万博を推進した吉村大阪府知事。現在の最大の関心事は「副首都」だと言われている(写真:本誌写真部)

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2025年4月に開幕した大阪・関西万博をめぐって、いま、工事費の流れが改めて問われている。万博のシンボルだった「大屋根リング」の関連工事では、竹中工務店の現場責任者だった社員が、下請け業者に工事費を水増し請求させた疑いで逮捕された。

その一方、開幕に間に合わせるために工事を完成させながら、正当な代金を1円も受け取れない下請け業者が、いまも取り残されている。

「セルビア館の空調を、いったい誰が取り付けたと思っているんですか。勝手についたわけではありません。僕たちが開幕に間に合わせるために工事をしたんです」

そう憤るのは、関西で内装工事会社を経営するAさんだ。

報道によれば、未払いを訴える建設会社は30社を超え、被害額は10億円以上にのぼるとされる。Aさんも、その一人だ。

■「契約書も着手金も用意する」と言われた

Aさんにセルビア館の空調工事の話が届いたのは、開幕まで約3カ月に迫った2025年1月だった。

元請けは、フランス系イベント会社のGLイベンツ・ジャパン。Aさんは4次下請けとして、「特殊な空調工事ができる業者を探している」と依頼を受けた。

しかし、当時は工事金額も範囲も定まっておらず、Aさんはいったん断ったという。その後、空調工事を得意とする協力会社とともに請け負うことになった。ところが現場に行ってみると、本来、設備工事の後に設置するはずの壁がすでに完成しており、壁を解体して配管し、再び復旧する追加工事まで必要になった。

最終的な工事代金は3,132万円。3次下請けからは「契約書や着手金は着工日までに用意する」と説明され、Aさんは約100万円の空調機器を11台ほど用意した。

だが、契約書は交わされず、着手金も支払われなかった。

■3,132万円、いまだ1円も支払われず

Aさんは毎日10数人の職人を現場に入れ、約3週間で工事を完成させた。しかし、その間に3次下請けの担当者は次第に電話に出なくなったという。

「『来週の月曜日まで待ってください』と言われたら、立場の弱い僕たちは待ちます。でも月曜日になっても連絡がない。すると今度は『週末までには』と言われる。その繰り返しでした」

途中で工事を止めることも考えた。しかし、すでに高額な機材を購入し、多くの職人を現場に入れている。何より、「自分たちが工事を止めたら、万博の開幕に間に合わない」という思いがあった。

「万博なんだから、どこかが、誰かが何とかしてくれるだろうという思いがありました。利益が出ないことはあっても、まさか1円ももらえないとは思わなかった」

工事から約1年半が過ぎても、3,132万円は1円も支払われていない。Aさんは協力会社に自社資金から約450万円を支払ったが、残る約2,300万円はいまも待ってもらっている。

「うちは設立してまだ6年ほどの会社です。手元に現金はほとんどありません。それでも協力会社の社長が『2000万円の車を1台買って壊したと思うしかない。あとは働くしかないやん』と言って待ってくれている。だから僕は何とか生きています」

未払いは私生活にも影を落とし、Aさんはその後、離婚したという。

「もちろん原因はこれだけではありません。でも、このお金の問題が最後の一押しになったことは間違いありません」

Aさんは、契約書を交わさずに工事を始めたことについて、自らにも反省すべき点はあるという。それでも、こう訴える。

「何の依頼もなく、僕たちが勝手にセルビア館へ行って工事をすることなどあり得ません。僕たちが工事を完成させたから、セルビア館は開幕に間に合ったんです。その成果を受け取った万博協会や大阪府が、『民民の問題です』と言って終わらせていいのでしょうか」

■GLイベンツ・ジャパンは次の大型事業を

万博の未払い問題を国会で追及してきた共産党の辰巳孝太郎衆院議員(50)は、とくにAさんの元請けであるGLイベンツ・ジャパンを問題視している。

「GL社の未払い問題は一つや二つではありません。元請けを務めたセルビア館、ドイツ館、ルーマニア館、マルタ館の4館すべてで、未払いをめぐる訴訟になっています。争われている金額は総額で約6億7千万円。元請けには、下請けで未払いなどが起きないよう現場を管理・監督する責任があります。それなのに、元請け自身をめぐってこれだけの未払い問題が起きている。そもそも元請けになる資格があったのかということまで検証すべきです」

しかも、問題が解決しないまま、GL社は次の大型事業にも参入している。

「10月から開催される『愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会』に加え、2027年の国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)にも参画しています。親会社GL events SAはアジアパラ競技大会の最上位スポンサーとなっており、協賛金は22億円。日本法人は組織委員会から随意契約の候補者に選ばれ、会場設営・運営など約630億円の大型業務を受注したんです」

さらに辰巳氏が国会で取り上げたのが、GL社と係争中の会社側が裁判で明らかにした、あるやり取りだ。

辰巳氏によれば、GL社側から「いまはお金がないので待ってほしい」と説明され、その理由としてアジア大会が示されたという主張が裁判記録にあるという。

「最上位スポンサーになるための約22億円の協賛金を負担することになっており、いまはお金がない。大会の契約金が入るまで待ってほしい、という趣旨の説明があったと主張されています」

これはあくまで係争中の会社側の主張であり、GL社側の見解と一致しているとは限らない。しかし、仮に万博の下請け代金より、次の大型事業への参入に必要な資金が優先されたのだとすれば、看過できないだろう。Aさんは言う。

「みんなが欲しいのは、働いた分のお金です。万博協会や大阪府が間に入り、誰がどの工事をして、どれだけ支払われていないのかを調べて、まず救済してほしい。その後、責任のあるところに請求すればいいと思います」

この未払問題を放置したまま次の大型プロジェクトへ進めば、同じ過ちが繰り返されるのではないだろうか。