ワイヤー矯正の「メタル」「クリア」「セラミック」はどう選ぶ? 3種の違いと向き不向きを歯科医が解説
ワイヤー矯正で使う「ブラケット」には、金属製の「メタル」、プラスチック製の「クリア」、陶器製の「セラミック」の3種類があります。目立ちにくさが注目されがちですが、メタルは装置が小さく摩擦も少ないため、歯を細かく動かしやすいのが強みです。一方でセラミックは白く自然に見える反面、強い力がかかると割れやすく、厚みによる違和感もあります。3種類の特徴と使い分けを、ごとう歯科・矯正歯科クリニック院長の後藤先生に解説してもらいました。
※2026年7月取材。
監修歯科医師:
後藤 安史(ごとう歯科・矯正歯科クリニック)
東北大学歯学部卒業。同大学大学院、矯正歯科医院などでの研鑽(けんさん)を経たのち、「ごとう歯科・矯正歯科クリニック」を開設。一般歯科診療から矯正治療、インプラント治療まで幅広く対応し、「将来の健康のために今すべき治療は何か」を大切にした包括的な歯科診療を提供している。日本矯正歯科学会認定医、日本成人矯正歯科学会認定医。
そもそも「ブラケット」って何? 矯正装置の基礎知識
編集部
ワイヤー矯正で使われる「ブラケット」とは、どのような役割をもつ装置なのでしょうか?
後藤先生
1本1本の歯の表面に接着し、ワイヤーを通す土台となる小さな装置です。矯正治療において歯を正確に動かすための重要な役割を担っています。ワイヤーが元の形に戻ろうとする力をブラケットを通して歯に伝えることで、少しずつ歯を目的の位置へ動かしていきます。ブラケットとワイヤーの組み合わせによって、歯の向きや傾きを細かくコントロールすることが可能です。
編集部
ブラケットには従来の「メタル(金属)」にくわえ、近年は「クリア」「セラミック」があると聞きます。それぞれのブラケットについて簡単に教えてください。
後藤先生
金属製のメタルブラケットは丈夫で壊れにくく、費用を抑えられる一方で、「目立ちやすく、見栄えが悪い」という欠点があります。こうした見た目の問題を解消してくれるのが、半透明の「クリアブラケット」や白い「セラミックブラケット」です。装置の目立ちにくさや治療中の見た目を重視する人には、クリアやセラミックが選ばれる傾向があります。
編集部
「クリア」と「セラミック」はどちらも目立ちにくい点が共通していますが、素材としてどのような違いがありますか?
後藤先生
一般的に「クリア」はプラスチック製、「セラミック」は陶器製を指すことが多いです。ただし、歯科医院によって呼び方や分類には幅があり、クリアを「透明感のあるセラミック」の意味で使う場合もあります。装置ごとの正確な違いは、治療を受ける歯科医院で確認しておくと安心です。
「メタルは古い」は誤解? 3種のブラケットの特徴と使い分け
編集部
目立ちにくい装置が主流になるなか、「メタルは古い」というイメージもあります。実際のところ、メタルブラケットは今も選ばれる装置なのでしょうか?
後藤先生
メタルブラケットは今も多くの治療で使われており、見た目以外の面では、デメリットの少ない装置といえます。目立ちやすさばかりが注目されがちですが、装置そのものが小さいため異物感が少なく、丈夫で壊れにくいのがメリットです。さらに、ワイヤーとの摩擦が少なく、歯をスムーズかつ立体的にコントロールしやすいのも大きな強みとなります。装置の違和感が気になりやすいお子さんや、大きな力がかかる大臼歯(だいきゅうし/一番奥の歯)には、メタルが適しています。
編集部
セラミックブラケットの強みと弱みを教えてください。
後藤先生
セラミックブラケットの強みは、歯に近い白さで見た目が自然なことに加え、表面がなめらかで汚れがつきにくい点です。強度も十分あるため、歯を立体的にコントロールする力もメタルブラケットに引けを取りません。一方で、セラミックは硬さはあるものの、強い力がかかると割れやすいのが欠点です。また、サイズもメタルと比べるとふた回りほど大きく、厚みがあるため、唇の裏側に違和感を覚えやすくなります。
編集部
透明のクリアブラケットは、どのような装置ですか?
