誰も住まなくなった実家を放置しておくとどうなるのか。ファイナンシャル・プランナーの坂本綾子氏は「実家を空き家のまま維持すると、防犯上のリスクがあるだけでなく管理にお金がかかる。さらに、空き家を放置すると、固定資産税が居住用住宅の6倍に膨れ上がり、最大50万円のペナルティがかかる、最悪の事態になってしまう」という--。

※本稿は、坂本綾子『お金のプロが実体験をもとに導く 実家じまいの最適解』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/Yusuke Ide
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yusuke Ide

■空き家を放っておくデメリット

人の管理が行き届いていない建物は、閉めっぱなしにすることで湿気がこもり、カビが生えたり、内装材が腐食したりするなどして全体的に傷んでいきます。害虫も発生しやすくなるでしょう。建物が傷むとそのままでは使えないため、人に貸すときは補修などの費用がかかったり、売るときには価値が下がったりするなどのデメリットも生じます。

庭のある戸建てなら、庭の草木が生い茂って隣家や道路にまではみ出せば近隣にも迷惑をかけることが予想されます。うっそうと茂った草木が建物を覆った状態は敷地や建物の中が見えにくいので、防犯上も好ましくありません。郵便ポストに郵便物が溜まっていれば、外からも空き家とわかり不審者が侵入する恐れもあります。

見た目の悪化のみならず、外壁が剥がれて落下して通行人にケガをさせるなど、近隣や通行人に実害を与えてしまうリスクもあるでしょう。万が一そのようなことが起こってしまったら、家をちゃんと管理していなかったのが原因として、損害賠償を請求される可能性もあります。

■空き家は火災保険の補償対象外になりやすい

古くなった家をそのままにしておけば、漏電や配線などから出火する可能性も高まります。火災保険に入っていたとしてもあてになりません。火災保険は「人が住んでいる家(居住用)」を対象とした契約内容が中心のため、何か起きた際に補償の対象外になる可能性が高いからです。また、空き家になった状態から火災保険に入ることも難しいでしょう。

万一、空き家になった実家で火災が起きて近隣に延焼したら、名義人(所有者)は重過失が認められると損害賠償責任を負うとされています。重過失とは、著しく注意を欠いた状態ということ。ですから、たとえ一時でも空き家になる期間があれば、とにかくきちんと管理を行わなければなりません。

2025年11月18日に起こった「大分市佐賀関の大規模火災」では、187棟もの建物が被害を受けました。火災原因は特定されていないものの、木造住宅密集地帯であったことに加え、高齢化による空き家率の高さが延焼につながったのではないかと推察されています。

■「特定空家」「管理不全空家」にかかる税金

空き家のまま放置すると、税金が増える可能性もあります。2014年(平成26年)に「空家法」(空家等対策の推進に関する特別措置法)が制定されました。自治体はそのまま放置すると倒壊の恐れなどがあり、周囲に悪影響を及ぼす空き家を「特定空家」として、指導・勧告を行えます。さらに2023年(令和5年)には「空家法」が改正され、「特定空家」の予備軍である管理が不十分な空き家を「管理不全空家」とし、こちらも指導・勧告の対象となりました。

「特定空家」や「管理不全空家」に指定され、自治体からの助言・指導に従わないと、勧告を受けることになり、税金の軽減(住宅用地の特例)が解除されます。居住用の家の土地にかかる税金は更地などの土地代に比べて安くなっていますが、土地の固定資産税の優遇(6分の1)が解除され、実質6倍に跳ね上がります。

出典:坂本綾子『お金のプロが実体験をもとに導く 実家じまいの最適解』(幻冬舎)

さらに自治体からの命令を無視した場合、最大50万円以下の過料(注1)が処されます。

たとえその家に住んでいなくても、不動産の所有者には固定資産税がかかり、地域によっては都市計画税もかかります。マンションなら管理費や修繕積立金の支払いも必要です。物件によりますが、管理費と修繕積立金の合計額は月2万~6万円程度。年間では数十万円かかるのではないでしょうか。

ちなみに私の場合、実家を空き家としていた際にかかった固定資産税や水道光熱費は、年間6万~7万円ほど。業者に頼んだ庭木の伐採と草取りについては1回あたり約15万円。移動にかかった交通費は1回往復で6万円ほどでした。

2年で40万円ほどかかりました。一時的に空き家にするならまだしも、「住む」「貸す」「売る」の選択を長引かせるほど、出費も多くなると言えるでしょう。

出典:坂本綾子『お金のプロが実体験をもとに導く 実家じまいの最適解』(幻冬舎)

注1:違反者に制裁として金銭的負担を課すもの。罰金とは異なり前科にはならない。

■電気と水道は「止めない」

実家じまいをすると決めても、「住む」準備をしたり、「貸す」「売る」ために入居者や購入者を待っていたりすると、一時的に空き家の期間が発生します。誰も住まなくなったら、電気・ガス・水道を止めなくてはと考えるかもしれません。しかし、電気と水道はそのままにしておきましょう。

