学校からタブレットを配布されたことがきっかけに(写真はイメージです)

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 近年、子ども同士による性加害・被害が深刻化している。盗撮などの性加害を繰り返す「性非行少年」には、万引きなどの非行歴や不登校の経験がなく、ごく標準的な家庭環境で育った"普通の子ども"も少なくないという。

【写真を見る】学校で配布されたタブレットを使い、女子児童の着替えの様子を盗撮…SNSネイティブ世代の「カジュアルな性加害」

 ある小学6年生男子も、中学受験を控えるほど成績優秀で、両親との関係も良好だった。しかし、学校で配布されたタブレットを使って女子児童を盗撮。過去に8回もの盗撮を校内で繰り返していたことがわかった。

 なぜ、どこにでもいるような少年が盗撮を繰り返したのか。

「親から同意なく勝手に写真を撮られる。その写真を親がSNSにアップロードして、他の大人たちに共有する。子どもたちにとって、他者を無断で撮影することやSNSに投稿することは、もはや日常の一部になっている」

 現代の子どもたちが置かれている環境ゆえの問題を指摘するのは、西川口榎本クリニック副院長としてさまざまな依存症治療と向き合ってきた斉藤章佳氏だ。

 斉藤氏の新書『校内盗撮』(集英社インターナショナル)から、校内盗撮をめぐるさまざまな事例や問題を全3回にわたって紹介する。第1回は、小6男児による校内盗撮の事例を一部抜粋する。【全3回の第1回】

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 榎本クリニックでは、保護者や学校、児童相談所などからの依頼を受け、性加害に至った子どもたちの対応に当たっています。そこで寄せられる相談内容として、もっとも多いのが盗撮の問題です。

 これは私がかつて担当した、小学6年生の男児・高橋颯太さん(仮名)の事例です。

 颯太さんは学校で配布されたタブレットを使い、ごく軽い気持ちから、女子児童の着替えの様子を盗撮しました。そのとき女子児童は、盗撮されていることには気づきませんでした。ところが彼は、学校や保護者・児童間で写真や時間割などの情報を共有するアプリに、盗撮した画像を意図的にアップロードしてしまったのです。

学校内で8回もの盗撮行為…しかし「お咎めなし」

 後日、その画像を同じクラスの保護者たちが目にしたことで事件が発覚。教育委員会や児童相談所、警察が動く事態となりました。12歳の颯太さんには刑事責任を問えないので、逮捕されることはありません。彼は盗撮行為を二度と繰り返さないために、母親とともに当院を受診しました。

 颯太さんに詳しく話を聞くと、これまで学校内で8回もの盗撮行為をしてきたことが判明しました。過去には被害児童が気づき、教員に訴えたこともありました。しかし、教員は颯太さんをたしなめ、被害児童の前で画像を削除させただけ。颯太さんは「お咎めなし」状態でした。こうした対応に、一度は被害児童の保護者が抗議をしたものの、学校側は「まあまあ、小学生の男の子がやったことですから」と受け流し、適切な対応をしませんでした。これら一連の出来事が、颯太さんにとって「負の成功体験」となり、今回の重大な事態を引き起こす遠因となっていたのです。

 診察室で私と向き合った颯太さんは、「もうやりません」「こんな大ごとになるとは思わなかった」など、型どおりの反省を口にしました。彼にはASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如多動症)などの発達特性はみられず、中学受験を控えるほど成績も優秀。両親との仲も良く、家庭環境は安定していました。

 ただ、私に対して、どこか大人を小馬鹿にするような態度があったのも事実です。「注目されたい」「こんなことをできるのは自分だけ」という承認欲求とともに、「今回も、どうせ許されるだろう」と高をくくっていたのかもしれません。

SNSネイティブ世代のカジュアルな性加害

 颯太さんと面談していた当時、私にも同年齢の息子がいました。颯太さんと話すうちに、我が子が歩んできた12年間を振り返り、今の子どもたちは一体、どのように世界を認識しているのかを考えずにはいられませんでした。

「SNSネイティブ」と称される現代の子どもたちは、生まれた瞬間からスマートフォンに囲まれています。親は日常的に、子どもの同意を得ることなくスマホで写真を撮り、そのデータを子どもの祖父母や友人・知人と通信アプリやSNS上で共有します。

 親から同意なく勝手に写真を撮られる。その写真を親がSNSにアップロードして、他の大人たちに共有する。こうした環境で育ってきた子どもたちにとって、他者を無断で撮影することやSNSに投稿することは、もはや日常の一部になっているのです。

「僕だって勝手に撮られてきたんだ!」。颯太さんと接しているうちに、そんな声なき声が診察室に響いたような気がしました。

 その人の心と身体は、その人のもの。その人の身体のどこを、いつ、誰に見せるか(あるいは誰に見せないか)は、自分だけに決める権利があります。颯太さんの場合、「相手が自分自身で決める権利」を、盗撮という手段で勝手に奪ってしまったことが最大の問題です。

 勝手に撮影された画像や動画は、いつ、どこで、誰が見るかわからない。しかも、自分ではどうにもできない。そう考えるだけで被害者は恐怖を覚え、その後もつらい思いを抱えて生きていくことになる──こういった概念を、颯太さんはこれまで一切、教えられたことがありませんでした。

 そんな颯太さんに、「盗撮で逮捕されたら、大変なことになる」「鑑別所に入ったら、家族や友達と会えなくなる」など、大人たちがいくら力説しても心に響きません。加害者臨床の専門家として、そして年頃の子どもを持つ親として、この一件はのちに10代の性加害少年に特化した専門外来の開設とプログラムを立ち上げる非常に大きなきっかけとなりました。

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 第2回では、中学時代にいじめを経験した高校1年生の男子生徒の事例を取り上げる。進学先で「1軍男子」から女子生徒の盗撮を命じられた少年は、なぜその後、自ら盗撮を繰り返すようになったのか──。

(第2回につづく)