中古マンションの値下がり傾向がなかなか表面化しない市場のカラクリ…理由は「3種類の価格」にあり
マンション市場に値下がりの季節がやってきた。ただ、ネットを見ると「マンションが値上がりしている」という内容の記事がまだまだ多い。「〇〇エリアが狙い目」とか「〇年前に買ったら〇〇〇〇万円値上がりしていた」といった類いもよく見かける。しかし、すでに市場では値下がりが始まっているのが現状だ。
大和ハウスが「新築戸建て住宅」販売を都市圏に集約…もはや地方で売るのが難しくなった背景
まず、新築マンションはすでに2024年の後半あたりから販売スピードが鈍化。26年に入ってからは、それまで天井知らずに上昇していた販売価格にもブレーキがかかった。現状、人気が高かった湾岸エリアのタワーマンションでさえ、明らかな販売不振が目立ってきている。新築物件の売り出し価格は今も上がっているが、在庫が増えていることが不動産経済研究所が発表している月例報告からもうかがえる。
中古マンション市場はさらに悲惨だ。東京の都心エリアでも販売期間が延びているだけでなく、値下げの動きも目立ってきている。
マンション市場は13年以降の異次元金融緩和で値上がり傾向が鮮明となった。それが20年のコロナ禍による不況対策マネーの流入と円安により、上昇スピードが一気に加速。24年ごろまでは新築も中古も値上がり一色となっていた。
しかし、どんなマーケットでも潮流は変わる。
24年、日本では四半世紀ぶりにゼロ金利が解除された。26年6月には政策金利が1%に。その後も上昇傾向は続いている。
あわせて住宅ローン金利も上昇し、市場からは過熱ムードが消えた。今では「金利はどこまで上がるのか」という戦々恐々ムードが蔓延している。
中古マンションの流通現場を取材すると、一様に「動きが悪い」「値下げしないと売れない」という声が聞こえてくる。
ネットでは「値上がりが続いている」という記事が出ているのに、仲介業者は「値下がりしている」とぼやく。なぜそういうことになるのか。
その理由は、中古マンション市場には価格が3種類あるからだ。一物三価、とでも言おうか。
まず、売り出し価格。売り主が「この値段で売りたい」という価格。スーモなどに出ている価格がそれだ。これは売り主の売却希望価格だから高めになりやすい。
次は実際に売買された価格。業界用語では成約価格と呼ぶ。この数字はネットには出てこない。業者だけ見ることができるレインズというサイトには、その一部が出ている。
最後に業者の買い取り価格。これは一般人から仲介業者が買い取った価格。一般人が売りに出した中古物件を仲介業者が買い取り、リノベーションなどの手を加えた上で、市場に売り出すケースである。こういう方式は、業界内では買い取り再販と呼ばれている。実は、流通市場に出ている約4割が、この買い取り再販の物件だといわれている。
この再販物件が大量に市場で滞留している。売れ残って在庫が積み上がっているのだ。すでに、その一部で値引き販売されている。それも、かなり大幅な値引きも散見される。一部で兆候はあらわれているのだ。
ただし、値引き後の成約した価格はネットに出てこない。「値下がりしている」という現実が一般に知れ渡るのは、仲介業者の業界ではかなり不都合だからだ。
つまり、一般人には見えないところでマンション市場ではすでに値下がりが始まっているのだ。
(榊淳司/住宅ジャーナリスト)
