乳がんのセルフチェック方法は?注意したい変化や受診の目安を解説

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乳がんは日本人女性が最もかかりやすいがんとされ、早く見つけるほど治療の選択肢も広がります。日ごろから自分の乳房の状態を知っておくことで、変化に気づきやすくなります。難しい手順は必要なく、入浴や着替えのときに取り入れられる方法です。この記事では、乳がんのセルフチェックの方法や注意したい変化、検診の受け方、気になる変化があったときの対応について解説します。

監修医師:
林 良典(医師)

【出身大学】
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医・指導医、日本緩和医療学会認定登録医、禁煙サポーター

乳がんのセルフチェック方法


セルフチェックは、特別な準備をせずに日常のなかで行えます。ここでは、具体的な確認の方法について解説します。

鏡の前で腕を下ろして乳房や乳頭の見た目を確認する

まずは、鏡の前に立って乳房の見た目を確かめます。腕を下ろした状態で、左右の大きさや形、皮膚の様子を観察していきます。左右差は誰にでもあるものなので、いつもと比べて変化がないかという視点が大切です。他人と比べる必要はありません。

次に、両腕を上げた状態でも同じように確認します。腕を上げると皮膚が引っ張られるため、へこみやひきつれが分かりやすくなります。手を腰に当てて胸を張る姿勢でも、見え方が変わってきます。

乳頭の向きや高さ、乳輪の状態にも目を向けたいところです。皮膚の赤みやただれ、毛穴が目立つような変化がないかも確かめます。明るい場所で行うと、細かな変化にも気づけます。浴室の鏡や洗面所など、毎日目にする場所で習慣にすると続けやすくなります。

入浴や着替えの際に乳房に触れて確認する

触れて確かめる作業は、入浴中に行うと手が滑りやすく分かりやすくなります。石けんやボディソープを付けた状態で、指の腹を使って乳房全体をなでるように触れていきます。指を立てず、平らにして滑らせるのがポイントです。爪を立てると痛みが出るため、指の腹を使ってください。

乳房の外側から内側に向かって、渦を巻くように少しずつ移動させていきます。上下や左右に動かす方法でも構いません。大切なのは、乳房全体をもれなく触れることです。乳頭のまわりや、乳房の下側も忘れずに確かめます。

あわせて、脇の下にも触れておきます。乳腺は脇の方向にも広がっており、リンパ節が腫れることもあるためです。あお向けに寝た状態で行うと、乳房が平らに広がって奥まで触れやすくなります。少しずつ力を加減しながら、自分の乳房の感触を覚えていきましょう。強く押しすぎると痛みが出るため、やさしく触れる程度で十分です。毎回同じ手順で行うと、違いに気づきやすくなります。

下着に乳頭からの分泌物が付いていないか確認する

着替えの際には、下着の内側にも目を向けたいところです。乳頭から分泌物が出ている場合、下着に染みとして残ることがあります。自分では気づかないうちに、こうした形であらわれることもあります。

分泌物の色は、確認しておきたい点です。透明や白っぽいものより、血が混じった赤や茶色、黒っぽいものは注意が必要とされています。片側の乳頭からだけ出ている場合も、気にかけておきたい変化です。

授乳期を過ぎているにもかかわらず分泌物が続くときは、一度相談してみることがすすめられます。乳頭を強くつまんで無理に絞り出す必要はありません。日ごろの着替えのなかで、自然に気づける範囲で確認していきましょう。染みに気づいたら、色や量を覚えておくと相談のときに役立ちます。

セルフチェックで注意したい乳房の変化


セルフチェックでは、いくつかのサインに注目します。ここでは、注意しておきたい変化について解説します。

乳房や脇の下のしこり

最も代表的なサインが、しこりです。乳がんによるしこりは硬く、指で押しても動きにくい傾向があるとされています。周囲との境目がはっきりしないことも多く、痛みを伴いにくいです。

ただし、しこりのすべてが乳がんというわけではありません。乳腺症や線維腺腫など、良性のしこりも数多くあります。良性のものは弾力があり、コロコロと動くことが多いとされています。年齢や体質によって、乳腺の状態は人それぞれ異なります。

見分けは専門的な検査が必要になるため、自分で判断しないことが大切です。脇の下にしこりを感じる場合も、放置しないでください。以前はなかったしこりに気づいたら、早めに医療機関を受診しましょう。しこりの大きさや位置を覚えておくと、経過を伝えやすくなります。

