「陽性」でも確定ではない『NIPT』、結果の3パターンと次の検査を医師が解説
出生前検査の一つであるNIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)の結果を受け取ったとき、それが何を意味するのか戸惑う人は少なくありません。結果は陰性・判定保留・陽性の3つに分かれますが、いずれも「確定診断」ではなく、その後の対応を考えるための大切な手がかりです。結果の見方や次に考えられる選択肢、医師への相談ポイントについて、ローズマタニティクリニック院長の前先生に聞きました。
※2026年8月取材。
監修医師:
前 和幸(ローズマタニティクリニック)
東京大学医学部医学科卒業。その後、各地の病院で産婦人科部長などを歴任。2021年、埼玉県さいたま市に「ローズマタニティクリニック」を開院。「かけがえのない命の誕生を、できる限り自然な状態で迎えてほしい」という思いを大切に、医師や看護師が一丸となって母子の健康を温かく見守っている。現在は同院院長を務める。日本産科婦人科学会 産婦人科専門医、母体保護法指定医師、日本医師会認定産業医。
NIPTの結果が陰性だった場合はどう解釈したらいい? 再検査の場合は?
編集部
NIPTの結果が「陰性」だった場合、どう受け止めればよいのでしょうか?
前先生
NIPTで陰性と判定された場合、検査対象となっている染色体疾患の可能性は低いと考えられます。ただし、「陰性=赤ちゃんに疾患がまったくない」という意味ではありません。NIPTは、主に13トリソミー、18トリソミー、21トリソミー(ダウン症候群)といった、特定の染色体が通常より1本多い状態の可能性を調べる検査です。それ以外の染色体の変化や、形や成長の問題まですべて分かる検査ではありません。陰性であっても、妊婦健診や超音波検査は引き続き大切です。
編集部
陰性なら、もう追加の検査は必要ないのでしょうか?
前先生
多くの場合、NIPTで陰性であれば、すぐに追加の検査を行うことはありません。特に問題を疑う所見がなければ、通常の妊婦健診を続けていきます。ただし、超音波検査で気になる所見がある場合や、妊娠経過の中で追加の確認が必要と判断される場合には、別の検査を検討することもあります。NIPTの結果だけで安心するのではなく、妊娠全体の経過を見ながら判断していきましょう。
編集部
「判定保留」とは、どのような結果ですか?
前先生
判定保留とは、検査結果を陽性・陰性のどちらにも判定できなかった状態です。NIPTは妊婦さんの血液中にある胎盤由来(赤ちゃん由来)のDNA断片を調べる検査です。ただし、その量が少ない場合や、検体の状態、妊娠週数、母体の体質などによって、十分な解析ができないことがあります。判定保留は必ずしも陽性という意味ではありませんが、「問題ない」と言い切れる結果でもありません。主治医に相談したり、遺伝カウンセリングを受けたりして、次の対応を検討することをおすすめします。
編集部
判定保留になった場合、再検査を受けることはできますか?
前先生
判定保留になった場合は、状況に応じて採血をやり直して再検査を行うことがあります。再検査で結果が出ることもあれば、再び判定保留となることもあります。また、妊娠週数や超音波所見、妊婦さんの希望によっては、再検査ではなく、絨毛(じゅうもう)検査や羊水検査などの確定的検査を検討することもあります。どの選択がよいかは状況によって異なるので、医師から十分に説明を受けて選びましょう。
陽性だった場合にはどう解釈すべき? 正確性はどれくらい?
編集部
NIPTで「陽性」と出た場合、赤ちゃんに疾患があると確定したことになりますか?
前先生
NIPTで陽性と出ても、それだけで赤ちゃんに染色体疾患があると確定したわけではありません。NIPTは精度の高い検査ですが、あくまで「その可能性が高いか低いか」を判断するための検査です。陽性の場合は、対象となる染色体疾患が疑われる状態と考えますが、確定診断には絨毛検査や羊水検査などが必要です。陽性という結果を見ると強い不安を覚えるかもしれませんが、まずは医師と相談し、次の行動につなげていくことが大切です。
編集部
NIPTは精度が高いと聞きます。実際のところ、どうなのでしょうか?
