「糖尿病」リスクを高める“あの食べ方”とは?膵臓を追い詰める3つの段階【医師監修】
糖質を食べると血糖値が上がり、膵臓からインスリンが分泌されて血糖値を調整します。しかし、精製された糖質を日常的に大量に摂り続けると、膵臓は慢性的な過負荷の状態に陥ります。さらに「インスリン抵抗性」という現象が重なることで、2型糖尿病の発症につながるプロセスについて解説します。
監修医師:
井筒 琢磨(医師)
2016年仙台市立病院循環器内科
2019年江戸川病院糖尿病・代謝・腎臓内科
2023年岩手県立中央病院糖尿病・内分泌内科 兼 救急診療科
2023年医療法人社団啓愛会理事
2026年孝仁病院美希病院
所属学会
日本医師会 産業医
日本循環器学会 循環器専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医
日本内科学会 総合内科専門医
糖質中毒(砂糖依存症)が糖尿病を引き起こすメカニズム
このセクションでは、糖質中毒と呼ばれる状態がどのように身体に影響を与え、2型糖尿病の発症につながるのか、その体内メカニズムについて解説します。糖質の過剰な摂取が慢性化すると、身体の血糖値を調整するシステムが少しずつ疲弊していきます。
血糖値の急上昇と膵臓(すいぞう)への負担
ごはんやパン、麺類、お菓子などの糖質を含む食品を食べると、消化酵素によって「ブドウ糖(グルコース)」に分解され、小腸から吸収されて血液中に入ります。この血液中のブドウ糖の濃度を示したものが「血糖値」です。
通常、食事をして血糖値が上がると、みぞおちの奥にある器官「膵臓(すいぞう)」からインスリンというホルモンが分泌されます。インスリンは、血液中のブドウ糖を全身の筋肉や肝臓に取り込ませてエネルギーとして利用させたり、余ったブドウ糖を脂肪として蓄えさせたりすることで、上がった血糖値を元の正常な範囲(空腹時で100mg/dL未満、または110mg/dL未満)に戻す「制御コントローラー」の役割を果たしています。
しかし、精製された糖質(白米、白いパン、清涼飲料水、洋菓子など)を日常的に大量摂取していると、これらの食品は消化・吸収が速いため、血糖値が跳ね上がります。すると膵臓は、急上昇した血糖値を急いで下げようとして、大量のインスリンを大忙しで分泌しなければなりません。こうした「血糖値の急上昇」と「インスリンの大量分泌」を1日に何度も繰り返していると、工場にあたる膵臓の細胞は徐々に疲弊し、オーバーワーク(過酷労働)の状態に陥ってしまいます。
長期にわたって膵臓に過度な負担がかかり続けると、やがて膵臓の機能が低下し、インスリンをスムーズに作れなくなったり(分泌量の低下)、分泌のタイミングが遅れたりするようになります。
インスリン抵抗性と2型糖尿病の関係
さらに深刻なのが「インスリン抵抗性」という現象です。インスリン抵抗性とは、膵臓からインスリンがしっかり分泌されているにもかかわらず、肝臓や筋肉などの細胞側がその指示に反応しにくくなり、ブドウ糖をスムーズに取り込めなくなってしまう状態を指します。いわば「鍵(インスリン)」はあるのに、「鍵穴(細胞の受け口)」が錆びついてドアが開かなくなっているようなイメージです。
このインスリン抵抗性を引き起こす要因の一つが、糖質中毒によるエネルギー過剰摂取と、それに伴う「内臓脂肪の蓄積」です。お腹の深い部分につく内臓脂肪が増加すると、脂肪組織からインスリンの働きを邪魔する悪玉物質が大量に放出されます。
細胞がインスリンになじみにくくなると、膵臓は「血糖値が下がらないからもっと出さなければ!」と錯覚し、さらに多くのインスリンを絞り出すように分泌します。しかし、限界を迎えた膵臓はいずれ十分なインスリンを出せなくなり、血液中にブドウ糖が溢れかえった状態(高血糖状態)が持続するようになります。これが2型糖尿病の発症へと至る代表的なプロセスです。
日本人の2型糖尿病は、遺伝的な体質に加えて、近年の食生活の欧米化(精製糖質や脂質の過剰摂取)、運動不足、肥満といった生活習慣上の要因が複雑に絡み合って発症すると報告されています。特に日本人は欧米人に比べて元々インスリンを分泌する能力が低い傾向があるため、太っていなくても糖質の摂りすぎによって膵臓が疲弊しやすい特徴があります。糖尿病は一度発症すると完治させることが困難なため、手前の「糖質過剰な食習慣」の段階で早期に手を打つことが極めて重要です。
まとめ
糖質中毒(砂糖依存症)は、身体的・精神的な症状を引き起こし、糖尿病リスクとも深く関わっている可能性があります。やめるためには食事・睡眠・運動・ストレス管理を組み合わせた総合的なアプローチが有効です。一人で悩まず、気になる症状がある方はまず内科や糖尿病内科・代謝内科への相談を検討してみてください。小さな一歩の積み重ねが、健康的な生活への道を開きます。
参考文献
※糖尿病のメカニズム・治療に関する一般的な参考資料です。「糖質中毒」は正式な医学用語ではありません
厚生労働省「糖尿病の予防と生活習慣改善」
国立国際医療研究センター糖尿病情報センター「糖尿病の基礎知識」
日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン」
国立健康・栄養研究所「食事・栄養に関する情報」
農林水産省「食事バランスガイドについて」

