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日本人の約8割が、調査に「疲れている」と答えています。回復に役立つものを突き止めた疲労の第一人者や、疲労を“見える化”するツールを活用している運送会社、アプリを使った生活改善に取り組む患者らを取材。最新の疲労研究や回復方法を紹介します。

■小学5年、なぜ「疲労」をテーマに?

「疲労は単なる、休息すれば回復する状態ではなく、重要な国民的課題として認識されております」。山口大学の野島順三教授は、山口市で開かれた第22回日本疲労学会総会・学術集会でこう語りました。

医師や研究者など疲労の専門家が集まる疲労学会。ことし最年少で参加したのは、小学5年生の野田泰夢(ひろむ)くんです。「子どもと大人の疲れの違い」について調べた自由研究が認められたのですが、なぜ「疲労」を選んだのでしょう?

野田くん
「自分が疲れていたというより、父と母も『ああ疲れたな』と言っていて、みんな『疲れた』と言っていました」

子どもから見てもみんな疲れている…。日本リカバリー協会による10万人の調査(「日本の疲労状況2026」)によれば、現代日本人の約8割が「疲れている」と回答しています。その疲労を回復させるためには何が役立つのでしょう?

■疲労のメカニズムを解明する第一人者

大阪市住吉区の大阪公立大学で行われているのは、疲労回復のための研究です。人工気象室という部屋で真夏の高温多湿状態を作りだし、1時間ほど自転車を漕ぎ続けます。暑い中で運動をして、疲労回復に役立つ水分補給を調べています。

携わっているのが、日本の疲労研究の第一人者。日本疲労学会理事長で神戸大学大学院特命教授の渡辺恭良さんです。取材した日は、2種類の飲みものを比べていました。レモン水と、レモンの入った紅茶です。

運動後の血流や心拍数、自律神経などを計測しました。「紅茶ポリフェノールを飲むと、回復が早くなっている。運動の時の体のコンディションを整え、回復を早くする。夏バテには非常に有効」と渡辺教授は言います。

渡辺教授は、10万人の調査や最新の研究で、疲労の大本のメカニズムを解明したといいます。

「酸素を使って最終的にエネルギーを作り出す。無理をすると活性酸素が消去しきれなくなり、細胞の中の大事な部品をサビつかせてしまう。(これが)『生体酸化』」

■“体のサビ”で脳に炎症が?

この生体酸化、いわゆる体のサビこそが、疲労の大本なのだそう。では、このサビが増えるとどうなるのでしょう? その影響は、脳に及ぶといいます。

体のサビの反応で脳に炎症がおきます。この炎症が大きくなると、寝ても疲れがとれず、強い倦怠感で治療が必要な状態になります。

普段の運動などで疲れたときにもごく小さな炎症は起きますが、栄養補給や睡眠で治まります。しかし度重なる疲労や老化によって回復できないと、脳の炎症が大きくなってしまうのだそう。

渡辺教授
「炎症、そういうことが全部おこっていることが、計測で明らかになってきた」

■高カカオチョコを配るシニア向け施設

体のサビを防いで脳の炎症を抑え、疲労回復に役立つものが渡辺教授の研究でわかってきました。

「ポリフェノールは生体酸化、酸化されたタンパクなどを補修し、炎症を抑える」と渡辺教授。ポリフェノールとは、赤ワインや紅茶カカオなどに含まれています。

渡辺教授は、特に脳の疲労回復にカカオポリフェノールが役立つという研究を発表しました。その研究成果を、普段の食事に取り入れているシニア向けのケア施設があります。

千葉市稲毛区のスマートコミュニティ稲毛では、施設の利用者に疲労回復のため、高カカオチョコレートを配っています。

利用者からは「ほろ苦くて健康にいいと思う」「おいしいです」「体のためにポリフェノールが多くて」「囲碁スゴく調子いい。これ(チョコレート)のせいかな?」といった声が聞かれました。

■疲れ具合を測定する疲労度計を開発

こうした疲労軽減の取り組みはいろいろな場所で行われていますが、どのくらい疲労は軽減されているのでしょうか?