皮膚のへこみやひきつれ

乳房の皮膚が部分的にへこんだり、引きつれたように見えたりする変化も注意したいサインです。がんが皮膚の内側に広がると、周囲の組織が引っ張られてこうした見た目になることがあります。

腕を上げたときや、前かがみになったときに目立つこともあります。鏡の前でさまざまな姿勢をとって確認すると、気づきやすくなります。えくぼのようなくぼみが一ヶ所だけできている場合は、とくに気にかけておきたい変化です。

また、皮膚がオレンジの皮のようにブツブツと見えることもあります。毛穴が目立ち、赤みや腫れをともなう場合もみられます。こうした変化があらわれたときは、早めに相談することがすすめられます。見た目の変化は写真に残しておくと、経過を比べる助けになります。

乳頭からの分泌物

授乳期以外で乳頭から分泌物が出る場合、原因を確かめておきたいところです。とくに、血が混じったような色をしている場合は注意が必要です。片側の乳頭の決まった一か所から出ているときも気がかりなサインになります。

一方、両側から乳白色の分泌物が出る場合は、ホルモンの影響によることもあります。薬の副作用が関わっているケースもみられます。乳腺の良性の病気が背景にあることも少なくありません。いずれにしても、原因を自分で判断するのはむずかしいものです。

下着に付いた染みで気づくことも多く、日ごろの観察が手がかりになります。気になる分泌物があるときは、色や量、片側かどうかを覚えておくと、受診時の説明に役立ちます。下着に付いたものを持参する必要はなく、状況を伝えるだけで十分です。

乳頭や乳輪、皮膚の見た目の変化

乳頭がへこんだり、向きが変わったりする変化にも注目したいところです。もともと乳頭がへこんでいて変化がない場合は、乳がんによる変化ではないことが多いものの、以前と比べてへこみや向きが変わった場合は注意が必要です。左右の高さや向きに新たな変化がみられた場合も、医療機関に相談しましょう。

乳頭や乳輪の皮膚が赤くただれる、かさぶたのようになる、じくじくとした状態が続くといった変化もサインのひとつです。湿疹と思って市販の薬を塗り続けているうちに、進行してしまうこともあります。塗り薬で改善しない皮膚の変化は、専門的に診てもらいましょう。

乳房全体の腫れや、熱を持ったような赤みが続く場合も注意が必要です。皮膚の変化は目に見えるぶん、気づきやすいサインです。こうした変化が続く場合や、これまでになかった変化に気づいた場合は、放置せず受診しましょう。市販の薬で様子をみる期間が長引かないよう、気をつけたいところです。

乳がんのセルフチェックを行うタイミングと検診の受け方


セルフチェックと検診は、どちらも欠かせない取り組みです。ここでは、行うタイミングと検診の受け方について解説します。

日ごろから自分の乳房の状態を意識する

近年では、乳房を意識して生活する習慣がすすめられています。ブレスト・アウェアネスと呼ばれる考え方で、厚生労働省の指針にも取り入れられました。決まった手順で調べることより、日ごろから自分の乳房を知っておくことに重きが置かれています。

自分の乳房の見た目や感触を把握しておけば、変化が起きたときに気づきやすくなります。入浴や着替えのついでに行えば、負担なく続けられます。月に1回など、頻度を決めておくと習慣にしやすくなります。

月経周期によって乳房の張りや感触が変化することがあります。月経のある方は、こうした周期による変化も含めて普段の乳房の状態を知っておくことが大切です。

40歳以降は2年に1回の乳がん検診を受ける

セルフチェックだけでは、見つけられない乳がんもあります。国の指針では、40歳以上の女性に対して、2年に1回のマンモグラフィによる検診がすすめられています。乳がんによる死亡率を下げる効果が確かめられている方法です。

マンモグラフィは、乳房を挟んで撮影するエックス線検査です。手で触れても分からない小さな段階のがんや、石灰化と呼ばれる変化を見つけられます。多くの市区町村では、費用の補助を受けながら受診できます。案内が届いたら、早めに予約を取っておくと確実です。

40歳未満であっても、家族に乳がんの方がいる場合はリスクが高くなります。心配なときは、医療機関に相談してみてください。乳腺の密度が高い方は、超音波検査を組み合わせる方法が提案されることもあります。日本人女性には乳腺の密度が高い方が多いとされ、この点も知っておきたい情報です。

