【木村 隆志】話題にあがらない今年の『24時間テレビ』昨年は募金額20億円超で歴代最高なのに、日テレが番宣に力を入れないワケ
昨年は過去最高の募金額を記録
幼児のころから全放送回を見てきただけでなく、何度か取材もしたし、現場の運営を手伝った経験もあるからなのか。8月になると業界関係者や友人から「今年の『24時間テレビ』はどう?」と聞かれるのが恒例となっている。
同番組は例年いくつかの批判を受けながらも高視聴率を獲り続け、昨年は募金額20億1332万6946円の歴代最高を記録。今なお最も影響力のあるテレビコンテンツであり続けている。
今回よく聞かれたのは、主に「例年よりPRが少なく盛り上がっていないのでは?」「不祥事の影響はもう消えた? 局員のモチベーションは高いのか?」「メイン企画はやっぱりチャリティーマラソン?ランナーの人選と走る意義は?」「今もSTARTOの特別扱いはあるのか?」「裏番組は何を放送して対抗するの?ライバルになりそうなのは?」の5点。
ここでは29日・30日に放送される『24時間テレビ49』(日本テレビ系)の見どころに加えて、これら5つの素朴な疑問に答えていく。
各ジャンルから好感度抜群の出演者
まず番組概要にふれると、総合司会は内村光良、羽鳥慎一、水卜麻美アナ。チャリティーパートナーはSixTONES、山崎育三郎、芳根京子。チャリティーランナーは星野真里。スペシャルサポーターは北川景子、ちゃんみな(チャリTシャツ)が務める。芸人、キャスター、アイドル、俳優の好感度トップクラスをそろえた手堅いキャスティングと言っていいだろう。
今年のテーマは「わたしの家族の話〜あなたは誰を想う?〜」で、メイン会場は両国・国技館。その内容を放送順に見ていくと、メイン企画のチャリティーマラソンはランナーに星野真里を迎えて「できた!を増やす子ども募金」。
29日の夜は「イッテQ!女芸人が夏合宿!詳細は国技館で生発表」「スクール革命×小学生親子3000人で挑む24時間巨大ドミノチャレンジスタート」「総合司会内村光良が車いすの少女と挑む!仕掛け満載シンクロダンス」「青学原監督が大泉洋に語る…『私が初めて涙した日』」「石原4兄弟がゆかりの地で徹底討論」などが放送される。
日テレの人気番組が勢揃い
さらに今年のスペシャルドラマは主演・北川景子、高橋光臣の『幸せはある「声を失ったトップクリエイターつんくと全てを支えた家族の話」』。
深夜帯はSixTONESのメンバーとゲストの家族がチームを組んで対抗戦を行う「Golden SixTONES 家族対抗SP」と「オモウマい店特別編!能登の明るい寿司親子」。
30日の朝から午前は「シューイチ『わたしの家族ルール』全国の家族と生中継!」「岩田剛典&イモトアヤコが描く!能登の大地に希望の巨大地上絵」「桑田真澄と息子Matt…引きこもった息子守った家族愛」「テレビ初共演!鈴木敏夫親子『ジブリとわたしの家族の話』」「芳根京子が取材!難病ALSの母が我が子に残したい命のレシピ」「DASH巨大弓矢チャレンジ」などを放送。
昼から午後は「『ヒロミリホーム特別編』やす子の夢!子ども食堂をつくる!強力助っ人も続々手伝いに」「松村北斗がお手伝い『解決してほしい!わたしの家族の悩み』亡き母の思い出の味を復活させたい!」「家族に内緒!隣の昼ごはん特別な食卓にドキドキ生中継」「世界の果てで働くお父さんに宮川大輔&娘がいきなり訪問」「耳の不自由な生徒と京本大我…届け!49人のドラムライン」「水卜が鹿児島県・徳之島へ『なぜ日本一子宝の島なのか?』」「きょうだい児の想いを歌に!山崎育三郎が歌う家族の絆」「森保監督が参加!相葉雅紀保護犬トリミング」「がんと闘ったFANTASTICS9人目メンバー」。
夕方から夜のフィナーレは「中村玉緒&勝新太郎…ちょっと変わった夫婦のカタチ」「笑点も生放送!座布団運びはアノ人」「女芸人生パフォーマンス披露」「北川景子が取材!家族を繋ぐ愛の手紙」「芳根京子ががんと闘う少女と描く家族の物語」「総勢130名!SixTONESが世界のパフォーマーと魅せるボーダーレスLIVE」「マラソン完走なるか?国技館では総合司会&チャリパが全員で生合奏」などが放送される。
