書類送検された四千頭身「都築メンバー」という呼び名がモヤっとする理由…“容疑者”と呼びたくないのは分かるが、はたして誰に対する“配慮”なのか
お笑いトリオ「四千頭身」の都築拓紀容疑者(29)が、今年6月下旬の深夜に東京都内で行われたイベントで、会場にいた20代女性の下半身をスカートの上から触ったとして、東京都迷惑防止条例違反の疑いで書類送検された。
当件に関連した記事の中に登場した都築容疑者の呼称が「都築拓紀メンバー」「都築メンバー」だった。例えば産経新聞電子版は「書類送検の四千頭身・都築メンバー『月半分は』ファッション 衣料品ブランド、古着店運営」の見出しで報じた。TBS NEWS DIGは「【独自】お笑いトリオ「四千頭身」の都築拓紀メンバーが東京都迷惑防止条例違反の疑いで書類送検 女性のスカートの上から下半身を触ったか 警視庁」である。【中川淳一郎・ネットニュース編集者】
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珍妙な呼称
さて、この「メンバー」という呼称で「またか」と苦笑した人もいたのではなかろうか。本来は「容疑者」でいいはずなのに、何に忖度しているのか分からないのだが、「メンバー」という珍妙な呼称をメディアが使うのである。書類送検はされたがまだ犯罪者ではないこと、相手との示談が成立していること、さらに逮捕ではなく書類送検だったことなどを、メディア側はその呼称の理由としがちだが、容疑者は容疑者では? といった感想を持つ人は少なくないのではないだろうか。

こうした呼称が使われるようになった第一号は、2001年に発生した、稲垣吾郎が道交法違反等で現行犯逮捕されるという件ではないかと私は記憶している。東京都渋谷区にて、駐車禁止の路上に車を止めていたことと、免許証提示を求められたのに車を急発進させ、女性警察官にケガを負わせた道路交通法違反(駐車禁止)と公務執行妨害の疑いである。
この時、テレビの報道でいきなり「稲垣吾郎メンバー」や「稲垣メンバー」という呼称が登場。いや、普通に「稲垣吾郎容疑者」でしょ? という視聴者の疑問を置き去りにして当たり前のように「メンバー」が使われたのだ。さすがに「稲垣吾郎さん」とは報じられなかったのだろう。普段から付き合いのあるいわば“身内”の逮捕をいかにして報じるかに苦心した跡がこの時は見えた。
以来、著名人の不祥事の際の珍妙な呼称が使われていくことになるのだが、今回の「都築メンバー」がその最新版ということになる。メディアとしては、その先にいるスポンサー、そして芸能事務所への配慮もあるのだろうか。苦心が透けて見えるこの手の珍妙な呼称が使われてきた事例を、改めて振り返ってみよう。
メディアは実態を伝えるべき
・「布袋ギタリスト(布袋寅泰)」
・「島田司会者(島田紳助)」
・「押尾俳優(押尾学)」
・「山口メンバー(元TOKIO・山口達也)
・「草磲メンバー(元SMAP・草磲剛)」
・「斉藤メンバー(元ジャングルポケット・斉藤慎二)」
どれも、おかしさが際立つことがお分かりいただけたのではなかろうか。もはや一体何の配慮なのかわからなくなるのである。
世の中には様々な肩書きがあるが、そんな肩書きを持つ人がやらかして、報道される場合、以下のような表現になってしまうのである。もちろん架空の人物である。
・山田店員
・田中ドラマー
・二宮バーテンダー
・吉村ドライバー
・坂本整備士
・石田声優
・近藤セクシー女優
・山内居酒屋店員
私が何かやらかした場合は、こんな感じだろうか。
・中川元広告マン
・中川ライター
・中川編集者
・中川PRプランナー
・中川隠居男
いや、私が仮に容疑者になったら普通に「中川容疑者」と報じてくれよ! と思うのだが、私は別に忖度される対象ではないため、普通に「中川容疑者」になることだろう。
そう考えると、著名人が妙な忖度をされるこの風潮、完全に「階層」の存在を示すことにならないだろうか?
普通に「容疑者」や「被告」でいいのではないか。呼称というものは日本社会では非常に重要なのは分かるが、メディアはまず、相手にわかりやすく事実を伝えることを第一に考えるべきではなかろうか。
ネットニュース編集者・中川淳一郎
デイリー新潮編集部
