タイヤ作りを根本から変革する新技術『エンライトン』とは ブリヂストンのパブリックイメージ(後編)【サイトウサトシのタイヤノハナシ 第23回】
「ブリヂストンだから大丈夫ですよ!」
ここ数年、冬になると北海道に長期滞在しているのは、どこかで書いたかもしれません。
【画像】タイヤの達人が撮影したブリヂストンのアレやコレ 全11枚
先シーズンも、例によって北海道の留寿都という村に滞在していました。旭川で試乗会があって、移動することになったのですが、札幌界隈は豪雪で大混乱中。札幌→旭川間の電車もバスも止まり、高速道路も札幌周辺が閉鎖という状況でした。

BSタイヤカフェにて、リトレッドされるケーキ。 斎藤聡
しかも、間が悪いことに旭川→羽田の航空券を取っていたので、基本、電車・バス・レンタカーの移動になってしまったのです。
なんとか留寿都村から札幌までバスで行くことはできたのですが、その先の公共交通機関がNG。ようやく探したレンタカーで旭川までの移動となったのでした。
で、手続きを終えクルマに乗り込む時に、いつもの習慣で、タイヤの銘柄と磨耗具合を確認しようと下をのぞき込んでいたら、
「ブリヂストンだから大丈夫ですよ!」
と女性の店員さんが明るい笑顔で声をかけてくれたのでした。
まあ、そのくらい雪道でのブリヂストンは信頼されているということです。
『氷に強い発泡ゴム』技術をキャッチフレーズにし、一貫してスタッドレスタイヤを開発してきたことが、大きな信頼を得るひとつの要因になっているのだろうと思います。
看板商品のひとつ『ブリザック』
スタッドレスタイヤ『ブリザック』シリーズは、押しも押されもせぬブリヂストンの看板商品のひとつです。
ブリザックで印象深いタイヤは、VRX3と、最新型WZ-1です。VRX2の試乗会の頃だったと思いますが、ブリヂストンの『スタッドレスの父』Y氏が、氷上グリップが上がってきて、ブロック剛性を上げたほうが氷上でもグリップがよくなる、といった趣旨の話をしてくださいました。

北海道限定ブリザックSI-12。 ブリヂストン
実際VRX→VRX2では、トレッド面全体で接地面剛性を出すトレッドデザインへと進化して行きます。じつはVRXが登場した2013年の前年、2012年に北海道限定の氷上特化型スタッドレスタイヤ『ブリザックSI-12』が発表・発売されています。トレッドの接地面剛性を高めた、ある意味特殊なトレッドデザインが採用されています。
で、VRX3になって、よりその傾向が強くなったわけです。特にトレッドデザインにおいて、VRX3の進化型ともいえるWZ-1の高性能ぶりは、「ここまで熟成したスタッドレスにまだ伸び代があるの?」と思えるほどです。
ユニークなサマータイヤ『オロジック』
いきなりスタッドレスの話から入ってしまいましたが、ブリヂストンはむしろサマータイヤに、印象的でユニークなタイヤが多くあります。
その代表ともいえるのは『オロジック』ではないでしょうか。

『ラージ&ナローコンセプトタイヤ』のオロジック。 斎藤聡
現行プリウスでナロー&ラージタイヤコンセプトのタイヤとして採用されていますが、2013年3月5日にブリヂストンから『ラージ&ナローコンセプトタイヤ』として発表されるや、ほぼ一週間以内に世界の主要タイヤメーカーから、同様のコンセプトのタイヤが発表されたのでした。これはちょっとした見ものでした。
内容は、タイヤ幅を細くしても、大径にして接地長を稼ぐと接地面積比以上に操安効果が得られるうえ、空気抵抗、転がり抵抗に有利で、車両の燃費改善やCO2排出ガス削減に貢献できるといった内容でした。
オロジックは2013年7月に発表されたBMW i3に、唯一の純正装着タイヤとして採用されました。
また、静粛・快適性、スポーツ性能に続く第3の指標『楽』を謳い、疲れにくいタイヤとして登場したのが『プレイズ』でした。
実際に走らせてステアリングの修正回数を数えると、明らかに少なくなったのですが、定着しませんでした。
社会実装が実現した『エアフリー』
それから、新世代のタイヤとして現在も実証試験が行われているエアレスタイヤ『エアフリー』も興味深いタイヤです。
少し前に社会実装(≒実用化)の記事をAUTOCAR JAPANでレポートしていますが、現在ブリヂストンのお膝元である小平市では、軽自動車による実証試験が行われています。軽自動車用エアフリーが実用化、なんて話になると(しばらくならないと思いますが)、今や国内販売の約半数を占める軽自動車だけに、大きなインパクトとなりそうです。

