「てんかん発作の前兆」で現れる症状はご存じですか?発作時の対応や注意点も医師が解説!

てんかんの発作の前に、本人だけが気付く短い症状が現れることがあります。これは前兆と呼ばれ、胃のあたりからこみ上げる不快感や、手のむずむずした感じなど、内容はさまざまです。前兆そのものでできることは多くありませんが、そばにいる家族や周囲の対応次第で、発作によるけがを防ぐことができるかもしれません。

記事のまとめ
てんかん発作の前兆(アウラ)は、上腹部の不快感やむずむず感、既視感などとして現れ、主に脳の一部から始まる焦点発作をもつ方にみられます。前兆に気付くことで危険な場所から離れるなど身を守る行動が取れるため、家族や職場に日頃から伝えておくことが大切です。発作中は周囲が危険物を取り除き、無理に体を押さえたり物を口に入れたりしないことが重要で、けいれんが5分以上続く場合はすぐに救急要請が必要です。

監修廣瀬 正和

京都大学医学部を卒業後、大学病院勤務を経て市中病院で脳神経内科医として5年間従事しました。
専門医取得後、母校大学院で研究を続けています。

【資格、専門医等】
日本神経学会神経内科専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本認知症学会認知症専門医・指導医、日本脳神経超音波学会超音波検査士

【診療科目】脳神経内科、一般内科※
一般内科には呼吸器、消化器、循環器、膠原病、アレルギー、腎臓、血液、内分泌、神経、救急の領域、また一部の皮膚科や耳鼻科や泌尿器科の疾患などを含みます

てんかんの発作の前兆


前兆はてんかん発作の前触れであり、発作そのものの始まりでもあります。まず、てんかんがどのような病気かと、前兆とは何かを解説します。

てんかんとは

てんかんは、大脳の神経細胞が過剰に興奮するために、発作性の症状が繰り返し起こる慢性の脳の病気です。てんかんのある方は1000人に5人から8人、日本全体で60万人から100万人といわれています。発作の症状は全身のけいれんだけではありません。動作が止まって一点を見つめる、意識を保ったまま身体の一部がぴくつくなど、興奮が起きた脳の部位によって現れ方が変わります。

発作の前兆(アウラ)とは

前兆とは、発作が起こる直前に現れる、主に本人にしかわからない症状です。医学的にはアウラ(aura)とも呼ばれます。周囲から見ても変化がわからないため、家族が気付けないことが多くあります。前兆に気付けば、発作が起こる前に身を守る行動をとれます。

前兆として現れる主な症状

前兆の内容は、興奮が始まった脳の部位によって決まります。よく知られているのは、上腹部からこみ上げてくる不快感で、恐怖に似た感覚を伴うことがあります。ほかに、手にむずむずした感じが生じる、高い音が聞こえる、目の前に赤や白いものが見えるといった内容があります。以前にも同じ場面を経験したように感じる既視感や、考えが飛ぶ感じを前兆とする方もいます。

てんかんの前兆と発作の関係


前兆はすべての方に現れるわけではありません。どのような発作で現れるのか、そこからどう進むのかを解説します。

焦点発作と前兆のつながり

前兆は、焦点発作をもつ方に主に現れます。焦点発作とは、脳の一部から始まる発作のことです。ただし、焦点発作のある方すべてに前兆が生じるわけではありません。左右の脳が同時に巻き込まれる全般発作では、始まりが一瞬のため前兆を自覚しにくいとされています。前兆の内容は、発作が脳のどのあたりから始まっているかを知る手がかりとなります。

前兆から発作へ進む流れ

前兆に続いて動作が止まり、意識がぼんやりとした状態へ進むことがあります。そこから、唇をなめる、もぐもぐと噛むような動きをする、衣服の端をつまむ、歩き回るといった動作が現れることがあり、内容は人によって異なります。この動作が続く時間は2分から3分程度で、長くても数分以内が通常です。ただし、その後のもうろうとした状態は30分以上に及ぶこともあります。

てんかんの前兆を感じたときの本人の対応


前兆そのものに対して本人ができることは限られています。では、どのように対処すればよいのでしょうか。

安全を確保する

てんかん情報センターによると、前兆に気付いて発作を軽くできる方もいます。手にむずむずした前兆がある方が手をこすったりこぶしを握ったりする方法や、考えが飛ぶ前兆がある方が一点に集中する方法が紹介されています。ただし、これらには練習が必要で、有効な方法は人によって異なります。発作を完全に止めるというより、遅らせたり軽くしたりするだけにとどまることもあります。

前兆から発作までは数秒から数十秒と短いことが多いため、時間に余裕があるときに限られます。階段や道路、火のそば、水の中など、けがにつながりやすい場所から離れることが大事です。

周囲に知らせておく

前兆に気付いた瞬間は、周囲へ詳しく説明している余裕がありません。そのため、家族や職場、学校には、てんかんがあることと発作が起きたときの対応を、日ごろから伝えておきましょう。

発作の記録を残す、可能なときは動画に残しておくといった協力も併せて頼んでおくと、自分の前兆のパターンや発作のきっかけがつかみやすくなります。

てんかん発作が起きたときに周囲ができる対応


発作が起きたとき、そばにいる方の対応でけがや誤嚥を防ぐことができます。発作中と発作後で気を付けるポイントを解説します。

発作中にすべきこと

まず、頭や身体をぶつけそうな物を周囲から取り除き、危険な場所にいる場合は安全な場所へ移動させましょう。頭の下には敷物や畳んだ上着を入れ、襟元やベルトなど締めつけている衣服はゆるめます。

