(SUUMO 住まいの買う売るちゃんねる)

写真拡大 (全34枚)

『海外みたいにセンスのある部屋のつくり方』(大和出版)の著者であり、住宅リノベーション設計士・インテリアデザイナーの岑 早(みね さき)さん。IT会社に勤務する夫の岑 康貴(みね こうき)さんと、2022年に生まれたお子さんとともに、フルリノベーションした中古マンションで暮らしています。ゆるやかな曲線とカラフルな彩りをちりばめた、「家族の今」に寄り添う空間。年月とともに育っていく楽しみも宿した、工夫満載の住まいを拝見しました。

ライフスタイルの変化に伴い、住み替えと2度目のマンションリノベを実現

早さん夫婦が自宅マンションをリノベーションするのはこれが2回目。前回はリノベーション会社に依頼しましたが、今回は住宅リノベーション設計士として転職した早さん自身が手がけています。

■関連記事(以前の家):
『海外みたいにセンスのある部屋のつくり方』著者・早さんに初心者もできるおしゃれインテリアのコツを聞いてみた! マンションリノベのエピソードも

住み替えのきっかけは、ライフスタイルが変化したこと。「以前は夫婦二人暮らしだったのが、子どもが生まれ、収納が足りなくなってきてしまって。その後私がリノベーション設計士になったことで、自分の家を自分で設計してみたいという思いもあり、さらに会社の近くに住んだ方が便利だということで、決めました」と早さんは話します。

住まい中古マンション(持ち家)エリア東京都目黒区間取り2LDK+DEN+WIC面積76平米世帯構成夫、妻、子ども1人入居年2025年12月

可変性を大切にしたいから、できるところは自分たちで

まず玄関を入ると、曲線状になった廊下が目に入ります。
「角を丸く仕上げたR壁にしているのは、もともとあったトイレの配管が曲がって出っ張っていたので、それを丸い壁で隠してしまおうと。反対側のL字型の造作収納も、曲がり角に沿って、Rの形状につくってもらいました」と早さん。
限られたスペースながらスムーズな動線が確保でき、オープンな棚のおかげで視線が抜けて広さも感じられます。

近年人気のR壁は、空間にやわらかな印象を与えます。曲線を描く壁は施工の難易度が高く、プロの技術が求められる部分。一方、壁の塗装は将来を見据えて早さん自身が手がけたのだとか。
「楽しみながら、苦しみながら(笑)やりました。塗装も本来はプロにお願いした方がきれいだし長持ちします。ただ、私の場合は今後気分が変わったら塗り替えていきたいので。この家ではそういう『可変性がある』ということを大切にしています」

コンパクトながら工夫満載のダイニングキッチン

廊下を進んだ先にあるのは、ダイニングキッチン。中央に配置した大きなテーブルは、キッチンカウンターとダイニングテーブルを兼ねています。
「キッチン側の床が少し下がっているので、テーブルで作業しやすいんです。テーブルは幅180cm×奥行き140cmほどあり、大人数で食事するときも、たくさんものが置けて便利です」

ダイニングキッチンのポイントは、床と天井に高低差をつけていること。真ん中に梁が通っている構造のため、その梁を隠すために天井を一部下げているのです。換気扇も天井に埋め込むことができ、凹凸がなくすっきり。

「立って作業するキッチン側は床を10cm下げたため、天井高は1900mmくらいあります。ダイニングの方は床が高い分、天井高1800mmくらいですが、こちらは基本的に座って過ごす場所なので気になりません」。逆に落ち着けるおこもり感があり、天井が高い部分とのメリハリを感じさせる空間になりました。

キッチンは、以前の家ではコスパのいいIKEAのものを使っていたそうですが、今回はテーマカラーを決めて、キッチンメーカーにフルオーダー。「赤っぽいカラーにしたくて、面材はチェリー材を選びました」

ダイニングテーブルの下は、リブの面材を使用。中は収納になっていて、モノがたくさんしまえるつくりになっています。

造作テーブルを含め、オーダーキッチンの価格は200万〜300万円程度だったそう。「IKEAのキッチンなら100万円くらいなので以前と比べて高額にはなりましたが、好みのチェリー材の面材や収納たっぷりのダイニングテーブルなど、既製品ではできないことが叶いました。お金をかけた価値はあったと思っています」

窓際には壁をつくってパントリーとワークスペースを

ダイニングキッチンの窓側には壁を建て、二つの空間を新たにつくりました。どちらもRの枠が、どこかレトロな雰囲気です。
「右のキッチン側はパントリー、左のダイニング側は私のワークスペースになっています」と早さん。パントリーの棚はダイニング側から見えないため、家電をたくさん置いてもすっきり見えます。

