例えば特殊詐欺の過程で、最後の送金こそ思いとどまったものの、現金や貴金属の保有状況をうっかり話してしまった高齢者がいるとする。このような情報が、特殊詐欺グループには蓄積され、それが強盗部隊へと流れるという仕組みだ。奥窪氏が続ける。

「昨今のAIの発達で、特殊詐欺グループが使う名簿の突合せが行われており、彼らからすると鮮度の高い情報が安価に手に入る状況が起きています。たとえば、『金融資産が5000万円以上ある人』のリストと『独居の高齢者』、あるいは『老人ホームのカタログを請求した人』を掛け合わせれば、一瞬で該当する氏名や連絡先があぶり出され、カモリストができる。それを元に架電して資産状況や保管状況を吸い上げ、詐欺を試みます。けれども、最後で警察を呼ばれた案件などは成功事例の何倍もある。ここをマネタイズする方法として今、跋扈しているのが案件屋と言えるでしょう」

 情報の入手経路については追って詳述するが、案件屋の手元にはなんらかの形で資産が眠っている家の情報が常時、何十件も貯まっている。彼らは、もっともリスクが高い強盗の実行部分をアウトソースするのが最大の特徴だ。

「案件屋が起こす事件でタチが悪いのが、強盗に踏み込む部隊が昨日今日できたような急ごしらえの犯罪グループであること。闇バイトだったり、借金で首が回らなくなった闇金融の顧客を実行犯に仕立てるのですが、そもそもが素人なので過剰に暴力をふるってしまったりと凶悪化しがちです。案件屋はテレビ電話やテキストで遠隔指示するだけで現場には入らない。過去に狛江で起きたアポ電強盗殺人と同じ構図なんです」(前出・社会部記者)

 強盗しかできない素人同然の集団に、現金の在り処まで記された精度の高い情報だけが渡っていく。こうして、強盗致傷などの凶行がエスカレートしている。 では、警察はどう構えているのか。

「’25年から捜査員が偽の身分証で闇バイトに応募する”仮装身分捜査”が始まりました。ただ、現実には課題だらけです。というのも、免許証を偽装して送る際、実在の住所は書けないという縛りがある。書けばそこに住む人間に累が及ぶから仕方がない面はあるのですが、今どき地図アプリを使えば、存在しない住所だとすぐに割れてしまう。そもそもが偽造した身分証を対面で提示するケースを想定しており、スマホで画像を送らせる闇バイトの実務に追いついていないのが実情です。海外、たとえばアメリカのFBIは実際に部屋を借り上げたり、押収したアジトの住所を使ったりして身分証を作成するのですが、日本はそこまで至っていない」(同前)