八村塁が「バスケ以外のこと」を大切にするようになって起きた劇的な変化。「小さな幸せ」の意味
毎年3月20日の「世界幸福デー」に発表される「世界幸福度調査」。これは「自分にとって最高の人生を10、最悪の人生を0とした場合、現在の自分の人生はどの段階にあるか」を回答してもらい、その平均値を各国・地域の幸福度スコアとするものだ。
このランキングで2026年の1位はフィンランド、2位がアイスランド、3位がデンマークと続く。日本は2025年から6ランク下げて61位だった。
つまり自己評価として幸せを感じていない人が多いといえるのだ。
ではどうしたら幸福を感じることができるのか。
そのヒントとなる一冊が、フランスのベストセラー作家・ドミニック・ローホーさんの最新刊『人生を上質で満たす、小さな楽しみ』だ。
ローホーさんは『シンプルだから、贅沢』『シンプルに生きる』など多くの著書が世界で累計300万部を超えるベストセラーとなっているフランス人作家。「シンプルな生き方」を提唱し、世界中で人気を博している。
本書より抜粋して再編集のうえお届けする第1回は、ローホーさん自身が「小さな幸せさがし」の重要性を知った、自らの体験をお伝えした。
第2回は、第1章 「「自分を知る」ほど、人生は豊かになる」より、バスケットボール選手の八村塁選手の事例を紹介する。
自分の人生を「奪われない」唯一の方法
自分の楽しみを最大限に高めるもっとも効果的な方法とは何だと思いますか?
答えはシンプル。人真似ではなく、「私」の「楽しい」をどう定義するのか、自分に問いかけてみるのです。これが、自分の人生を「奪われないようにする」唯一の方法です。そのために、いつでもまた味わいたくなるような、自分だけの小さな楽しみの数々を心に刻んでおきましょう。
小さな楽しみは、たいてい日常のささいなものごとの中にあります。一見、快楽主義的で真面目さに欠けるように見えますが、私たちにとって必要不可欠なものです。
たとえば日向でコーヒーを飲む、静かに本を読む、友人が喜びそうな話を考えるといった本当にささいなことばかりかもしれません……。でも、堅苦しい仕事や義務感、政治的な問題を超えたところに、ただ「あなたが存在している」という単純な事実の中に、ある種の軽やかさと優雅さがあるのです。
これは、高尚な形而上学的な思索でも、存在の虚しさについての深遠な考察でもありません。小さな楽しみを重視することは、単に、人生のあらゆる瞬間を、心地よく、楽しいひとときにする方法であり、そしてそれらがいつでも手の届くところにあるとわかっていることなのです。
八村塁選手が「変えた」こと
近年、アメリカで大活躍しているバスケットボールの八村塁選手へのインタビューを、テレビ番組で観る機会がありました。その中で彼は、「バスケットで成功することだけを目指してきて、全部捨てて頑張ってきた、ひとりでいるのが好きだった。ところがNBAという念願の活躍の場にたどり着いた頃からメンタルがおかしくなり、何のために生きているのかがわからなくなった」というように語っていました。
そこで彼は約3ヵ月間の休養をとり、日本から家族を呼び寄せ、犬を飼い、日常を見直すことにしたそうです。そのときに取り組んだのが、「小さいことを見つけて楽しむ」でした。そして自分のバスケ以外の「小さな好き」を思い出すようにしたそうです。子どもの頃好きだったグミやハイキングなど……。この「小さな好き」が彼の心に響き、徐々に回復していったという話でした。
手に届くところにある「小さな楽しみ」で自分の人生を取り戻したのです。
小さな楽しみを「育む」と人生は深まる
日常のちっぽけな、とるに足らないことの中にも、
何かを感じられる瞬間が数多く存在するのだ! 日常の忙しさの中にも!
千祥炳、韓国の詩人(未邦訳)
千祥炳(チョン・サン・ビョン)が、「とるに足らないことの中にも、何かを感じられる」と言うように、確かに、小さな楽しみは取り立てて目立つものではありません。ただ、これを意識し、「育む」ことを学び、私たちが進んでこれを求めていくと、私たちの生活の質はより豊かで、深いものとなっていきます。
その際大事なポイントがあります。自分の小さな楽しみを見つけるためには、まずは自分自身をより深く理解することが重要なのです。
自分の「好き」だけが心を満足させる
「不幸」といっても原因はいろいろあります。そのひとつとして、漠然とした幸福を追求することが、私たちを不幸にしていると言えるでしょう。SNSにはため息の出るような家や旅やファッション、美しいプロポーションといったビジュアルがあふれています。
でも結局、私たちは自分に合わないものには決して満足しません。なぜなら私たちの心は、自分自身との良好な関係を通じてのみ満たされるからです。そのためにはたとえば、自分が好きな色や似合う色を知ること、本当の食の好みを知ることです。たとえそれがインスタ映えしないただのバタートーストでも。
自分の内面や外見の好きなところや嫌いなところを知ることが、小さな楽しみを増やしていくための基盤。つまりとてもシンプルな原則なのです。