棚は早さんが自分で付けたもので、下の段は引き出して使えるようになっています。反対側の冷蔵庫が置いてある面には、どうしても動かせなかった室内置きの給湯器があるそうですが、ここにも壁を建てて目隠ししています。

ダイニング側のRの枠をくぐった先は、早さんが仕事で使うワークスペース。まるで秘密基地のような、こもれる空間になりました。

「柱と梁で凹凸のあるゾーンは収納にしがちだけど、ウォークインクロゼットは別にしっかり確保してあるので、なにか活用できないかなと考えて。凹凸に合わせて壁を建てたらいい感じの凹みが二つできたので、そこをデスクスペースにしようと考えました。片方にはPCを、片方にはミシンなどを置いて裁縫スペースにしています」
自分たちでペンキを塗ったという赤い壁も素敵なアクセント。棚の壁には、今後コルクシートを貼る予定だそう。「Pinterestを見ていて、木のテーブルとコルクシート、赤っぽいカラーリングの部屋がとてもかわいかったので、真似したくて」。未完成ゆえの楽しみも残しています。

おしゃれな洗面空間は生活動線の中心にレイアウト

ワークスペースの裏側にあたる廊下には、洗面スペースがあります。
「コロナ禍以降、廊下に洗面空間を置くというのは定番になってきましたよね。うちの場合、ダイニングとリビングが分かれているので、その中間に洗面があるのはとても使いやすかったです」

シンク下の引き出しは、キッチンと同じチェリー材の面材で造作してもらったもの。丸い取っ手も愛らしく、家中に点在する曲線のデザインにもリンクしています。

壁には角がとれた四角のタイルを貼り、赤い目地を入れて色を合わせています。その上部は海外製の壁紙で、こちらも赤っぽい色味とアーチの雰囲気が個性的。
「この壁紙は自分たちで貼ったのですが、やはり難しかったですね。空気を抜くブラシなど、専用道具を使って丁寧に貼れば、DIYでもできると思いますよ」

ブラケットライトや楕円の鏡、水栓は黒で統一して、空間を引き締めるアクセントに。また、すぐ隣にある低い梁を隠すために奥行きのある壁を建て、そこにニッチ(※)をつくったのもポイント。歯ブラシなどが置ける、ちょうどいいスペースになりました。
※壁の一部をくぼませて作った飾り棚や収納スペース

2面の窓から明るい光が入る、気持ちのいいリビング

リビングに入ると、2面に窓のある10畳ほどのスペースが広がっています。物件を決めたときから、ここをリビングにしようと考えていたという早さん。「ダイニングキッチンとはゾーンを分ける間取りになったのですが、結果的にとても落ち着く空間になりました」と話します。

心地よさの理由のひとつは、空間の高さにあります。ほかのスペースは配管の勾配の関係で床が上がっていますが、この部屋はその制約がないため床を少し下げているのだそう。その分、天井が高く感じられ、ゆったりとした開放感が生まれました。

大きな窓にはアルミサッシを目隠しするウッドシャッターを設置。白いルーバー越しにやわらかな光が差し込む、明るくて気持ちのいい空間です。

リビングの一角にはレコードのスペースを設け、レコードプレイヤーを置いたり、壁にアートワークを飾ったり。テレビは絵画のように壁掛けできるアートテレビを採用。空間に自然となじんでいます。

ソファは新たに購入したもの。ふんわりとしたブークレ生地がかわいらしく、ソファベッドとしても使えるため、お子さんがなかなか寝ないときは、ここで本を読んだりしてゆっくり過ごしているそうです。

以前の住まいで使っていた椅子と照明を置いたコーナーは、独立したカフェスペースのよう。家族みんなが思い思いにくつろげる、居心地のいいリビングです。

本棚の間から、小上がりのカラフルなベッドルームへ

リビングの本棚の奥に小上がりのベッドルームがあるという、斬新な空間構成も早さんのアイデアです。
「大きな本棚をリビングにつくりたい。でも本棚ってまとまった壁がないと置きにくいんですよね。あと、小上がりスペースもほしいなと思っていて。そこで、造作の本棚の間を通って小上がりのベッドルームに入るというデザインを考えました」

ベッドルームは、マットレスが置けるくらいの広さ。壁は淡い黄色で塗っていて、ほかの部屋よりもワントーン暗め。それがまた隠れ家のような落ち着く雰囲気で、お気に入りの場所だといいます。
天井には2つソケットをつけてもらっていて、片方にはFlowerpotというペンダントライトを設置。赤いライトと黄色い壁のコントラストも素敵です。

