1日4.4億円の被害! 「自分は騙されない」30〜40代が陥るSNS投資詐欺…送金先が個人名なら

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SNSを使った投資詐欺が急増している。警察庁の資料によると、’25年の被害額は1288億円。

’26年に入ってさらに拡大し、1〜6月の上半期だけで798億円、1日当たりの被害額は4.4億円に上っているという。被害額は60代以降のシニアが多いが、詐欺の件数は全世代で増加しており、20〜50代の現役世代が約6割を占めている。

高齢世代よりも、金融および情報リテラシーは高いはずの現役世代の被害も増えているのはなぜか? SNS型投資詐欺の実態の解明とともに、どうすれば防ぐことができるのか、その対策について専門家に聞く。

30〜40代で急増! SNS投資詐欺

’23年、クレジットカードの年間不正利用被害が500億円を突破したとき、その金額に驚いた人は少なくなかった。しかし、ちょうどその頃から目立ち始めたSNS型投資詐欺は、’25年に被害額が1288億円まで急増する。’24年との比較では+48%、金額にして417億円がわずか1年で増えたことになる。クレカの不正利用が’24年に約1割減少したのとは対照的だ。

そして、’26年もSNS型投資詐欺は深刻な状況になっている。7月末に発表された資料によると、’26年1〜6月の上半期、すでに被害額は798億円と前年同期比で445億円増加した。件数ベースでも、上半期は5893件で同じく3020件の増加。被害額、件数ともに、前年同期比では2倍以上増えている。毎日約33件の詐欺が発生し、4億4000万円の被害が出た計算だ(データは警察庁『令和8年上半期における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)』より/以下同)。

さらに、年代別の被害をみると、被害額、件数ともに50代が最も多く、次いで60代となっているものの、30代、40代でもほぼ倍増しており、増加ペースでは肩を並べる。金融リテラシー、およびネットリテラシーが比較的高いと思しき、デジタルネイティブあるいはそれに準ずる現役世代でも騙されるケースが急増しているのだ。

LINEに潜む「共犯者」の罠

そもそもSNS型投資詐欺とは何か。さまざまな手口があるが、現在主流となっているのは、SNS上の広告やダイレクトメッセージ(DM)が入口となり、儲け話を持ち掛けられ、口座にお金を振り込ませる、というものだ。

警察庁の資料によると、’25年で最もよく使われたSNSはインスタグラムで、その次がYouTubeだった。そこで流れてくる著名人の名を騙ったバナー広告や、投資を勧誘するDMをクリックしてしまうと、LINE投資グループに誘導される。

LINE投資グループでは、投資指南役の“主犯”だけでなく、“共犯者”も登場して、あたかも利益が出ているかのようなニセのアプリ画面と、「こんなに利益が出ました!」といったコメントを次々と流し、被害者に口座へ資金を振り込ませるように仕向けていく。

「億り人」の罠…巧妙化する手口

私の知る限り、YouTubeやフェイスブックで流れる、著名人の画像を使った詐欺広告はかなり減ってきている。ある程度、プラットフォーム側の規制も影響しているのだろう。

その代わり、インスタグラムやX(旧ツイッター)のユーザーからのDMをきっかけとした被害が増えている模様。例えば、自称“億り人”のユーザーが、〈億り人になれる最短コース教えます〉とか、〈40代でFIREを目指す人は必見!〉といった投稿をし、フォローをしてきた人にDMを送りつける。

ひと昔前の、〈この投資法なら絶対に儲かる!〉といった単純かつ直接的なものではなく、最近は、“億り人”や“FIRE”といった、興味をひきやすいソフトなワードを埋め込んだ投稿が多い。〈キオクシア株でお困りの方に〉といった投稿などは、実際にキオクシア株で含み損を抱えている人には強く刺さると思われる。

さらに、詐欺用にホームページアプリを用意していることも多く、そこでは、億り人やFIREを達成したという偽ユーザーたちの架空の運用成績が多数掲載されている。また、騙されて送金してしまった人に対して、利益が出たと称して、資金の一部を返金するといった手の込んだやり口もある模様。総じて、手口は洗練かつ巧妙化しているといえる。

なぜ騙される? 心理を突く罠

「いくら手口が巧妙になっているといっても、お金を振り込むとかはないな」と思うかもしれない。おそらく、これが大多数の感想だろう。

しかし、相場が大きく下落し、損失が膨らんでいる場合、自分を冷静に保つのは難しくなる。最初は、半信半疑であっても、LINEで入れ代わり立ち代わり共犯者から煽られてしまうと、正常でいられなくなる可能性がある。投資で利益が出ていたとしても、興味本位で覗いてしまい、「少額ならいいか」と始めたり、「このDMが流れてきたのは自分にツキがあるから」と根拠のない楽観で受け入れてしまう可能性も。

もし、わずかでも送金をしてしまうと、今度は、自分が騙されていると認めたくない心理が働いて、どんどん深みにはまってしまう――こうした事態は十分に起こり得る。

送金先が個人名なら詐欺

では、どうすればSNS型投資詐欺を防げるのか。まずは、誰でもわかることだが、投資関連のDMやバナー広告は一切無視をすることだ。

とはいうものの、SNSで投資や株式市場の情報収集をしていると、投資にまつわるDMやバナー広告は間断なく流れてくるはず。その中には、前述したような、興味をそそるものが含まれているだろう。筆者自身、見る分には実害はないので、投資関連の投稿は何度もクリックしたことがある。

そして、気の緩みというか、一時の気の迷いでLINEグループなどに参加してしまっても、送金さえしなければ大丈夫。ただ、その段階はかなり危ういので、万が一、送金をしてもいいかなと思ってしまったら、最後の確認をしてほしいことがある。それは、送金先の口座名義だ。口座名義が個人名だったら100%詐欺と思っていい。法人・企業名であったとしても、その会社が投資運用業の登録をしていなければ、違法業者であり、詐欺である。

友人への運用委託も実は違法

そもそも、他人の資産を預かって投資・運用をするには、金融庁に投資運用業者としての登録が必須。無登録でそうした行為をおこなうと、金融商品取引法に違反する犯罪行為となる。つまり、友人・知人にお金を預けて運用してもらうことも違法だ。友人・知人を介しての投資話というのは昔からあるが、れっきとした犯罪なのでくれぐれも注意をしてほしい。

正式な登録をしている投資運用業者なら、個人名義の口座に送金をさせることはあり得ない。

法人名の場合は、本当に登録業者であるかどうかチェックする。金融庁の『金融庁から免許・許可・登録等を受けている金融事業者検索』や、資産運用業協会の『投資運用会員名一覧』ですぐにわかる。チェックしている段階で、冷静さも取り戻せるだろう。

なお、現在、通称『振り込め詐欺救済法』があり、振込先の口座などにお金が残っていれば、送金した後に詐欺だと判明した場合、返金される可能性はある。だが、残念ながら、この措置でまとまった金額のお金が戻ってきたという話は、寡聞にして知らない。自衛策しかないのが現状だ。

取材・文:松岡賢治

マネーライター、ファイナンシャルプランナー。

証券会社のマーケットアナリストを経て、1996年に独立。ビジネス誌や経済誌を中心に金融、資産運用の記事を執筆。著書に『ロボアドバイザー投資1年目の教科書』『豊富な図解でよくわかる! キャッシュレス決済で絶対得する本 』。■X(旧Twitter)→@1847mattsuu