内部通報したら「8畳の部屋で3年3か月独り勤務させられ」…あおぞら銀行員が逆転勝訴確定も、なぜ慰謝料は「100万円だけ」なのか
「配置された部屋は広さ8畳ほど。ゴミ箱がなく、シュレッダーは人事部長に依頼する仕組みでした」--あおぞら銀行に約9年勤めた行員のA氏は、同僚の不適切行為を内部通報した後、来客用フロアにある8畳の一室で3年3か月にわたり独り勤務させられた。
この隔離配置を「パワーハラスメント」と認定し、慰謝料100万円と賃金差額等の支払いを銀行側に命じた東京高裁の逆転判決が今年1月22日に行われ、8月24日付で確定した。
判決確定を受け、原告側の代理人を務める新村響子弁護士と伊藤安奈弁護士は報道各社に文書を公表。判決の意義を評価する一方「残された課題も多く、最高裁において是正がなされずに集結したことは遺憾」とした。
内部通報の1か月後に始まった懲戒手続き発端は、同僚が顧客の相続に関連する業務について不適切な処理を行っているとして、A氏が上司に対応を求めたことだった。上司が改善に動かないため、A氏は銀行の内部通報窓口に通報した。
ところが内部通報の後、銀行側はA氏に「10項目の問題行為」を指摘し、懲戒処分に踏み切った。あわせて降格・減給を行い、従来の業務フロアとは異なる部屋へA氏を転属させている。
弁護団によると、内部通報から事情聴取までは約1か月、通報から懲戒処分までは約4か月半しか経っていなかった。この時間的な近さが、後に「報復かどうか」を分ける争点となる。
「ゴミ箱もない8畳の部屋」で3年3か月A氏が配置されたのは、従業員の執務フロアではなく、来客用フロアにある広さ8畳ほどの一室だった。置かれていたのはパソコンのモニター、キーボード、マウスのみ。この状態が2021年から約3年3か月間続いたという。A氏は、社内規定で全職員が記載されるはずの「災害時初動対応計画」の緊急連絡網からも、この間ずっと除外されていた。
一審の東京地裁は2025年3月、A氏の請求を全面的に退けた。銀行側はA氏の業務環境について「大きな窓があり外の景色が見える。冷暖房が完備されている。他の行員の執務室よりも良く、極めて快適かつ開放的な環境である」などと主張していた。
流れが変わったのは控訴審だ。東京高裁は2026年1月22日、一審判決を変更した。3年3か月に及ぶ隔離を「人間関係からの切り離し」にあたるパワハラと認め、懲戒処分と降格・減給をいずれも無効として、慰謝料や賃金差額などの支払いを命じた。
「使用者が自白することなどあり得ない」弁護団は文書で「本判決の問題点」として、特に以下の2点を指摘した。
1つ目は、内部通報への「報復」が認定されなかった点である。高裁は「懲戒事由とされた各事由は、全く裏付けを欠く事実ではなく、報復目的で懲戒処分がされたものとは認められない」との趣旨を判示した。
これに対し弁護団は文書で、報復の立証そのものの難しさについて次のように指摘している。
「懲戒処分が仮に通報への報復目的であったとしても、使用者が自ら自白することなどあり得ない。多くの場合は、過去の労働者(通報者)の言動等を持ち出し、報復目的をカモフラージュするのである。
それが『裏付け』や『根拠』とされるのであれば、労働者(通報者)側で報復目的を立証することは不可能である。
本判決は、このような使用者側の『常とう手段』への批判的な検討を行うこともなく、報復目的を否定したものであり、この点に重大な問題がある」
「100万円という低廉な金額であるべきではない」二つ目の問題点は、慰謝料額の低さだ。高裁判決は、退職に追い込むために誰でも遂行できる業務を与えられ、精神的苦痛を受けたとして、A氏の人格権を侵害する不法行為の成立を認めた。それでも認められた慰謝料は100万円にとどまった。
弁護団は、隔離の期間の長さや悪質さに照らし「100万円という低廉な金額であるべきではない」と主張。本件では東京都労働局が銀行に対し、職場のパワハラ相談について「事実関係の迅速かつ正確な確認を行っていない」と指導していたにもかかわらず、銀行がこれに応じず、結果として3年3か月も隔離が続いたと指摘した。この隔離環境は、東京都労働委員会からも「異様なもの」と認定されている。
あおぞら銀行「真摯に受け止める」A氏は高裁判決後の会見で「地裁の判決では絶望的だったが、高裁で主張がおおむね認められほっとしている」と語る一方、「判決が出て終わりではなく、銀行として本質的に向き合うべき問題は多くある」と話していた。「なぜ、3年3か月もこのような状態が続いたのか、疑問が残る」とも述べ、第三者委員会の設置などを求めていた。
弁護団は「今後、同種の事件で本判決の課題を乗り越える判断がなされ、労働者の職場環境の改善につながることを願う」としている。
判決確定を受け、あおぞら銀行は弁護士JPニュース編集部の取材に「当行はかかる結果を真摯に受け止め、必要な改善に取り組みます」と回答した。

