ケニアでは、欧米の大学に通う学生の代わりに論文を執筆するゴーストライターが成立していましたが、2022年のChatGPT登場後、壊滅状態にあると報告されています。

Kenyans Made a Living Writing College Essays. Then A.I. Arrived. - The New York Times

https://www.nytimes.com/2026/09/05/technology/kenya-college-essays-ai.html

ニューヨーク・タイムズによると、農村出身のテレシオス・ブンディさんの場合、2011年に大学進学のために首都ナイロビに出てきて、専攻分野の公衆衛生を学ぶとともにゴーストライターとして国外の学生のために工学や医学、コンピューターサイエンスなどの論文を執筆。多いときには1日で3本の論文を書いていたとのこと。

大学卒業後は、公衆衛生の分野には進まずにネットで論文執筆ビジネスを開始し、論文1本につき40ドル(約6200円)から70ドル(約1万1000円)で執筆代行を行っていました。在学中からの12年間で執筆した論文は累計で2500本以上になるそうです。おかげでブンディさんは、公衆衛生分野に就職した場合よりも5倍も稼ぐことができ、大学で必要になるノートPCをローンで購入してくれた実家のコーヒー農家に仕送りをするほどになりました。

2010年代初頭には、ブンディさんのようなゴーストライターはナイロビ市内に4万人はいて、スバルの新車を乗り回し、スマートフォンの最新機種を持って、クラブで予約席を取るほどの羽振りの良さだったそうです。

「欧米の学生の代わりに論文を書く」ことがケニアでは一大ビジネスになっている - GIGAZINE



しかし、2022年にOpenAIがChatGPTをリリースすると、ゴーストライター業を取り巻く環境が激変。仕事が減り、あっても報酬は低くなっていたとのこと。論文執筆のほかに、議事録の文字起こしなどの仕事も行われていましたが、同じようにAIの影響で消えていきました。

インターネットで論文執筆のような単発の仕事を受ける「インターネットギグワーク」の経済について研究しているオックスフォード大学のマーク・グラハム教授はニューヨーク・タイムズに対し、「ケニアだけでなく、大きな変化が見られる場所ならどこでも同じことが起きるでしょう。AIの登場は、こうした労働市場の大部分を奪い去ってしまったのです」と述べています。

結局ブンディさんは廃業し、ドイツ政府の協力機関でケニアの若者たちがデジタル経済の中で活躍する場を見つけられるよう支援する仕事を行っています。ブンディさんは自らの経験から「AIは銀行員や会計士、エンジニアを脅かし、やがては建築家も脅かすでしょう。AIは誰にでも迫ってくるのです」と語っています。