被害者Aさんの両親である辰己勝被告と貴子被告(会社ホームページより)。“神の取次者”と称する村上有被告を信奉していた

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 ことし6月、10代男性(以下、Aさん)を横浜市内の住宅に連れていき、逃げ出せないようにしたとして男性の父親ら7名が逮捕された事件。Aさんの家族から「先生」と呼ばれていた村上有被告(46)と兄夫婦、計3名の初公判が9月4日に行われた。

【写真】「逃げても捕まるからな」「裸で”逆モヒカン”」Aさんが監禁されていた”恐怖の館”

 事件の発覚は、Aさんの知人が奈良県警に「友人が監禁されている」と何度も相談したことがきっかけだった。捜査線上に浮上したのは、村上家の3名と、Aさんの父親である辰己勝被告(46)らの家族4名。計7名が監禁に加担した疑いがあるとして逮捕、起訴されている。

 自身を"神の取次者"と称し、霊能力で金を稼いでいた村上有被告と、それに傾倒していた辰己家の関係とは──。初公判の内容と現地取材を踏まえて詳細をレポートする。【前後編の前編】

 初公判当日、法廷に現れたのは村上有被告と、兄の順被告(49)とその妻である莉奈被告(41)。3名は監禁と強要罪で起訴されており、有被告はその他、暴行と覚醒剤取締法違反、麻薬及び向精神薬取締法違反の罪にも問われている。検察官によって読み上げられた、被害者の監禁に関わる公訴事実の概要はこうだ。

「2026年5月6日1時ごろ、辰己家は奈良県大和高田市の自宅でパンツ1枚にした状態のAさんに、毛布をかけ車に座らせた。辰己家の母が車のドアにチャイルドロックをかけるなどして脱出を困難にしたうえで、横浜市にある村上有被告らの実母の家まで連れていった。

 有被告と兄夫婦、辰己家の計6名はAさんを取り囲み、『逃げてもまた捕まるからな』などと脅しながら同月8日まで脱出が困難な状況におき、同日7時ごろにはAさんを再び車に乗せて逃げられない状況下で愛知県まで運転し、監禁した」

 さらに起訴状によれば、被告らはAさんに"罪"を認めさせたり、友人に身の安全を証明するような行為を強要したという。読み上げが続く。

「5月6日、有被告らはAさんが怖がっていることに乗じて、有被告が『お前の悪いところを紙に書け』と命令。莉奈被告が『損害を与えたことをお詫びします』『迷惑をかけたことの賠償として、1685万円を払う誓約をします』など紙に書き、Aさんに対して同じことを書き写させた。莉奈被告は他にも『僕は自作自演をするクセがあり、すべてひっくり返す癖がある』『服を脱ぎ、すっぽんぽんになり、捕まっても僕の責任です』なども書き写させた。

 同日、心配したAさんの友人が連絡してきたため、有被告はAさんに対し『動画を送れ』『横浜最高! みたいな感じでさ』と演技を指示。笑顔でピースサインをさせて『横浜最高』などと言わせる動画を撮影し、その後に有被告、順被告らはAさんの頭をバリカンで剃った」

 読み上げられた公訴事実について、順被告以外の2人は「間違いない」と罪を認めた。

 事件はいかにして起きたのか。まずは主犯格とみられる有被告と、辰己家の関係性について紐解こう。

辰巳家が"神の取次者"に傾倒したワケ

 有被告はコンサルティング会社の役員を務める女性の息子だ。母親の会社でコンサルティングをするかたわら、"神の取次者"を名乗り、「悩みを話すと霊が回答する」と触れ込んで、「お清め」の費用を受け取って生活をしていたという。

 検察官の冒頭陳述によれば、辰己家は10年以上前に有被告と知り合い、当時、養育に苦労していた娘について相談した。「霊の指示に従い」、有被告の母親のもとで娘を働かせるなどしたところ、生活態度が改善し、この件がきっかけで有被告の能力に傾倒するようになる。

 勝被告に至っては有被告を"先生"と呼び心酔し、近年は家族で経営する「タツミ工業」のコンサルティングも有被告に依頼していた。

 辰己家の息子であるAさんと有被告らが関わるようになったのは、2024年のことだ。

「2024年8月、辰己家はAさんを有被告のもとで働かせることにした。この際、賃金の支払いや食事の提供はあった。同年12月から2025年1月ごろ、Aさんが素行不良になったため、辰己家はAさんのことを有被告に預けた。この頃、Aさんは被告のもとで継続して働いたが、"修行"だとして賃金は払われず、岩手県内で働かせるなどもしたが無給だった。

 Aさんは仕事上のミスなどが原因で、有被告らに置き去りにされることがあった。Aさんは奈良の友人を頼り、地元に連れて帰ってもらうなどして村上家から隠れて生活するようになる」(冒頭陳述より)

 Aさんが逃走を図ったことが起因してか、村上家は辰己家に金銭を要求したり、謝罪を求めるなどしたこともあった。有被告らは辰己家にAさんを探すよう要求し、辰己家はAさんの知人の尾行などを経てAさんを発見。今回の監禁事件に至ったとされる。

 公判では、有被告らが起訴状にあったような書面をAさんに書かせたあと、頭の中央のみを剃り"逆モヒカン"にして、それを嘲笑した事実なども明かされた。このとき撮影された動画は、10月の公判において法廷内で再生される見込みだという。

 2家族と、"霊能力"の絡む奇妙な事件。後編の記事では、"神の取次者"・有被告が霊能力による「お清め」を行うようになったきっかけなどを詳報している。

(後編につづく)

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