変化よりも5000人のスケールで勝負
今年は“家族”がテーマなだけに、原晋監督夫妻と青山学院の陸上部員、桑田真澄とMatt、ジブリの鈴木敏夫親子など、日テレにゆかりのある顔ぶれが勢ぞろい。
さらに「小学生親子3000人で挑む24時間巨大ドミノチャレンジ」はかつてないスケールの挑戦であり、成功したら盛り上がり、失敗したら落ち込む生放送の臨場感が味わえそうだ。
その“家族”は、配信再生の普及でますます視聴率獲得が難しくなり、家族視聴に希望を見出すテレビ業界の流れを反映させたコンセプト。ただ、男女ともに増える独身層を切り捨てるようなニュアンスもあるだけに、「今はこれしかない」という明日なき戦いをしているようにも見えてしまう。
各コーナーに目を向けると、『イッテQ!』『鉄腕DASH』『Golden SixTONES』『笑点』などの看板番組がベースであることは例年通り。目新しい企画はなく「これまで見てきたものとほぼ同様」という印象に落ち着くことが推察される。
「難病」「闘病」「車いすの少女が挑む」「被災地の復興」「亡き母の思い」「生き別れになった母」「ボーダーレス」「マラソン完走なるか」などのキーワードを見てもそれがわかるだろう。
これは裏を返せば「昨年まで結果を残してきたからこそ無理して新しい企画を投入する必要性がない」ということ。批判を気にしすぎずマーケティングベースで数字を確保していく日テレらしいシビアな構成と言っていいかもしれない。
ただ、「総勢5000人以上が出演する」という参加人数のスケールは圧巻であり、この点で今なおテレビの影響力が健在であることをアピールできるのではないか。
キャッシュレス募金が救世主に
続いて冒頭にあげた5つの素朴な疑問を掘り下げていこう。
1つ目の疑問は「例年よりPRが少なく盛り上がっていないのでは?」。確かに放送直前までネットニュースもSNSの動きも少なく、目を引くような番宣もなかった。
興味深かったのは18日から2週間にわたって放送された深夜帯のPR番組。最初の1週間で実際に募金を使った支援先を水卜アナや、やす子らが取材する映像が流された。着服という痛恨の不祥事があった『24時間テレビ』にとって「募金がどう使われているか」の説明は最も重要なポイントと言っていいだろう。
これまではそれが不足していて批判を受けやすかっただけに、今年の内容を宣伝するより先に伝えたのではないか。また、「各コーナーのコンセプトはほとんど変わらないため、募金の使い道を伝えるほうがPRにつながる」という見方も可能。
いずれにしても、例年通りの放送で一定の結果が出ているのだから、大々的なPRを行うより無用な批判を避けるほうがいいというニュアンスがうかがえる。
2つ目の疑問は「不祥事の影響はもう消えた? 局員のモチベーションは高いのか?」。
系列局を含めた局員らに話を聞くと、「年に一度の重要イベント」という感覚は今年も変わっていなかった。以前から『24時間テレビ』は準備の段階から局内が活性化し、部署間や系列局間での交流が増えるなど貴重なコミュニケーションの機会であり、若手の成長を促す場となっている。『24時間テレビ』が多少の批判でやめないのは収益面だけではなく、このような交流・成長などのメリットも大きい。
系列局である日本海テレビの社員による寄付金の着服は番組の意義を揺るがす不祥事だった。その発覚から3回目の放送となる今年は複数の再発防止策が奏功してか、ほぼ影響がなくなったように見える。
特にキャッシュレス募金が増えたことで安心感があるだけに、これをさらに推奨することで募金額を増やし、結果を出すことで不祥事をポジティブな印象に反転させていきたいのではないか。
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