電気と水道を解約すると、照明や掃除機などが使えなくなり、水が出ないとトイレを使えず手も洗えず掃除にも支障が出ます。家財の片付けのために足を運ぶこともあるでしょう。また、借り手や買い手が内見に来る前に、印象がよくなるようハウスクリーニングを頼むこともあると思います。

さらに、戸建ての解体作業では粉塵(ふんじん)の飛散を防ぐために散水を行うのが一般的です。解体作業が終わるまでは水道を使える状態にしておくのが望ましいでしょう。

ガスについては火災のリスクを考えると、止めた方がいいと言えます。

■家財処分をする際のポイント

避けて通れないのが、親が使っていたものの片付け。いわゆる家財処分です。親が施設に入ることになった場合や子どもと同居することになった場合も、実家の荷物を転居先にすべて持っていくのは、スペース的に難しいでしょう。実家に子どもが「住む」場合も、新たな荷物が増えますから、やはり不要なものの処分や、整理整頓が必要と言えます。

では、親が使っていた家財道具はどのように処分していったらいいのでしょうか。

実は、実家じまいをすでに行った人から聞くと、いちばんこの家財処分が大変だったという人が多いです。彼らに家財処分のいちばんのポイントを聞いたところ、「感情に振り回されることなく、とにかく捨てる」という回答がほとんどでした。

趣味の多い親だと生活用品以外にも趣味に関連する道具や作品、写真などがたくさん残っていて悩むところです。私の場合、母の茶道具の一部は近所でお茶をたしなむ方に譲り、自分が使いそうなものだけを残して他は処分しました。

写真=iStock.com/zepp1969
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/zepp1969

■家に潜んでいる「財産」

家財処分の際に必ず確認したいのが、家のどこかに現金を置いていないかです。私の母は、1万円札が10枚、20枚と入った封筒を、いくつか持っているバッグに入れていました。洋服ダンスに掛けたコートやジャケットのポケットにも1万円札入りの封筒が入っていました。母にそういう習癖があることを知っていたので、家財を処分する際には袋物や衣類のポケットはくまなく確認しました。

食器棚の中に紅茶の缶があり、なにげなく手に取るとずしりと重かったことから中を確認すると500円玉貯金をしていて合計で約12万円入っていました。家の中にけっこうな現金を保管し、それを忘れている高齢者は私の母に限らずいるようです。

現金がないか、大事な書類が引きだしなどに入っていないかを確認した後はいよいよ全体の片付けに入ります。家具、家電、調理器具や台所用品、衣類、書籍や雑貨類……。家の片付けと同様に、まずは処分する方法に合わせて分類しましょう。

その後、自治体のルールに従って集積所などに出しましょう。自分で行動すれば、時間はかかりますが、それだけお金は浮かせられます。

実家と自宅が近く、費用をかけずに片付けたいなら、一般ゴミとして出せるものは自治体のルールに従って収集日に収集場所に運びこむのもいいでしょう。自治体の制度に従い、粗大ゴミやリサイクル制度を活用します。

注意したいのが家電リサイクル法の対象である4品目(エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機)。家電リサイクル料金を払って(家電リサイクル券を購入して)家電販売店に引き取ってもらうか、自治体の指定業者に収集してもらう必要があります。料金は家電の種類とメーカーによりますが1点550~5000円程度です。このように、自治体の制度を使うのがいちばん安上がりです。

アプリで売りにくい家具・家電の換金方法

フリマアプリを使った個人間での中古品の売買が浸透してきました。家財の中にお金に換えられるものはないだろうかと思ったら、いくらで売れそうか調べてみてはいかがでしょうか。

坂本綾子『お金のプロが実体験をもとに導く 実家じまいの最適解』(幻冬舎)

ただし実家じまいの場合、家具や家電など配送料が高くてフリマアプリでは難しいものも含まれています。そこで活用したいのが中古品の買取業者です。

近隣のリユースショップに問い合わせるほか、ネット上で複数の買取業者から一括査定ができるプラットフォームもあります。利用する際には、これまでの実績や運営会社の情報を確認しましょう。自治体と連携しているところなら安心感があります。ゴミ削減は自治体にとっても重要な課題なので、官民連携の取り組みが進められているのです。

買い取ってもらえそうなものを選別したり、先方とやりとりしたりする手間がかかりますが、時間とエネルギーがあるなら、おすすめです。まだ使えるものを処分するのは忍びないから無料でも誰かに使ってもらいたいなら、自治体によってはリユーススポットなどで受け入れています。

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坂本 綾子(さかもと・あやこ)
ファイナンシャルプランナー
1988年よりマネー誌、女性誌にて家計管理や資産運用の取材記事を執筆。1000人以上に取材。99年ファイナンシャルプランナー資格取得。2010年ファイナンシャルプランナー坂本綾子事務所設立。20年を超える取材記者としての経験を生かして、生活者向けの金融・経済記事の執筆、家計相談、セミナー講師を行っている。著書に、ベストセラーとなった『節約・貯蓄・投資の前に 今さら聞けないお金の超基本』(朝日新聞出版)、『まだ間に合う! 50歳からのお金の基本』(エムディエヌコーポレーション)などがある。
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(ファイナンシャルプランナー 坂本 綾子)