。買ったあとに世の中の金利が上がっても、受取金利はそのままである。
一方の変動10年は、半年ごとに金利が見直される。今後、日本の金利が上がれば、受け取る利息も増える可能性がある。しかも金利が下がった場合でも、受取金利が年0.05%を下回ることはない。

つまり、上がれば利息が増える、下がっても最低限は保証される、という設計だ。もちろん年0.05%では受け取れる利息はわずかである。しかし、元本割れを避けながら金利上昇に備えられる点が、変動10年の大きな特徴だ。「これからも金利は上がりそうだが、元本割れは避けたい」という人に向いている。
ただし、市場金利の上昇分がすべて反映されるわけではない。元本の安全性を確保しながら、将来の金利上昇の一部を受取利息に反映できる商品、と考えておくとよい。
■途中で使いたくなっても元本は減らない
「貯金を10年も動かせないのは困る」と感じる人もいるだろう。しかし個人向け国債は、固定3年・固定5年・変動10年のいずれも、発行から1年たてば原則として中途換金できる。
その際、元本が値下がりするわけではない。差し引かれるのは直前2回分、つまり約1年分の税引後利息に相当する額だけである。
100万円分の変動10年を5年目で中途換金した場合を計算してみよう。年1.95%の金利が続いたと仮定すると、5年間に受け取る税引後利息は合計約7万7700円。ここから約1年分の1万5500円が差し引かれるため、手元に残る利息は約6万2200円になる。
簡単にいえば、5年間保有して中途換金すると、約4年分の利息が残るイメージである。固定3年、固定5年の場合も同様に、中途換金時には約1年分の利息が差し引かれる。
途中で換金しても元本そのものは減らない--この点は、値動きのある債券ファンドなどとは決定的に違うところだ。

■NISAで買えるようになる可能性も
現在、個人向け国債をNISAで直接買うことはできない。ただし政府は、個人向け国債をNISAの対象に加えることなど、税制優遇の拡大を検討している。
まだ実施が決まったわけではない。しかし将来、利息が非課税になれば、個人向け国債の魅力はさらに高まることになる。
為替リスクがある米国債という選択肢
さらに高い金利を求めるなら、米国債という選択肢もある。
米国のストリップス債は、額面より安く購入し、満期に額面金額を受け取る商品だ。途中の利息は支払われず、購入価格と満期金額との差が利益になる。2026年9月初めの例では、残存約3年で年4.2%程度、約5年で年4.4%程度の米ドル建て利回りがあった。
仮に額面100ドルの債券価格が80ドル、為替が1ドル160円なら、購入価格は約1万2800円になる。額面100ドル単位で購入する場合、追加購入もその時点の債券価格と為替相場に応じた金額になる。満期まで持てば、(円ではなく)米ドルでは額面どおり100ドルを受け取れる。
ただし、購入時より円高になれば、円に換えたときに目減りする可能性がある。日本円で使う予定のお金を安全に置くなら日本国債、為替リスクを取れるお金や将来ドルで使うお金なら米国債、という使い分けが基本である。
■まずは「100万円」で比べてみる
銀行預金には、分かりやすさと、すぐに使える便利さがある。その価値は否定できない。
しかし、1年以上使う予定のないお金まで、いつもの銀行の低い金利で預け続ける必要はない。
まずは100万円を預けたら利息がいくら付くのか、同じ期間の定期預金と個人向け国債を並べて比べてみてほしい。安全性、金利、購入条件--この3つを一緒に見れば、2026年9月現在、個人向け国債が有力な選択肢であることが分かるはずだ。


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浦上 登(うらかみ・のぼる)
コンサルタント
早稲田大学政治経済学部を卒業後、三菱重工業に入社、海外向け発電プラントの仕事に携わる。ベネズエラ駐在、米国ロサンゼルス営業所長などを歴任後、三菱重工グループの保険代理店に移り、取締役東京支店長。2009年にはファイナンシャル・プランナーの上位資格CFPを取得。2017年にサマーアロー・コンサルティングを設立、著書に『70歳現役FPが教える 60歳からの「働き方」と「お金」の正解』(PHP研究所)がある。
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(コンサルタント 浦上 登)
