【木田 トウセイ】「深津絵里が出演しないなら観なくてもいい」…映画『踊る大捜査線』最大の弱点
「事件は会議室で起きてるんじゃない。……現場で起きてるんだ!」
「レインボーブリッジ、封鎖できません!」
といった数々の名ゼリフを生み出し、かつて日本中に社会現象をもたらした『踊る大捜査線』。歴史的ヒットをマークした同シリーズの映画最新作『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』が9月18日より全国のスクリーンで公開される。
1997年の連続ドラマからスタートした『踊る大捜査線』は、1998年の劇場版第1作のスマッシュヒットで勢いを付けると、2003年公開の『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』が前代未聞となる興行収入173.5億円を記録。昨年『国宝』に抜かれるまでは邦画実写部門で22年間も首位に君臨する国民的映画となった。
ファンはもちろん、業界内でもさぞ期待が大きいかと思いきや、関係者からはネガティブな声も聞く。
前編『映画『踊る大捜査線』はヒットするのか?ファンの高齢化と「お台場オワコン化」の影』では、同作の不安要素を解説してきた。
本記事では、深津絵里が出演しない点など、キャスト面の不安点についてお届けする。
58歳になった刑事・青島俊作を愛せるか
「58歳になった織田裕二さん演じる青島を愛せるかどうかにかかっていると思います」
そう語るのは、深夜のサスペンスドラマやラブストーリーを手掛ける女性脚本家のC氏だ。
「若い頃の青島は向こう見ずで、上司に噛みついて組織よりも市民を優先した。正義感が強く、どこか青臭い--。その不器用ながら真っ直ぐなキャラクターが会社や社会の理不尽に悩む観客の心を掴んでいたと思います。
しかし、最新作の青島は58歳になり、所轄を経て警視庁刑事部捜査第一課に所属している設定になっている。室井に反発していた青島が、年齢を重ねて部下を守る責任を負う孤独や組織を動かす側の苦しみを痛感するストーリーになっていないと本来ならばおかしい。
しかしながら、同作でも青島は誘拐事件や連続殺人事件の解決をするために全力で走り回るキャラクターのまま。変わらない人物像をあの年齢で演じ切ることがよいのかは疑問ですよね……。
織田さんの見た目や雰囲気であればやりきれない役ではないと思いますが、初見の新しい観客に愛されるかどうかは別の話ですから」
趣里、白洲迅、増田貴久は人気キャラになれるか
C氏は、ストーリーについても苦言を呈す。
「『踊る大捜査線』といえば、刑事モノでありながらアクションや銃撃戦ではなく、サラリーマン的な組織構造の問題を描いた点が画期的だった。また、新しい社会問題に切り込む姿勢は映画版でも貫かれていた。
新作でも捜査の優先順位をAIが判断し、逮捕状の請求さえもAIに委ねるようになった警察組織に葛藤する青島の様子が描かれますが、近年の映画やドラマでよくあるテーマになってしまっているのが残念……。
常に時代の先を読んできた作品のはずが、制作に時間がかかったことで新しい切り口を描けておらず、やや平凡なストーリーになってしまうことで集客が増えない恐れはあると思います」
さらにC氏は新しいキャストについても私見を述べた。
「脇を固めるキャラクターの個性も魅力の一つだった。今作ではキャストが一変するので、彼らがいかに青島と不協和音を起こせるかがカギになると思います。
趣里さん演じる意気込みだけは十分な熱血刑事・芝田ひばり、白洲迅さん演じる冷静沈着でスタイリッシュな今どきの刑事・美浦秋、増田貴久さんが演じる真下正義を父に持つキャリア組の真下勇気がいかに存在感を残せるか。
3人とも的確な演技力に加えてコメディのセンスもあるので、作品のテイストに合わせることはできるとは思います。ただ、ストーリーのテンポだけが重視されて、キャラクターの個性を出しきれないと大コケもありえる。『踊る大捜査線』らしいキャラクターの交わりを楽しめる作品になっていることを祈るばかりです」
待望された深津絵里は出演せず……
また、『踊る大捜査線』の大ファンを自認する制作会社勤務のディレクター・D氏からはこんな悲痛の声もあった。
「深津絵里さん演じる恩田すみれの出演を待ちわびていたファンが多かったのに、それが叶わなかったのは非常に残念です。
楽観的で人懐っこい青島とクールだがツンデレ気質のすみれとの掛け合いはストーリーにおける重要なスパイスになっていたし、恋愛関係の進展はなくても2人の関係性が変わっていくドキドキを見たかったファンも多いはず。
古参ファンの間では『深津さんが出演しないならば観なくてもよい』という人もかなりいるので、作品が振るわない一因になり得ますよ」
ここまで『踊る大捜査線』最新作が失敗しそうな理由を業界関係者たちに挙げてもらった。しかし、関係者の予想を裏切る可能性は大いにある。前編記事に登場した、某キー局の子会社にあたる制作会社でドラマプロデューサーを務めているÅ氏は言う。
「ドラマ版の平均視聴率は18.3%で、当時にしてはかなり地味な数字で終わった。1作目の映画化も、あくまでフジがノリノリムードだったから作っただけで、そこまで期待はされていなかった。
しかし、スピード感のある展開やストーリーの面白さが口コミによってジワジワ広がったおかげで、人気を上げていったという経緯がある。今回もストーリーがしっかりと観客の心を掴めば、我々の予想を覆す可能性もゼロじゃない」
フジの期待を一身に背負った『踊る大捜査線』最新作がまもなく公開される。関係者の声やネットの反応だけで判断して鑑賞意欲を“封鎖”するのではなく、スクリーンという“現場”に足を運んでみてほしい。
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