巨人・浦田俊輔

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 優勝争いの真っ最中に巨人を襲った浦田俊輔の離脱。盗塁王を争っていた若きリードオフマンを失ったことで、阪神を追うチームに不安が広がっている。だが、今季の巨人は誰か一人に依存するチームではない。主力が抜ければ、別の誰かが台頭する--。そして今回、浦田と入れ替わるように1軍へ戻ってきたのが、2019年に故障でシーズンを棒に振った吉川尚輝だ。7年前とは立場が逆になった背番号2は“巨人V”のキーマンとなるのか。

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“大黒柱不在”でここまで戦ってきた巨人

 優勝争いの終盤にアクシデントが襲った。

 9月17日、巨人は浦田俊輔(24)の出場選手登録を抹消した。14日のDeNA戦の守備で右肘を強打した際の負傷が原因で、右肘靭帯損傷と診断された。今季はここまで118試合に出場し、打率2割7分1厘、打点27、そしてこの時点でリーグトップの36盗塁。今季から本格的に1軍で存在感を示し、リードオフマンとしてチームを支えてきた存在だけに、優勝争いの渦中での離脱は大きなニュースになった。

巨人・浦田俊輔

 しかも、巨人は首位・阪神を追う立場。残り試合が少なくなればなるほど、一つの故障、一つの判断がペナントの行方を左右する。ファンからすれば「よりによって今なぜ……」という衝撃だろう。

 ただ、スポーツ紙デスクは冷静だ。

「チーム全体を見渡すと、“浦田の離脱”イコール“巨人の大ピンチ”と単純に考える必要はないと思います」

 そもそも今季の巨人には、絶対的な“大黒柱”がいない。

「誰か一人がシーズンを通してチームを引っ張り続けるというより、その時々で違う選手がヒーローになる。主力が離脱しても別の選手が穴を埋め、若手が台頭すればベテランが脇を固める。言ってみれば“日替わりヒーロー”のチームになっているのです」

 浦田もその象徴の一人だった。

 昨季は1軍出場が22試合にとどまったが、今季は“1番・二塁”のポジションに定着し、リードオフマンとしての地歩を築いた。特に盗塁は、抹消されるまでタイトル争いの先頭を走っており、単に“若手が頑張っている”というレベルを超え、巨人の攻撃に欠かせない存在となっていた。

 たしかに“穴”はある。ただ、それは“代わりがいない”という意味ではない。

「浦田が離脱した直後、橋上秀樹監督代行は1番打者について平山功太(22)らを候補に挙げた。チームとして“浦田が抜けたからすべてが終わる”という発想ではありません」

 とはいえ、もちろん問題は残る。致命的ではないとはいえ、誰がその穴を埋めるのか。

 そこで浮上するのが、まさにこのタイミングで帰ってきた男、吉川尚輝(31)である。

2019年にもあった“吉川離脱”という悪夢

 吉川は2016ドラフト1位で巨人に入団。二塁守備の評価は高く、攻撃面でも俊足巧打を武器とする。

 ただ、大きな欠点というのが“故障が多い”ということだ。

 象徴的なのが2019年だ。当時、巨人の正二塁手として開幕を迎えた吉川は、シーズン序盤に腰痛のためチームを離脱した。そして、このシーズン中に一軍に復帰することはなかった。

 ただ、チームが立ち止まることはなかった。

 吉川の穴を埋めたのが、若林晃弘と山本泰寛ら複数の選手たちだった。結局、この年の巨人は最終的には77勝64敗2分、勝率.546で5年ぶり37度目のリーグ優勝を果たした。

 そして、今度は立場が逆になった。

 浦田が離脱したタイミングで、二軍にいた吉川が2カ月ぶりに一軍に帰ってきたのである。

今度は“吉川が埋める番”に

 ただ、吉川自身も、決して万全の状態で戻ってきたわけではない。

 今季も故障がちで、約2カ月前から左太もも裏の肉離れで戦列を離れていた。1軍に復帰したのは9月18日。浦田の登録抹消の翌日である。

 復帰初戦は“7番・二塁”で先発し、犠打を記録。そして翌19日の中日戦では、打順が一気に2番へ。2安打2打点を記録するなど存在感を示した。

「橋上監督代行も“ブランクを感じるところはなかった”と、吉川の状態の良さを評価していました」

 もちろん、ここで無理をさせるわけにはいかない。

「19日の中日戦では14-1と大差がついたこともあり、吉川は5回で交代。橋上監督代行は、前回の復帰時に使い続けたことが故障につながった可能性を踏まえ、今回は早めに交代させたと説明していました」

 優勝争いをしている以上、チームとしては勝ちたい。でも、吉川を壊してしまえば元も子もない。いまの巨人にとって彼の存在が大きいことは間違いない。橋上監督代行にとってはこれからも難しい舵取りが続きそうだ。

“ルーキー”の穴を“優勝経験者”が埋める

 先に述べたように、浦田は今季、大きな飛躍を遂げた。故障するまでは盗塁王が目前に迫り、新人王の有力候補でもあった。

 ただ、優勝争いという特殊な環境を考えれば、ここからの巨人に必要なのは“浦田の穴を埋める選手”ではないのかもしれない。

 必要なのは、“修羅場を知る選手”。その意味では、吉川には大きなアドバンテージがある。

「2024年の巨人優勝時には全試合に出場。現在は選手会長も務める31歳で、優勝争いのプレッシャーも経験している。復帰時にも“何年もこういう経験をしてるので”と話し、残り試合について“結果云々より勝つ”と力強く語っていました」

 浦田が持っていた“勢い”と“スピード”を、吉川がそのまま再現する必要はないだろう。それよりも、吉川には吉川の持ち味がある。

「堅実な守備、出塁、走塁。そして、勝負どころでの経験。今の巨人に必要なのは、まさにそうした部分でしょう」

ここにきて「坂本」「丸」も存在感

 そう、もう一つ見逃せないのがベテランの存在である。

 19日の中日戦では、吉川だけでなく坂本勇人(37)、丸佳浩(37)といった経験豊富な選手がスタメンに名を連ね、勝利に貢献した。

「まさに、若手が出てくればベテランが支え、主力が離脱すれば別の選手が出てくる。誰か一人がチームを背負うのではない。今季の巨人の特徴が集約された試合でした」

 浦田が抜けた今も、それは変わらない。

 むしろ、このタイミングで吉川が帰ってきたことを考えれば、“穴があいた”のと同時に“別のピースが戻ってきた”と見ることもできるだろう。

 もちろん、浦田の離脱を軽く見ることはできない。

 威勢の良いトップバッターを失ったのだから、戦力的なマイナスは明確に存在する。復帰時期も現時点では不透明だ。

 しかし、ピンチはチャンスでもあるのだ。

「2019年に自分が離脱したときには、若林や山本がチームを救った。今度は吉川自身が、浦田の穴を埋める番。優勝争い大詰めを迎えている今は、技術だけではなく、経験と精神力が問われます。彼の活躍次第で、禍はいくらでも福に転じるでしょう。そういう意味では、吉川が“巨人優勝”の鍵を握っているかもしれません」

 かつて自分の穴を埋めてもらった男が、今度は穴を埋める側に回る--。

 優勝争いの土壇場で、この巡り合わせがどんな意味を持つのか。

 答えは、“背番号2”の双肩に掛かっている。

デイリー新潮編集部