【田中 弥生】意外と知らない、実は「コロナ対策」が終わっていなかったという「驚きの現実」

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私たちの税金はどのように使われているのか? 会計検査院って何をする機関なのか?

注目の新刊『税金はどこへ行くのか――元会計検査院長が見た「日本の財政」』では、世界的経営学者ドラッカーの弟子にして会計検査院長を務めた著者が、「アベノマスク予算1000億円の行方」「給付金が誰にいくら配られたのか」「複雑なガソリン補助金」「多重下請けの実態」といった」「お金の流れ」を解き明かしている。

日本銀行元総裁 白川方明氏推薦!

「深刻な財政赤字をかかえる日本。財政支出の検証は健全性維持の出発点だ。読者は会計検査院の仕事の重要性を知るだけでなく、良きパブリック・サーバントの姿も発見するだろう。何よりも、読みやすい良書である」

(本記事は、田中弥生『税金はどこへ行くのか』の一部を抜粋・編集しています)

実は終わっていないコロナ対策

新型コロナ感染症対策として、具体的にどのような対策が講じられていたのだろうか。個別の検査事例に入る前に、一連のコロナ対策事業の検査報告を俯瞰して捉えてみよう。

図表3-1は、会計検査院で、令和2年度決算検査報告から令和5年度決算検査報告までコロナ関連、あるいは物価対策に関する検査において、主にどんなものがあったのかを示している。

ここには会計検査報告として公表された事案のみが列挙されており、政府のコロナ対策のすべてを網羅したものではない。それでも、これだけのさまざまなコロナ対策が講じられ、国費が投じられてきたことが分かる。

令和2年初頭から新型コロナ感染症が蔓延しはじめ、政府は学校の一斉臨時休校を決めた。以来、国民生活や経済活動の自粛を求め、同時に補助金や給付金、貸付などさまざまな対策を講じた。

会計検査院は、新型コロナ感染症対策(以下、コロナ対策)が始まった直後から教訓として記録にとどめるために、政府によるコロナ対策を予算執行面から可能な限り包括的に捉えようとした。結果として、84本の検査報告が公開された(2025年現在)。

注目すべきは、「新型コロナウイルス感染症対策」と「物価高騰対策」の二つが並んでいることだ。

なぜ二つをセットにしているのか。それは、コロナ対策として講じられた給付金・補助金・交付金が、コロナ収束後、物価高騰対策という名前を新たに加えて引き継がれているものが多いからだ。

他国政府が新型コロナ感染症の収束とともにコロナ対策を終了したのとは対照的で、政府の財政制度等審議会(財務大臣の諮問機関)など専門家からも指摘されている。

コロナ対策を漫然と続けるのではなく、感染症の収束とともに対策を止めて、総括を行い課題や教訓をきちんと整理すべきではないか。それをせずして別の名目を加えて続けることは、改善点を見失い非効率な予算執行になる可能性を孕んでいる。

そして2026年の今、石油危機に直面し、ガソリン補助金、電気・ガス補助金の財源問題が浮上している。もし、コロナ収束後のタイミングで延々と継続せずに、一旦ピリオドを打って、メリハリをつけておけば、先の二つの補助金の石油危機対策としての意味はより明確だったはずだ。

アベノマスクと持続化給付金

令和2年度の報告を見ると、記憶に未だ鮮明な布製マスク配布事業――いわゆるアベノマスク――がある。マスクを使った方もいるかもしれないし、まだどこかに保管している方もいるかもしれない。この事業は、世界中で感染症が急激に広まる中で、国内の不織布マスクが不足し、代わりになるものとして布製マスクを製造し、国民に一刻も早く配ることを目的としたものだ。

予算は1044億円。これはどのくらいの規模なのか。たとえば、令和3年度の国立大学の運営費交付金は86大学すべて合わせて約1兆790億円である。この1割弱の予算がマスクを製造し、国民に配る費用に投じられたことになる。

はたして、何枚の布製マスクがどのような契約条件下で製造され、どのように使われたのか。その製造費、運搬費、さらには保管費にいくら使われたのかを明らかにした。

同じく令和2年度報告に「持続化給付金」の検査がある。コロナ感染症によって大きな影響を受けている個人事業主や中小企業等に対して、事業を続けるための支援として給付金が配られた。令和3年3月末までに423万件、計5兆5147億円を給付している。

会計検査院が指摘したもので、特に話題になったのが、この事業を実施するための事務作業の委託契約のあり方だった。中小企業庁から給付事務事業として、約769億円が一般社団法人に委託されたが、そこから約98%が広告代理店に再委託されていた。さらに再委託は9層に及び、受託者は723者に及んだ。本件はメディア等で一斉に報道され、後に経産省は再委託のガイドラインをより厳しく改定している。

令和2年度と3年度には、政府がコロナ対策に投じた予算の全体像を可能な限り明らかにすべく、検査報告を出している。

令和2年度は、令和元年度および令和2年度に講じられたコロナ対策予算およびその執行状況を明らかにした。特に、注目したのは10兆円の予備費であった。なぜならば予備費は国会の審議を経ず、内閣の決定で措置できる財源であり、財政民主主義の例外と言われているからだ。また、予算が前年比で20倍になったことも注目の理由だ。

現に、当時、国会では巨額な予備費に対して、国会のチェックを経ずに内閣の裁量で決められたことに対して、「国会軽視ではないか」と批判の声が出ている。私も、巨額な予備費が短時間で決められている様子を見て、どこで規律を担保するのだろうかと案じていた。

令和3年度には、令和元年から3年度の3年間にコロナ対策に講じた予算と執行状況を明らかにした。3年間の予算総額は95兆円で、これは、当時の国家予算1年分(約100兆円)に匹敵する金額である。コロナ対策予算は多額の補正予算や予備費で構成されており、その執行状態を明らかにすることは困難を極めたが、そこで生み出された検査方法が、後の予備費の検査、補正予算の検査の基礎を築いた。

私たちの税金はどう使われているのか――ドラッカーの弟子、会計検査院長になる