〈J1町田・小川獲得〉「リアルガチ」「ロジカルなサッカー経営」とファン歓喜の声、一方で大型補強なのに“戦力ダウン”も懸念される切実な2つの事情
8月24日、FC町田ゼルビアが日本代表FW小川航基の完全移籍加入を発表した。開幕3連勝で首位を走りながら、欧州で戦ってきたストライカーを獲得する大型補強。その一方で藤尾翔太は離脱し、さらなる主力流出の可能性も。悲願のJ1初優勝へ、町田の本気と「死角」を探る。
「リアルガチででリーグ優勝目指してる」
J1初優勝を狙うFC町田ゼルビアが、また大きく動いた。
8月24日、オランダ1部NECナイメヘンから日本代表FW小川航基の完全移籍加入を発表した。小川は2026年北中米W杯にも出場した29歳。日本代表では18試合11得点を記録している。欧州で戦ってきた代表クラスのストライカーを、シーズン開幕後に引き抜いた。
これにはSNS上でもファンから歓喜の声が上がっている。
「町田凄いな。本気で優勝目指してる」
「本気で優勝狙う補強とはこうゆうこと」
「藤田晋オーナー、やっぱり普通の補強では終わらせないな。選手を獲るだけじゃなく、クラブそのものをどう進化させていくのか。本当に『おもしろいこと』を仕掛けている」
「優秀な藤田さんが本気でロジカルにサッカー経営したらこうなるんだな」
「今の町田に小川は反則 藤田さんリアルガチでリーグ優勝目指しにきてますな」
しかも町田は、戦力不足に苦しんでいたわけではない。
新シーズンはFC東京を5―1、ジェフ千葉を4―0、浦和を3―1で破って開幕3連勝。12得点2失点、得失点差「+10」で首位に立っている。それでも補強の手を止めなかったところに、クラブの「今年こそリーグを獲る」という意思が透けて見える。
今夏の町田は、小川だけを獲得したわけではない。
浦和から松尾佑介、ベルギーのOHルーヴェンから明本考浩、オーストラリアからミッチェル・デュークを獲得。百年構想リーグで加入していた197センチのテテ・イェンギも完全移籍に切り替えた。そこへ小川まで加わった。
注目したいのは、単純な“金満補強”ではなく、必要な選手にかなり早い段階から動いていることだ。
小川については、原靖フットボールダイレクターが渡欧し、本人と4度ほど面談したと報じられている。韓国代表FW者圭成も候補に挙がるなか、移籍金や戦術への適性などを考慮して小川に一本化したという。
2023年のJ2優勝から、24年はJ1初挑戦で3位。25年はリーグ6位に終わったものの天皇杯を制し、クラブ初のメジャータイトルを獲得。さらにACLEでも25-26シーズン準優勝まで進んだ。数年前までJ2にいたクラブが、いまや日本代表クラスを欧州から呼び戻せるクラブになった。補強費だけではなく、クラブとして提示できる「次の景色」が変わったことの証明でもある。
ただし、小川加入だけを見て「町田の独走」と考えるのはまだ早い。
小川加入の裏で抜けていく戦力
その最大の理由が、主力の流出である。
FW藤尾翔太は8月23日、移籍を前提とした手続きのためチームを離脱。柏への移籍が確実とも報じられている。さらにエリキには、昨季期限付き移籍していた神戸へ再び移る可能性が浮上している。
藤尾は今季リーグ戦では途中出場2試合にとどまっており、小川やテテ・イェンギ、デューク、西村拓真らがいる現在のFW陣を考えれば、前線については十分に穴を埋められるだろう。
むしろ大きいのは、中山雄太の去就だ。
セルビア王者レッドスター・ベオグラードへの移籍が現地メディアをもとに報じられている。まだ町田から正式発表はないものの、仮に移籍すれば影響は小さくない。中山は開幕3試合すべてにフル出場し、DFながら1得点2アシスト。左利きの最終ラインとして守備だけでなく、攻撃の起点にもなっている。
そして、もう一つ忘れてはいけない。
現在1位とはいえ、まだ38試合中の3試合を終えただけだ。柏と鹿島も3戦全勝で勝ち点9。町田が首位なのは得失点差によるものにすぎない。
9月からはACL Twoも始まり、9月17日に初戦を戦ったわずか3日後には、現在2位の柏とのリーグ戦が待つ。天皇杯も並行して進む。
小川航基を獲ったことは、町田の「本気度」を示す大型補強で間違いない。
だが、優勝を決めるのはスタメン11人の豪華さではなく、長いシーズンで誰が抜けても勝ち点を積み上げられる選手層だ。入ってくる小川以上に、これから「誰を残せるか」「抜けた穴をどう埋めるか」。
町田フロントの本当の手腕が問われるのは、むしろここからかもしれない。
取材・文/集英社オンライン編集部
