9月23日夜、諏訪川から引き揚げられ大牟田署に運び込まれる軽自動車

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 2004年9月21日、福岡県の諏訪川に浮かんだ少年の遺体をきっかけに発覚した「大牟田4人連続殺人事件」。父母と息子2人で4人の命を奪うという残忍さに加え、ずさんな計画と行き当たりばったりの経緯も社会に衝撃を与えた。一家4人全員が死刑判決を受け、間宮祥太朗主演の映画「全員死刑」(2017年)の原案としても知られるこの事件、一家の中で一体何が起きていたのか--。

(全2回の第1回:「週刊新潮」2004年10月7日号掲載記事を再編集、加筆訂正しました)

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【写真】高市政権で初の「死刑執行」 5人が死亡した09年「最悪の放火事件」の衝撃的な事件現場

署を訪れた夫が拳銃で自殺未遂

 福岡県大牟田市の中心部を東西に横切り、有明海に流れ込む諏訪川。2004年9月21日午前、その川面に上半身裸の男性遺体が浮かんでいるのを、通行人が発見した。

9月23日夜、諏訪川から引き揚げられ大牟田署に運び込まれる軽自動車

「首と両足にはそれぞれ錘として、1個5~6キロのコンクリートブロックがくくりつけられていた。死後3、4日は経過していました。腐乱して体内にガスが溜まり、川底からゆっくりと浮かび上がってきたのでしょう」(地元記者)

 県立高の1年生、A君(15=当時)の変わり果てた姿だった。暴行を受けたようで、歯はすべて折られていた。首に絞められた跡もあり、死因は窒息死。A君の他に兄のB君(18)と友人のD君(17)、母親のCさん(58)も姿を消していた。

 22日未明、大牟田署は北村真美(45)を逮捕した。容疑は死体遺棄。Cさん一家を知る真美は先に参考人として呼び出されていたが、「A君の遺体発見現場近くで不審な女が目撃された」との情報を突き付けられ、橋の上から遺体を棄てたことを認めたのだ。さらに真美は「他の3人の死体も車ごと諏訪川に棄てた」と供述した。

 夜が明けて諏訪川の捜索が始まった一方、大牟田署では不可解な発砲事件が起きた。午前9時過ぎ、任意の参考人として署を訪れた真美の夫、暴力団・北村組組長の実雄(60)が通された取調室で自分の頭部を撃ち、重傷を負ったのだ。署内は一時、大混乱に陥った。

「北村家なら人殺しだってやりかねない」

 23日夜、諏訪川の川底から1台の軽自動車が発見された。真美の供述通り、車内には3人の遺体。B君とD君の遺体は、それぞれ頭部に1発、胸部に2発ずつ銃弾を浴びていた。Cさんの死因は窒息死だった。

 逮捕当時の真美が供述した殺害動機はCさんとの金銭トラブル。「彼女を殺した現場を3人に見られたので、口封じのために殺害した」という。高利貸し業を営んでいたCさんはその取り立てを北村組に任せていたが、親同士のトラブルで相手方の子供たちとその友人まで命を奪うものなのか。

 真美の供述が一部あいまいなことなどもあり、事件発覚当初から「両家の子供たちによる、女性を巡る抗争説」も浮かんでいた。当時、北村家の長男と次男は地元でも有名なワルだったことと、4人の姿が消えた経緯からすれば頷ける説ではある。

 16日夕方にA君が、翌17日にCさんが消えた後、B君は仲間と行方を捜した。夜にD君が加わっても2人を発見できず、18日未明に解散。一緒に帰宅したB君とD君の消息はその後に途絶えた。

 計4人が消えたことでD君の母らは捜索願を出そうとしたが、大牟田警察は事件性なしと判断。警察の腰を上げさせるため、仲間たちはD君宅に「命が危ない」と偽の脅迫電話をかけている。仲間たちは「北村家なら人殺しだってやりかねない」と確信し、警察でなければ助け出せないと考えていたのだ。

背中に観音様の刺青

 仲間たちが最悪の展開を想像するほど警戒していた北村家は、指定暴力団の三次団体・北村組でもあった。組長は大牟田署で自身の頭を撃った実雄だが、一家の主は“女親分”こと真美だったという指摘もある。彼女の実家の石橋建設はかつて、炭鉱などに労働者を送る“人夫出し”を生業としていた。

「実際に北村組を仕切っているのは、真美ですよ。実家の石橋建設を継いだのも彼女で、炭鉱への人夫出しがなくなっても、関西方面などの工事現場に作業員を送り込んでいる。日給1万5000円のうち、3000円はピンハネしているんじゃないか」(捜査関係者)

 170センチの長身、100キロ近い体重の真美は、地元でも目立つ存在だった。

「背中に観音様の刺青を背負っています。見境のない人間で、気に入らないことがあるとキレてしまい、“そんなら死んじゃる”といって運転していた車をガードレールにぶつけたり、川に飛び込んだりする」(近隣住民)

 真美には離婚歴があり、5人の子供がいる。3番目の夫である実雄は、いくつかの職を経て暴力団幹部のお抱え運転手となり、そこで覚せい剤を覚えた。北村組の組長だが組の子分は数人で、捜査関係者によれば「女房と違って気の小さい人間」。

 Cさん一家とD君の失踪を巡っては、真美との子で次男の孝紘(20)が25日に、真美と2番目の夫の子で長男の孝(23)が10月2日までに逮捕された。同月7日には入院中だった実雄も逮捕されたが、なぜか孝紘とそろって単独犯を主張した。孝紘は初公判までにその主張を変えたが、実雄は判決まで貫き通すことになる。

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 裁判で繰り広げられたのは北村家の愛憎劇だった--第2回【「元力士の極悪兄弟」と女親分の母、組長の父…一家4人に死刑判決「大牟田4人連続殺人事件」 公判で露呈した“家族の歪な絆”】では、逮捕後の一家について伝える。

デイリー新潮編集部