【為替】3度目の為替介入シナリオを考える
163円接近なら日本は介入の可能性、ただし米国の介入については見方分かれる
当局はそもそも、160円を大きく超える円安は日本経済にとってもはや許容できないと判断していた。そうした考え方は基本的には変わるものではないだろう。財務官経験者の1人も、「円安が160円を超えてすぐかはともかく、163円に近づくようなら介入に動くだろう」との見方を示した。
ただ同筋は、「米国はもう介入に動かないかもしれない」との見方を示した。7月末に日米協調による円買い介入が行われたとみられているが、米国は自国通貨の米ドルではなく、ユーロを売ったとされている。円買い協調介入でも、米国があくまでユーロ売りになるなら、自国通貨とは異なり、保有額が限られるユーロ売りの介入は果たして続くだろうか。
以上のように見ると、円安が続いた場合、日本の当局が3度目の為替介入を行う可能性は高そうだが、それが2回連続の日米協調介入となるかについては見方が分かれるのかもしれない。
次の為替介入のタイミングは?=9月日銀利上げとの合わせ技か
次は為替介入のタイミングについて考えてみる。最も予想しやすいのは、9月18日の日銀の金融政策決定会合の公表後だろう。ベッセント米財務長官は、協調介入を確認した後から、次の対応として日銀利上げへの期待を強く示唆してきた。このため9月18日に日銀が利上げを決定した場合、その結果を受けて円高への反転を目指す3度目の介入に動く可能性は考えられる。
ただこのところの円相場は金利差の変化への反応が鈍い。7月末の日米協調介入などを受けて米ドル/円は一時155円台まで急落したが、その後すぐに米ドル高・円安に戻した。この動きは、日米金利差(米ドル優位・円劣位)縮小を尻目に起こったものだった(図表1参照)。それを考えると、日銀利上げに伴う日米金利差縮小と3度目の為替介入の合わせ技で、155円以下の米ドル安・円高への反転が実現するかは不透明だろう。
【図表1】米ドル/円と日米金利差(2026年4月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成 臨時国会での消費税減税議論が前提なら次の介入は10月以降か
協調介入後の円高が、日米金利差縮小を尻目に円安に戻った動きを説明したのは日本の長期金利上昇のようにみえる(図表2参照)。日本の長期金利、10年債利回りはこの間の高値を更新、一時2.9%を大きく上回った。これは、高市政権が財源の曖昧なまま消費税減税を進めることに対し、財政規律への懸念から債券売りや円売りにつながったとの見方が基本のようだ。そうであれば、円安阻止・是正を目指す前提には、財政規律への懸念を払しょくすることによる長期金利低下が不可欠という理屈になるだろう。
【図表2】米ドル/円と日本の長期金利(2026年7月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成 この消費税減税については、秋の臨時国会で議論される見通しである。財務省関係者は、そこで財源を明確にすることにより財政規律を維持し、さらなる長期金利の上昇を回避することは可能であるとの見方を示した。ただ臨時国会での議論を前提とするなら、円安阻止・是正を目指す3度目の介入は10月以降になる可能性があるだろう。
円安阻止で日米協調からG7協調への枠組み拡大?
これまでのところ円安阻止を目指す動きは日本単独から日米協調の枠組みに移ったが、さらにそれがG7(主要7ヶ国財務大臣及び中央銀行総裁会議)協調に拡大する可能性はあるだろうか。例年、秋にはIMF(国際通貨基金)・世界銀行の年次総会が開かれ、そのタイミングに合わせてG7会議が開かれることが多い。2026年の場合は10月中旬頃になりそうだ。
この秋のG7が協調介入の舞台になった一例として、2000年9月のユーロ安阻止があった。1999年に米ドルに次ぐ「第2の基軸通貨」として始まった欧州統一通貨のユーロは、その後は一本調子で下落し、ユーロ圏経済のスタグフレーションや、景気後退とインフレの同時進行への懸念も浮上し「止まらないユーロ安」になっていた。
この2000年は11月に米大統領選挙を控えていたことから、米国は政治的にユーロ安阻止への協調には動きにくいとの見方が広がり、それもユーロ安を加速させる要因となっていた。ところがそうした大方の見方を覆し、2000年9月のG7会合直前にユーロ買い協調介入が実現し、それをきっかけにユーロ安は終了したのだった。
トランプ政権の登場以降、国際協調機運は大きく後退し、G7協調円買い介入は全く非現実的になってしまったのか。ただ、上述のように選挙前で政治的に無理との見方を覆して実現した2000年のユーロ安阻止協調介入の例もあったことは念のため確認しておきたい。
吉田 恒 マネックス証券 チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティ FX学長

