ヤマダ・エディオン統合劇、取締役も「全く聞いていなかった」…火花散らすライバルの背中押した「ショールーム」化
[フカヨミ]家電販売サバイバル<上>
急転直下
6月5日。
群馬県高崎市の家電量販最大手ヤマダホールディングス(HD)、大阪市の同5位エディオンの両社で経営統合の基本合意を決議する取締役会が開かれた。出席した取締役の一人が「全く聞いていない話だった。サプライズだ」と語るほど、急転直下の統合劇だった。
トップ同士で進められた協議は紆余(うよ)曲折を経た。
「ニトリさんとの関係もありますし、今は考えられません」
エディオン会長CEO(最高経営責任者)の久保允誉(まさたか)(76)は昨年、ヤマダ側の打診で始まった統合協議を一度は断っていた。資本提携を結ぶニトリHDとの協業を優先すべきだとの判断からだ。それでもヤマダは諦めず、今年に入り再び秋波を送る。会長兼CEOの山田昇(83)と久保は水面下で会談を重ね、5月の大型連休を挟んだ本格協議から約1か月で決定に至った。
ヤマダは売上高こそ業界トップだが、利益率は最低水準にあえいでいた。株価純資産倍率(PBR)は1倍を割り込み、事業を継続するより会社を解散した方が価値が高いとされる水準に。「市場の低評価を解消するのが喫緊の課題で、エディオンとの統合は80歳を超えた山田にとって最後の大仕事」(アナリスト)だった。
決め手になったのは「対等の精神」だ。売上高は1兆6900億円のヤマダが7900億円のエディオンよりはるかに上だが、久保には譲れない一線だった。「傘下に入る考えはない。対等の精神で考えない限り、やるつもりはない」。山田と久保は共同CEOを務める形で折り合った。
山田は6月5日の記者会見で「私が創業者で、久保さんも実質的な創業者。サラリーマン社長とは違う」とし、「判断する中で迷いはなかった」と語った。
因縁を越えて
両社には浅からぬ因縁がある。
1990年代、北関東のヤマダ、コジマ、ケーズデンキは「YKK」と呼ばれ台頭した。西日本が地盤のデオデオ(現エディオン)とヤマダは互いの本拠地に進出して殴り込みをかけ、安売り競争が激化。「やられたらやり返す、という感じで火花を散らしていた」(業界関係者)
そんなライバル同士の背中を押したのは、厳しい経営環境だ。人口減による市場縮小に加え、家電の買い替えサイクルが長期化。かつて成長を支えた「薄利多売」のビジネスモデルは崩れ、ネット通販の拡大が追い打ちをかける。
7月、東京・秋葉原の家電量販店。掃除機売り場を訪れた会社員男性(41)は「安くない買い物なので、実物を確かめたい。後で最安値の通販サイトで購入する」と話した。
量販店で品定めをし、ネットで買う「ショールーミング」が消費者に広がる。経済産業省によると、ネット通販での家電の購入比率は2024年度に43・03%と10年前から約20ポイント上昇した。店舗を構えて商品を並べ、店員が商品説明をする量販店は苦境だ。
メーカー側が家電の販売価格を指定する「指定価格制度」の導入も逆風となっている。メーカーが返品に応じることで在庫リスクを負う代わりに、販売価格を指定する仕組みで、20年にパナソニックHDが導入すると日立製作所や三菱電機も続いた。
メーカー関係者は「価格をコントロールできるようになれば、値下げしなくても買ってもらえる」と主導権を握りたい考え。在庫処分で値下げを行い、集客につなげてきた量販店はビジネスモデルの転換を迫られている。
「何もしなければ先細りが避けられない業界だった。ヤマダ・エディオンはインパクトの大きい再編。体力と資本力の強化が決め手になったのだろう」。SMBC日興証券シニアアナリストの松尾賢弥は指摘する。売上高2・5兆円の「メガ家電量販」の誕生が、業界再編最終章の号砲を鳴らした。(敬称略)