軽自動車での実用化ももうすぐ? のエアフリー。 斎藤聡
代表的タイヤ『ポテンザ』
ブリヂストンを代表するタイヤといえば、やはり『ポテンザ』と『レグノ』でしょう。
ポテンザ・シリーズは、1979年春に発売となったポテンザRE47から始まります。

ストリートラジアル史上最速を追求して作られた、ポテンザRE-71R。 斎藤聡
当時、ちょうど足並みを合わせるように、ダンロップからフォーミュラ、横浜ゴムからアドバンが発表され、三つ巴のハイグリップタイヤ競争が勃発します。
サーキット用でもポテンザRE47Sが登場します。ダンロップからは、ダンロップ・フォーミュラR、横浜ゴムのアドバンHF-Rがライバルとして登場ししのぎを削っていました。
当時(1980年代)、セミレーシングタイヤを『Rタイヤ』あるいは『Sタイヤ』と呼んでおり、それがいつの間にかSタイヤと呼ばれるようになっていきました。何となく多数派のRではなくSなんだなあという感想を抱いたのを記憶しています。
ハイグリップストリートラジアルのポテンザシリーズで印象的なのは、初代となるRE47、そして広くその性能の高さが認識されるようになったRE71です。特にRE71はドライグリップ、コントロール性、排水性がよく、とてもバランスのいいタイヤでした。
2015年に発売となったポテンザRE71Rは、ストリートラジアル史上最速を追求して作られ、RE71の名を復活させたのでした。
ラグジュアリータイヤ『レグノ』
ブリヂストンのもう一枚の看板であるレグノ・シリーズは、1981年にレグノGR-01で初登場します。1980〜90年代のハイソカー (≒高級セダン)ブ−ムに登場し、静粛性の高さと乗り心地の良さで人気を博して、ラグジュアリータイヤ市場を開拓しました。
そしてここから、ガラパゴス化ともいえる日本のコンフォートタイヤの進化が始まります。

レグノGR-X IIIのトレッドパターン。 斎藤聡
CMキャラクターは、ショーン・コネリーです。カッコよかった〜! GR-03の「ディ−プだ」という、ショーン・コネリーの吹き替えを務めていた声優の若山弦蔵さんの渋い声は、特に印象的でした。
レグノは静粛性と乗り心地にこだわることで進化を続け、2000年登場のGR7000で、トレッドデザインでできる静粛性はほぼ完成していたように思います。
そして2007年に初めてトレッドデザインに音響工学を取り入れたGR9000が登場します。その次期モデルとなるGR-XT(2011年)で本格的に消音器機能(ヘルムホルツ型と呼ばれる細い入り口と広い空洞を組み合わせ、空気の振動を減衰する消音器)が採用されます。
ちなみに、ヘルムホルツ型消音器はSUV用プレミアムタイヤ=アレンザLX200にも採用されています。
商品設計基盤技術『エンライトン』
さて、そんなブリヂストンがいま、タイヤ作りに大きな改革を推し進めています。
『エンライトン』という商品設計基盤技術を取り入れ、タイヤ作りの根本から変革が始まったのです。
薄く・軽く・円く、をタイヤ作りの基本に据え、その上でキャラクターとなるような性能を伸ばすタイヤ作りが特徴です。
すでにブリザックWZ-1、ポテンザRE71RS、レグノGR-X III、アレンザLX200、次期エコタイヤブランドとなるフィネッサHB-01(発売順不同)など、次々にエンライトンによって開発されたタイヤに置き換わっています。
この変更は、単なる掛け声ではなく、例えば、以前のものよりビードフィラーを低くしてタイヤのサイドウォール(側面部分)全体をしなやかに使う設計になったり、補強で剛性をバランスさせていた設計を最小限にして、タイヤの内圧で剛性を作り出し軽量化を図るなど、タイヤ作りの本質的な部分に関わる内容なのです。
エンライトンになって終わりではなく、ここからさらに深いチューニングや熟成が始まる、そういうタイプの内容です。
その意味で変更ではなく、ブリヂストンにおけるタイヤ作りの変革といっても過言ではないものだと考えています。