後藤先生
見た目を重視しつつ費用を抑えたい人に選ばれる装置ですが、機能面はメタルやセラミックよりも劣ります。プラスチックは素材が柔らかいため、歯を立体的にコントロールする力が弱く、細かな動きの調整には不向きです。また、長期間使うと素材が劣化して角が取れやすくなるため、治療期間が2~3年と長くなるケースでは注意が必要です。歯並びの乱れが軽度で、1年ほどで終わる治療であれば選択肢に入りますが、症例によって向き不向きがあるため歯科医師とよく相談しましょう。
編集部
実際の治療では、これらのブラケットをどのように使い分けているのでしょうか?
後藤先生
実際のところ、すべての歯をセラミックブラケットやクリアブラケットでそろえるケースは基本的にありません。成人の場合、「前歯から小臼歯(しょうきゅうし)まではセラミック、大臼歯にはメタル」を使う組み合わせが主流です。大臼歯にメタルを選ぶのは、奥歯はもともと目立ちにくいためです。また、セラミックやクリアは装置が大きく厚みもあるので、強い力がかかる奥歯では外れやすくなります。装置の見た目と機能性を両立させるうえで、それぞれの強みを生かした使い分けが一般的です。
費用は? 治療期間は? ブラケットに関するその他のQ&A
編集部
ブラケットの種類によって、費用や治療期間は変わりますか?
後藤先生
費用は歯科医院の料金体系によって異なります。装置の種類にかかわらず一律の料金にしている医院もあれば、「メタルは安め、セラミックは高め」と種類ごとに費用を分けている医院もあり、後者のほうが多い印象です。一方で、治療期間については装置の種類による大きな差はほとんどありません。正確な費用や期間は、歯並びの状態や治療範囲によっても変わってくるため、精密検査を受けたうえで歯科医院に確認するとよいでしょう。
編集部
ブラケットの種類は、患者自身の希望で自由に選べるものなのでしょうか?
後藤先生
基本的には、歯科医師が症例や歯並びの状態に応じて選ぶものと考えてください。同じ患者さんの口の中で、部位ごとに違うメーカーのブラケットを組み合わせることはほとんどなく、同じシリーズで統一して使うのが一般的です。先述のとおり、成人の場合は「小臼歯までセラミック、大臼歯はメタル」の組み合わせが主流なので、患者さんが細かく選ぶ余地はないといってもいいでしょう。まずは希望を歯科医師に伝えたうえで、精密検査の結果をもとに、歯並びに合った装置を一緒に選んでいくことが大切です。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
後藤先生
ブラケット選びで多くの人がまず気にするのは、「目立たないかどうか」だと思います。ただコロナ禍以降、マスクを着ける機会が増えたことで、以前ほど表側の装置を嫌がる傾向は少なくなった印象です。だからこそ、目立ちにくさだけで判断するのではなく、それぞれの装置のメリット・デメリットをきちんと比較したうえで選ぶことが大切です。担当の歯科医師は、治療期間や治療方法を踏まえて患者さんに最適な装置を選んでいます。もし不安であれば、インターネットなどで基本的な知識を入れたうえで、担当医に確認すると安心です。
編集部まとめ
矯正治療のブラケットには「メタル」「クリア」「セラミック」の3種類があり、それぞれに強みと弱みがあることが分かりました。目立ちにくさに関心が集まりやすいものの、実際には症例や部位に応じた使い分けが重要で、成人の場合は「小臼歯までセラミック、大臼歯はメタル」という組み合わせが主流のようです。装置選びで迷ったら、それぞれの特徴を理解したうえで担当の歯科医師に相談してみましょう。
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