ガラス越しに光が入る、シックなワークスペース

リビングの奥、本棚の隣にあるのは、4畳ほどのワークスペース。主に夫の康貴さんが自宅で仕事をする際に使っています。

こちらは少し飛び出ている部分に付けた、木がアーチ形になったガラスのドアが印象的。窓のない部屋にも、ガラス越しに外の光が入るようにデザインされています。

右側の壁は、輸入の壁紙を自分たちで貼って仕上げました。奥の壁は、その壁紙に使われている深い緑色で塗り、統一感をもたせています。奥にはピアノも。「ピアノって大きくて黒くて存在感があるんですけど、壁色のおかげでしっくりなじんでいると思います」

ピアノ横の壁が凹んだ部分には、引越したあとに棚板を渡して本棚として活用。
「ここには漫画本やCDなどを置いています。全体的にシックなのですが、ものを置いたらカラフルになりましたね。仕事部屋ですが、遊び要素も詰め込んだような空間になっています」と夫の康貴さんは話します。

ウォークインクロゼットは選びやすさと収納力を両立

先ほどの洗面スペースの向かいには、ウォークインクロゼットがあります。収納の量が課題だったので、とにかくものがたくさん入るよう、チェストと棚、ハンガーパイプでコの字型に設計しています。

なるべく上まで使えるようにと、壁紙や天井材で隠さずあえて天井を見せる「現し(あらわし)」にしているのもポイント。夫の康貴さんも、「シャツが多いので、畳んでしまっておくと下の方は忘れて着なくなるんですよね。ここではたくさんハンガーにかけられるので、お店みたいで見ていて楽しいし、選ぶ頻度も増えました」と言います。

クロゼットの隣には、ランドリールームと浴室を配置。ランドリールームには、お子さんの靴やDIYで使った刷毛などがガシガシ洗えるスロップシンクが。上には室内干しできるバーも備え、コンパクトながら機能的な空間になっています。

住み替えて実感した、家族の今に合った暮らしやすさ

実際に住み替えてから、家族の暮らしやすさはどう変化したのでしょうか。
「物件自体の広さは以前の家とほとんど変わらないのですが、廊下を減らしたり、二人のワークスペースを少しコンパクトにしたりすることで、生活空間にゆとりが生まれました。特にリビングが広くなったことで、自分たちも快適に過ごせますし、子どもが楽しそうに遊んでいるのを見るとうれしいですね」と康貴さん。

自ら設計を手がけた早さんにとっては、理想の空間が形になった喜びも大きかったそう。「自分で考えていたものが実際に形になるのは本当におもしろかったです。でも、この家は完成して終わりではありません。デスクスペースもまだ発展途中ですし、エアコンを隠すルーバーもつくりたいし、やりたいことはまだたくさんあります。少しずつ手を加えながら、楽しく暮らしていきたいですね」

「好き」を集めて、住まいを育てていく

2度のマンションリノベーションを経験し、理想の住まいをつくり上げた早さんは、「自分たちがどう暮らしたいか」を軸にすることが大切だと話します。

「資産価値はもちろん大切ですが、そればかりを気にすると、自分がやりたいことが後回しになってしまう。家は人生の中でいちばん長い時間を過ごす場所です。周りからどう見られるかや、将来売るときのことを最重視するのではなく、『自分たちがどう暮らしたいか』を軸に考えることが、満足できる家づくりにつながると思います」

最後に、リノベーションやDIYを進めるうえで大切にしたことについてうかがうと、「まずは自分の好きなものを知ること」と話します。

「PinterestやInstagram、雑誌などを見て、自分がどんな部屋やデザインが好きなのかを知ることが大事です。『これ素敵だな』と思ったものを集めておくと、物件を見たときに、『この部屋ならあれが実現できそう』と結びつけられるんです。パズルをはめるように、ぴったりくるものを探していく感覚ですね」

また、住まいづくりでは余白を残すことも意識したそう。木の色を統一するなど、事前に決めてつくる方法もありますが、あとから好きな家具や雑貨を迎えたり、少しずつ手を加えたりできる可変性も大切だといいます。

完成した瞬間がゴールではなく、自分たちの「好き」を重ねながら、暮らしに合わせてアップデートしていく。そんな柔軟な住まいづくりの姿勢が、心地よい暮らしにつながっているのでしょう。

今回ご紹介した住まいの魅力は、ルームツアー動画でも詳しくお伝えしています。

●取材協力
岑 早さん、康貴さん
Instagram @sakihaya515


(塚田真理子)