渡辺教授を中心とした疲労研究者たちは、疲労を目に見えるものにしようと、疲労を測定する疲労度計を開発しました。指にセンサーを当てて脈拍や心拍の周期を解析することで、疲労が数値でわかるといいます。いわゆる疲労の「見える化」です。

実際に、この疲労度計を役立てている運送会社があります。ロジスティード株式会社ではドライバーが毎朝、出発前に疲労度を測ります。その疲労度を基に、運転の注意が行われます。

例えば今朝の体調は「晴れ」ですが、疲労度は「くもり」と端末に表示されると、「若干ヒヤリハット予報が注意で出てます。いつも以上に車間をとって、安全運転を心がけてください」と伝えられました。この運転手に体調を聞くと、「ちょっと疲れてます」。

ロジスティードの篠原雄飛さん
「顔色だけではなく客観的な数値を基に、『今日疲れてるんだ』と声がけして出発できるのが大事」

この会社では導入して5年。同社調べでは、急ブレーキなどの危険運転が98%減り、軽微なものも含めた事故は70%減ったといいます。

■スマホで計測できるアプリも開発

疲労度計をもっと役立ててもらおうと、同じ原理で、スマホで計測できるアプリ「ヒロミル」も登場しました。開発したのは、大阪大学大学院の倉恒弘彦招へい教授です。

倉恒教授は「スマホのカメラで指先の色の変化から自律神経を分析し、データから疲労を評価できるようになった」と話します。

■疲労度アプリで生活改善を検証

この疲労度アプリを使って疲労回復に役立つ生活改善を検証してみます。東京・港区赤坂の自律神経外来「小林メディカルクリニック東京」を訪れた、疲労でお悩みの2人に協力していただきました。

松井明香さん(47)は最近、手足の冷えや不眠で疲れがとれないといいます。「朝なかなか起きられない。起きてもすぐ眠くなってしまう」

疲労度計の結果は、脳の疲れが74と高く、ストレスも高め。総合評価は100点満点で19点。ストレスも脳の疲れも上昇しています。

もう1人の平野敦子さん(54)も最近眠りが浅く、疲労感がとれないと悩んでいます。「起きたときから疲れがある。夕飯作るくらいが一番疲れがひどくて、すぐに横になりたくなる」。疲労度は脳の疲れが91と高く、総合評価は10点。疲れがだいぶたまっていました。

■血行悪化→自律神経の乱れの悪循環

2人は検査の結果、自律神経自体に大きな異常はないものの、ストレスと疲労により、腸の動きが低下していました。

主治医の小林暁子院長は「緊張している状態だと胃とか腸の働きが低下するので、便通も悪くなりますし、末端の血管がキュっとしまる」と説明しました。

そのため2人とも血行も悪くなり、自律神経が乱れやすいという悪循環がおきているとのこと。「自律神経を整えるベースとなるのが、腸内環境を安定させ整えるということです」と小林院長は言います。

■疲労回復のための腸活に2人が挑戦

そこで2人は小林院長指導のもと、自律神経のバランスを整えて疲労感を減らすため、疲労回復の腸活を実施することに。

まずは、腸内環境を整えるための発酵食品です。そのポイントについて小林院長は「いろんな発酵食品、ヨーグルトも出ているので、キムチとか納豆とか、他の発酵食品もバランスをとりながら、いろんな種類をとっていただいて」と説明します。

さらに、ヨーグルトに加えると良いのが、ポリフェノールが多いオリーブオイルなのだそう(大さじ1を目安)。松井さんは「合いますね。おすすめです。おいしい」と言います。

小林院長は「エキストラバージンオリーブオイル使っていただくと、便の滑りが良くなり、腸内環境を整えてくれる」と言います。今回の腸活では、ポリフェノールが多い紅茶も水分補給でとることを続けました。

■総合評価は?…2人とも変化を実感

2週間後、疲労度計で計りました。松井さんの総合評価は、19点が59点にアップ。「布団入るとすぐに寝ちゃう。朝起きるとパッと目が覚めて、おなかすいた感じで目が覚める」と言います。

平野さんは、10点が40点にアップ。「朝起きてから午前中も元気だし、体力がついたというより、クリアになった気はします」

疲労回復のための腸活を行った2人のデータを、許可をいただいた上で、渡辺教授に見ていただきました。

渡辺教授
「今は立ち上がってきた、いい感じになってきたところですね。続けるともっと良くなると思います」

暑い夏、疲れがたまりやすい時期です。まずはポリフェノールを意識し、体のサビをためない生活を始めてほしいと専門家たちは言っていました。

(9月7日『news every.』より)