気になる変化がある場合は検診を待たずに受診する

検診の間隔にかかわらず、気になる変化に気づいたときは受診したいところです。次の検診まで待っているあいだに、状態が進んでしまうこともあります。2年に1回という間隔は、あくまで症状のない方に向けた目安です。

検診で異常なしと言われた直後でも、新たな変化が出れば受診の対象になります。検査で見つけられないがんもあるためです。しこりや皮膚の変化に気づいたら、時期を問わず相談してください。検診は症状のない段階で受けるもの、という位置づけを覚えておきたいところです。

不安を抱えたまま過ごすより、確かめてしまったほうが気持ちも落ち着きます。何もなければ安心につながり、仮に何かあっても早く対応できます。迷ったときは、受診する方向で考えてみてください。忙しさを理由に先延ばしにすると、そのまま時間が過ぎてしまいがちです。

セルフチェックで気になる変化があった場合は?


変化に気づいたときは、落ち着いて対応することが大切です。ここでは、受診の進め方について解説します。

早めに乳腺外科を受診する

気になる変化があったときは、乳腺外科や乳腺科を受診しましょう。乳房の病気を専門的に診療しており、必要に応じてマンモグラフィや超音波検査などが行われます。近くに専門の医療機関がないときは、かかりつけ医に相談すると紹介してもらえます。受診の際は、検査を受けやすい服装で行くと進めやすくなります。

受診をためらう気持ちが働くこともありますが、多くの場合は良性の変化です。心配していたことが取り越し苦労だったというケースも少なくありません。まずは確かめることを目的に、足を運んでみてください。

仮に乳がんであった場合も、早期に発見できれば治療の選択肢が広がり、身体への負担を抑えられる可能性があります。そのため、気になる変化があれば早めに受診することが大切です。予約が取りにくい場合もあるため、早めに連絡しておくと安心です。

受診時は気づいた時期や変化の内容を伝える

診察では、気づいたときの状況をくわしく伝えることが役立ちます。いつごろから変化があるのか、どの部分なのか、大きさに変わりはあるかといった情報が判断の手がかりになります。

あわせて、月経の周期や妊娠・授乳の経験、家族に乳がんの方がいるかどうかも伝えておきます。服用している薬や持病がある場合も、あらかじめ整理しておくと安心です。うまく話せるか不安なときは、メモを持参する方法もあります。伝え漏れを防げるうえ、落ち着いて診察に臨めます。

痛みがあるかどうか、痛む時期に傾向があるかも伝えておきたい点です。乳がんは痛みをともなわないことが多いものの、痛みがあるから安心とは限りません。気になっていることは、遠慮せず質問してみてください。納得したうえで検査に進むことが、不安をやわらげる助けになります。

必要に応じてマンモグラフィや超音波検査を受ける

診察では、まず視診と触診で乳房の状態を確認します。そのうえで、必要に応じて画像検査へと進んでいきます。マンモグラフィや超音波検査が、代表的な方法です。

超音波検査は、乳房に機器を当てて内部の様子を映し出す検査です。放射線を使わないため、妊娠中の方でも受けられます。乳腺の密度が高い方でも、しこりを見つけやすい点が特徴になります。痛みもほとんどなく、短時間で終わる検査です。

これらの検査で気になる所見があれば、細胞や組織を採取して調べる検査が行われます。結果が出るまでには数日から1週間ほどかかることもあります。結果を待つ間は不安を感じることもありますが、良性か悪性かを正確に判断するために必要な検査です。不安が強いときは、ひとりで抱え込まず、家族や身近な人に話すことも支えになります。

まとめ

乳がんのセルフチェックは、鏡での観察と入浴時に触れる確認、下着の分泌物の確認を組み合わせて行います。しこりや皮膚のへこみ、乳頭からの分泌物、乳頭や乳輪の変化には注意したいところです。日ごろから自分の乳房を知っておくことに加え、40歳以降は2年に1回の検診を受けることがすすめられます。気になる変化があったときの受診を検討する際の参考にしてみてください。

参考文献

乳癌自己検診の指導
検診発見乳癌と自覚発見乳癌のbiology
乳がん検診の全国集計2024(対象2021年度)