その後は、発作が終わるまでそばで見守ります。このとき、呼びかけへの反応、表情、顔色、頭や目の動き、手足の動きと硬さ、続いた時間を覚えておくと、後で医師に伝える特に重要な情報となります。

けいれんが治まった後の対応

けいれんが止まったら、身体を横向きにして唾液や吐いた物が気管に入るのを防ぐようにします。いびきのような大きな呼吸をしているときは、顎を軽く上へ引き上げると気道が開きます。
意識がはっきりするまでは時間がかかることがあり、もうろうとしたまま歩き回る場合もありますが、無理に取り押さえず、周囲の危険な物をよけながらそばで見守りましょう。

発作中や発作後にしてはいけないこと

けいれんを途中で無理に止めようとしてはいけません。身体を押さえ込む、揺さぶる、叩くといった行為は避けましょう。歯の間に指や箸、スプーン、タオルを差し込む行為も禁物です。以前は舌をかまないようにといわれていましたが、現在はすすめられていません。無理に物を入れると、歯を折ったり粘膜を傷つけたり、嘔吐を誘発したりする危険があります。

また、発作の最中に、水や食べ物、飲み薬を飲ませようとしてはいけません。誤って気管に入る危険があります。ただし、医師から頬粘膜や鼻から使うタイプの抗けいれん薬を処方されている場合は別です。あらかじめ使い方の指導を受けているときは、その指示に従ってください。

てんかん発作で救急車を呼ぶ目安


発作が起きたとき、救急車が必要な場面と、必要ない場面があります。どのように見分ければよいのでしょうか。

すぐに救急要請が必要な場合

激しい全身のけいれんが5分以上続いて止まらない場合は、救急車を呼ぶ必要があります。てんかんの発作は通常1分から2分で止まり、5分を超えると薬が効きにくくなるため、5分が一つの目安になります。いったん治まってもすぐに次の発作が起こる、意識が戻らないうちに繰り返すといった場合も同じです。

そのほか、呼吸がなかなか戻らない、けがをした、水の中で発作が起きた、初めての発作が起きたなど、いずれかに当てはまる場合も救急要請の対象です。

受診や相談の目安

発作が数分で治まり意識も戻った場合は、多くは救急車を呼ばずに済みます。ただし、発作の回数が増えた、前兆の内容が変わった、これまでと違う症状が出たときは、早めに主治医へ相談することをおすすめします。診断がついていない段階で発作を疑う症状があれば、脳神経内科や脳神経外科、子どもの場合は小児科の受診をおすすめします。記録した動画やメモを持参すると、診断に役立ちます。

てんかんの発作の前兆についてよくある質問

ここまでてんかんの発作の前兆などを紹介しました。ここではてんかんの発作の前兆についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

前兆は必ず現れるのですか?

廣瀬 正和医師

必ず現れるわけではありません。前兆は主に焦点発作をもつ方に現れますが、焦点発作のある方すべてに生じるわけではないとされています。左右の脳が同時に巻き込まれる全般発作では、前兆を自覚しにくいとされています。前兆がないことは、発作が重いことも軽いことも意味しません。

前兆に気付いたら発作を止められるのですか?

廣瀬 正和医師

すべての方に当てはまるわけではありませんが、前兆に気付いて発作を軽くできる方もいます。てんかん情報センターによると、手がむずむずする前兆には手をこすったりこぶしを握ったりする方法が、考えが飛ぶ前兆には一点に集中する方法が紹介されています。

ただし、これらの方法には練習が必要で、効くかどうかは人によって異なり、発作を完全に止めるというより、遅らせたり軽くしたりするだけにとどまることもあります。前兆の時間そのものは短いことが多いため、日ごろから家族や周囲に発作のことを伝えておくと、いざというときの備えになります。

編集部まとめ


てんかんの前兆は、発作の直前に本人だけが感じる短い症状で、内容は人によってさまざまです。前兆に気付いても、その場でできることは限られているため、日ごろから家族や周囲に発作のことを伝えておくと、いざというときに役立ちます。
一方、目の前で発作が起きたときに周囲ができることもあります。危険な物を取り除き、けいれんが治まったら身体を横向きにしてください。歯の間に物を入れる、無理に押さえつけるといった行為は避け、けいれんが5分以上続くときは救急車を呼びましょう。また、前兆や発作の様子はてんかんの診察でとても大事なので、可能なら記録するようにしましょう。

てんかんと関連する病気

各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する病気

脳梗塞脳出血脳腫瘍

頭部外傷

脳炎

髄膜炎認知症

結節性硬化症

てんかんと関連する症状

各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する症状

上腹部からこみ上げる不快感

恐怖に似た感覚

手のむずむずした感じ

高い音が聞こえる

目の前に赤や白いものが見える

既視感

動作が止まり一点を見つめる

唇をなめるなどの無意識の動作

参考文献

『てんかん対策』(厚生労働省)

『てんかん診療ガイドライン2018』(日本神経学会)

『第3章 発作の観察と処置』(てんかん情報センター)

『発作時の対応及び介助の仕方は?』(てんかん情報センター)

『自己コントロールとは』(てんかん情報センター)

『成人のてんかんの病態』(てんかん情報センター)

『第3章 意識が曇り、行動が変わる発作(焦点意識減損発作あるいは複雑部分発作)』(てんかん情報センター)