居酒屋で“ノンアル”頼んだのに「酒」出されアレルギー、命に関わるリスクも…店側の「法的責任」どこまで問われる?【弁護士解説】
居酒屋でノンアルコールのドリンクを注文したのに、アルコール入りの飲料を提供され、アレルギーで体調不良になった――。そんな投稿が、先日、Xで話題になった。
投稿者の男性はアルコールにアレルギーがあることから、メニューの「ノンアルコール」欄にあった「男梅ソーダ」を注文。提供時にも念のため店員に確認したが、実際に飲んだところ、顔が赤くなり体が熱くなるなどの症状が発生。再確認すると、提供されたドリンクが「梅酒ソーダ」だったことが判明したという。
男性の投稿には「マジでアレルギーはヤバいっすよね」「アレルギーある人死ぬよな」「これ絶対にやってはいけないことだよね」などのコメントが寄せられていた。また、「これがもし妊婦とか運転手とかだったらこの店はどう責任を取るんだろ」との声も上がっている。
自身も飲食店を経営した経験を持つ石粼冬貴弁護士(法律事務所フードロイヤーズ)は、このようなケースでは店側が治療費や慰謝料などの損害賠償責任を負う可能性があるほか、店員個人に業務上過失傷害罪が成立する可能性もあると指摘する。
店や店員が負う法的責任は?本件のように飲食店が注文されたものとは異なる飲食物を提供し、それを摂取した客にアレルギー症状や体調不良などの健康被害が生じた場合、店側はどのような法的責任が問われるか。
まず、民事上の責任については、店側に債務不履行または不法行為が成立し、客に対して治療費や慰謝料などの損害賠償義務を負うことになる。
「民事上は、ミスをした店員にも、店側にも、それぞれ責任が生じる可能性があります。
ただ、客からすると、わざわざミスをした店員個人に損害賠償を求めるというよりも、基本的には店側に対応を求めることになるでしょう。
そもそも店側は、従業員が仕事中に起こしたミスについて責任を負う立場にあります。また、店員個人よりも、店側の方が賠償に対応できる資力がある場合が多いためです」(石粼弁護士)
他方で、刑事責任については、アルコールの誤提供に関わった店員に業務上過失傷害罪(刑法211条)が成立する可能性もあるという。法定刑は5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金だ。
これに対し、店を運営する法人が刑法に基づき処罰されることはない。業務上過失傷害罪は法人には適用されないからである。
もっとも、アルコール誤提供という事故が起こった原因が個々の店員ではなく店の組織体制などにあった場合には、責任者である経営者が処罰される可能性が考えられる。
誤提供を防ぐため店側が取るべき対策とはそもそもアレルギー食材の含まれる飲食物の誤提供は、客にとって重大な健康被害を与えかねない、深刻な問題だ。
とくにアルコールの誤提供の場合、リスクはアレルギーに限られない。車の運転を予定している人や未成年者、妊娠中の女性など、さまざまな事情を抱える人に対して重大な問題を引き起こすおそれがある。
石粼弁護士は「アルコールに限らず、飲食店では、求められたもの以外のものを出さないというのは当然です」としたうえで、誤提供を防ぐための具体的な対策を、以下のように語った。
「アルコールの誤提供については、アレルギーや急性アルコール中毒のほかにも、服薬中の薬物相互作用による深刻な健康被害、宗教上の禁忌といったさまざまな問題が関わります。
民事・刑事の両面における法的な責任のほかにも、SNSを通じた風評の低下など、店側にとっても多角的かつ深刻なリスクが伴う問題です。
とくに、未成年にお酒を提供すれば未成年者飲酒禁止法違反で刑事罰の対象になります。また、飲酒運転をうながすような形でアルコールを出した場合は、道路交通法の規定で、店側も処罰される可能性があります。
店舗側は、グラスや容器、ストローなどを物理的・視覚的に識別できるようにする、ドリンカー場(※)での保管・配置を分離する、配膳時に声をかけて確認するなど、十分な予防策を講じるべきでしょう。
また、こうした対策を徹底するための従業員教育も重要です」(石粼弁護士)
※居酒屋などでドリンクを作る作業スペース

