高齢の夫婦2人暮らしの家庭を訪問し、近況を聞く石森さん(左)(3日、東京都武蔵村山市で)

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[ケアラーの風景]超・老老介護

 75歳以上の後期高齢者同士の介護について紹介した連載「ケアラーの風景 超・老老介護」。

 身体機能の衰えや根強い家族介護の意識によって、高齢ケアラーが重い負担を抱えている実情を伝えた。どのように高齢ケアラーを支え、「超・老老介護」の時代を乗り越えていけばいいのか。先駆的な支援を行う現場を訪ねて、解決の糸口を探った。(矢子奈穂、山田朋代)

 「体調はいかがですか」。今月3日、東京都武蔵村山市の都営村山団地で、「村山団地高齢者みまもり相談室」の相談員、石森美穂子さん(53)が、住民の男性(80)に声をかけた。認知症の妻(77)と2人で暮らす男性は「妻は変わりなく、私はほどほどにやっています」と答えた。

 相談室は2011年、住民の高齢化に対応するため、市が設置した。現在、石森さんら社会福祉士などの資格を持つ3人が相談員として働く。市によると、今年1月時点で約6000人が暮らす団地住民の半数超が65歳以上の高齢者で、高齢者のみの世帯数は約2000に上る。

 「課題を抱える高齢者を把握し、支援につなぐことが相談室の大事な役割」と、石森さん。介護保険サービスを利用していない80歳以上の世帯を優先して戸別訪問を行う。「足腰が弱ったのか、夫がよく転ぶようになった」という女性の話から、夫の状態確認を行い、要介護認定の申請につなげたことも。石森さんは「女性が1人で夫のケアを担い、夫婦で孤立する可能性があった」と、対応の意図を説明する。

 相談室は現在、地域住民に活動の一部をサポートしてもらい、見守り態勢の強化に乗り出している。市の委託で相談室を運営する社会福祉法人「武蔵村山正徳会」理事の伊藤哲さんは「見守り活動は要介護者を支えるだけでなく、ケアラー支援、共倒れ防止にもつながる」と話す。

家族カフェまで送迎 

 神奈川県大和市の桜丘・和田地域包括支援センターで8月下旬に開かれた「家族カフェ」。介護が必要な家族がいる市内在住者4人がお茶を飲みながら、日頃の悩みなどを語り合った。

 そのうちの1人の女性(87)は、自宅から、センターの職員が運転する車で送迎してもらい参加している。認知症で要介護1の夫(90)と2人暮らし。夫を見守りながら家事をこなす。「夫以外に話し相手がおらず、孤独を感じることもあるので、カフェは楽しみ。徒歩で通える距離ではなく、バス便も少ないから、送迎は助かる」と喜ぶ。

 市の委託で家族カフェを運営するセンターは24年度から、高齢ケアラーらの無償送迎を始めた。足腰が衰えて、車の免許を返納している人も多く、移動が難しいためだ。センター長の椎名満子さん(56)は「移動を支援することで、息抜きをしてもらえる」と語る。

 日本ケアラー連盟によると、ケアラーが集い情報交換などができる「ケアラーカフェ」は各地に広がるが、職員の手配や事故対応の懸念などから送迎を行っているケースは少ないという。

社会とつながり維持 

 7月に発表された国民生活基礎調査によると、要介護者とケアラーが同居しているケースのうち、いずれも75歳以上の「超・老老介護」は25年に37・1%で過去最高。今後も増加が見込まれる。

 大阪経済大の森詩恵教授(高齢者福祉論)は「高齢者のみの家庭を支えるポイントは、社会とのつながりを維持することだ。核家族化が進み、地縁も希薄になっている超高齢社会では、積極的に高齢者宅に出向いてSOSに気づける態勢を整えながら、支援や情報を届けていくことが重要だ」と指摘している。

読者から反響…92歳夫婦「元気いつまで」 煩雑な手続きに疑問

 連載記事に対しては、読者から様々な意見、体験談が寄せられた。

 中国地方の自営業の女性(77)は膝や腰に不調を抱えながら、半身まひの夫(78)を介護。最近、通院に付き添う際の車の運転や車いすの積み下ろしがつらくなってきた。「ゆっくりしたい」と思うことがあるが、夫が以前、ショートステイ利用時にトラブルを起こしてから、使いづらくなった。「先が見えない介護の日々に不安がいっぱい」という。

 リウマチ性の疾患がある東京都内の男性(92)は、自身の介助や家事を1人でこなす妻(92)が時折体調を崩すことを気にかける。「お互い、いつまで元気にやっていけるのか心配だ」

 長野県の男性(67)は介護保険サービスの積極的な利用を呼びかけた。同じ県内に住む父親(87)は長く認知症の母親(92)を介護し、少し前まで「外部の支援は不要」と言っていたが、母親の状態が悪化するにつれてイライラが募るように。そこで、男性が母親をデイサービスに通わせ始めたところ、父親に穏やかな表情が戻ったという。「介護保険サービスはケアラーも、子世代の暮らしも守る大切な仕組み」と寄せた。

 東京都内の大学教授の女性(53)は、介護保険サービスの有用性を認めつつ、煩雑な手続きに疑問の声をあげた。今夏、実母の要介護認定の手続きや施設探しに奔走。複雑な制度や施設ごとに異なる申し込み方法を理解するのに苦労した。「高齢者が自ら手続きを進めるのは難しいと思う。一緒に考えてくれる相談先が必要」と訴えた。