〈沖縄ホテル放火〉「禁煙場所で喫煙を繰り返し…」火をつけた米国人を逮捕…現場では25歳米海兵隊員が炎の中に飛び込み決死の救助
骨組みだけになった無残な建物の様子が火災の激しさを物語っていた。沖縄本島中部に位置する北谷町。域内に米海兵隊基地「キャンプ・フォスター」を抱え、「基地の街」らしい異国情緒漂う飲食店や店舗が建ち並ぶエリアの一角が炎に包まれたのは、夏休み真っただ中の8月15日未明のことだった。
≪画像≫ホテルで火災のなか窓枠によじのぼり宿泊客を救出する米海兵隊員
「宿泊客が複数いることを認識しながら火をつけた」
「琉球新報」など複数の地元メディアの報道によると、火災が起きたのは15日午前3時40分ごろ。
「火災は約3時間40分後の午前7時20分に鎮火しましたが、この火災で、宿泊客だった大阪府の55歳の男性が気道熱傷や一酸化炭素中毒、急性呼吸不全の重傷を負って意識不明の状態で救急搬送されました」(地元メディア関係者)
運営会社のホームページによると、ホテルは母屋に並ぶ個室のほか、コンテナを改装したコテージタイプの部屋も併設している。1泊3500円から利用できる割安なホテルで長期滞在者向けのプランもあるようだ。
ホテル周辺は、1980年代に日本に返還された米軍施設「ハンビー飛行場」の跡地に建てられたことから「ハンビータウン」と呼ばれるようになったエリアだ。大型商業施設やホテル、ビーチがあり、県内でも有数の観光スポットとして多くの観光客でにぎわっている。
火災直後に現場を取材した地元メディアの記者が語る。
「現場はお店と住宅街が入り混じる地域。基地外で過ごす米兵向けの住宅も点在しています。土地柄、米兵がらみの事件や事故も多いため、『米兵の仕業か』とか『タバコの不始末か』『いや、放火かもしれない』などと噂が飛び交っていました」
急展開したのは、火災発生から17日後の9月1日。沖縄県警が、ホテルに放火したなどとして現住建造物等放火と殺人未遂の容疑で米国籍の自称会社員、ポセディオン・ロバーソン容疑者(32)を逮捕したのだ。
「男はホテルの宿泊客で旅行者、来沖してから1週間ほど連泊していたようです。ホテルには当時、男以外に18人が滞在しており、県警は『宿泊客が複数いることを認識しながら火をつけた』として、放火の罪のほかに殺人未遂の容疑まで加えて逮捕しています」
禁煙場所での喫煙を繰り返して、ホテル側から複数回注意されていた
なぜ、事件発生から逮捕に至るまでにこれほど時間がかかったのか。
「男は火事があった直後に現場から姿をくらませていました。火災から6日後に現場からさらに南に10キロほど離れた浦添市内の雑居ビルに侵入し、ビルの廊下に置かれていたソファで寝そべっていたところをパトロール中の警察官に発見され、建造物侵入の容疑で身柄を拘束されました。放火事件との関連を調べている中で、最初に身柄を取られた事件の勾留期限が切れるタイミングで逮捕したのだとみられます」(先のメディア関係者)
地元テレビ局のRBCによると、男はホテル滞在中に禁煙場所での喫煙を繰り返して、ホテル側から複数回注意されていたとされる。
県警は今後、こうした証言も踏まえ、男が犯行に至った背景を探っていくとみられる。
事件を巡っては、火災当時に現場で米軍関係者による救助活動も行われたという。男の逮捕に至るまでの事件の顛末もさることながら、この一件も一部で話題になっていたという。
「きっかけは米軍が提供するメディアサービス『DVIDS』オンライン版が火災から間もない8月18日に公表した記事でした。ここで火災現場で救助活動に当たった海兵隊員の活躍を写真付きで伝えたのです。さらに、その一件を米軍の準機関紙『星条旗新聞(STARS and STRIPES)』オンライン版も21日に現場で撮影された動画付きで『海兵隊員が沖縄のホテル火災の現場に突入し、宿泊客に危険を知らせた』などと報じてSNSなどを通じて拡散したのです」(前出のメディア関係者)
「海兵隊員が壁をこじ開けた」「地元の警察官が木製のバールを持って…」
星条旗新聞などによると、救出活動に当たったのは、米海兵隊基地「キャンプ・ハンセン」に所属するカリフォルニア州出身の25歳の海兵隊員。
同基地に拠点を置く「第3海兵遠征軍」傘下の情報部隊「第3海兵遠征軍情報グループ」の戦闘工兵だとされる。ガールフレンドと一緒に歩いて帰宅しているところ火事に遭遇したという。
隊員は、建物内に人の気配があるのを察知し、現場を通りかかった人らとともに窓からの侵入を試みたものの「煙と熱に阻まれて」断念。救助のために「壁をはがすことにした」などと証言している。インタビューで、当時の心境を「自分が逆の立場なら、他の人にどうしてほしいかを考えた結果だ」と明かし、「行動を起こしなさい。傍観者であってはならない」と呼び掛けている。
米軍当局の発表に準じるDVIDSはこの救助活動について、「戦闘工兵は、主要な進入路が利用できない場合に、突破作戦を実施し、代替の進入地点を特定する訓練を受けている」として、隊員が救助のために壁の「突破」をこころみた背景に軍隊内での「経験と訓練」が生かされたとも指摘している。
ただ、「壁をこじ開けた」という救助活動の詳細については、一方の星条旗新聞では「地元の警察官が木製のバールを持ってきて、壁をはがし始めた」という隊員の証言を報じており、救助活動の証言については米軍当局側と機関紙「星条旗新聞」側とで微妙な食い違いもある。
事件・事故の報道では、情報が錯綜するケースも少なくないため、更新された情報が古い情報の内容と違ってきたりするのはままあることである。今回のような、米兵の救助活動を巡る報道では、この「食い違い」を巡って大騒動に発展したケースもある。
「2017年12月に沖縄自動車道で発生した自動車事故で一時重体となった海兵隊員が行なったとされる救護活動を取り上げた産経新聞がその後、記事の内容が誤りだったとしてお詫びと記事の削除に追い込まれた一件です。
産経側は隊員の妻のFacebook投稿や米NBCテレビの報道を引用して『隊員が事故に際して救護活動をした』などと報じましたが、その後、県警や米軍側がその事実関係を否定しました。この一件で産経側は記事の取り消しとお詫びのほか、記者の処分に踏み切らざるを得ない状況に追い込まれたのです」(大手紙社会部デスク)
逮捕された米国人の男が有罪となれば、火事を起こした同胞の不始末を米兵が処理した、という構図にもなる今回の事件。在日米軍基地が集中する「基地の島」ならではの事件ともいえそうだ。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