前先生
NIPTは、従来の検査と比べて検出率が高く、陰性の場合には対象疾患の可能性がかなり低いと考えられます。一方で、陽性だった場合に本当にその疾患があるかどうかは、妊婦さんの年齢や背景、対象となる疾患によって変わります。つまり、「陽性=100%確定」ではないのです。特に、13トリソミーや18トリソミーでは、21トリソミーに比べて陽性的中率(陽性と判定された人のうち、実際に赤ちゃんがその疾患である割合)が低くなります。数字だけでなく、個別の状況と併せて解釈したほうがよいでしょう。
編集部
偽陽性や偽陰性が起こることもありますか?
前先生
あります。偽陽性とは、NIPTで陽性と出たものの、確定的検査では染色体疾患が確認されない場合です。反対に、偽陰性とは、陰性と判定されたにもかかわらず、実際には対象疾患がある場合を指します。こうした食い違いは、胎児と胎盤で染色体構成が異なるなど、さまざまな理由で生じます。
陽性だった場合、どう対処したらよいのか? 次の行動は?
編集部
NIPTで陽性だった場合、次にどのような行動をとればよいのでしょうか?
前先生
まずは遺伝カウンセリングを受け、結果の意味や今後の選択肢などについて正確な情報を得ましょう。それから、必要に応じて絨毛検査などの確定的検査を検討します。結果に驚いてすぐに判断しようとせず、医師や遺伝カウンセラーと一緒に、落ち着いて情報を整理しましょう。
編集部
確定的検査には、どのようなものがありますか?
前先生
確定的検査には、主に絨毛検査と羊水検査があります。絨毛検査は胎盤の一部である絨毛を、羊水検査は羊水中の赤ちゃん由来の細胞を調べる検査です。どちらも染色体の状態を直接確認できるため、NIPTよりも確かな情報が得られます。一方で、おなかに針を刺す処置を伴うため、流産などのリスクもゼロではありません。検査を受ける時期や方法、リスク、結果が出るまでの期間を確認した上で、受けるかどうかを考えましょう。
編集部
確定的検査を受けないという選択もあるのでしょうか?
前先生
確定的検査を受けるかどうかは、本人と家族の意思を尊重して決めるものです。陽性だったからといって、必ず確定的検査を受けなければならないわけではありません。しかし、そもそもNIPTの目的は「早い段階で胎児の状態を把握し、必要に応じて医療や福祉の支援体制を整えておく」ということです。そのため、確定的検査を受けることで「分娩方法を検討できる」「出生後の支援体制を準備できる」といったメリットもあります。そうした点も踏まえて、医師と相談してみてください。迷う場合は、遺伝カウンセリングで気持ちや考えを整理するとよいでしょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
前先生
NIPTを受けられる施設には、認証施設と認証を受けていない施設があります。どこで受けるかを選ぶときには、検査そのものだけでなく、結果が出た後の説明や相談体制まで含めて考えてください。認証施設では、検査前の遺伝カウンセリングや、陽性・陰性・判定保留といった結果の受け止め方、その後に必要となる検査や支援について、専門的なフォローを受けられます。認証を受けているかどうかは、こども家庭庁や日本医学会のサイトで確認できます。NIPTは将来の大切な選択に関わる検査です。不安を一人で抱え込まないためにも、検査の前後にどのような説明や相談が受けられるのかを施設に確認した上で選んでください。
編集部まとめ
NIPTは、結果を知ることだけが目的ではなく、その結果をどう理解し、次にどう向き合うかまで含めて大切な検査です。検査前後の説明や相談体制が整った認証施設で受けることで、安心して判断できそうですね。
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