【現役医師4名による実名座談会】後編「処方サービス」の危険性 ″コンビニクリニック″の課題

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利便性を前面に打ち出した、いわゆる″コンビニクリニック″が存在感を増している。駅ナカやモール内に開業し、オンライン診療も組み合わせながら、忙しい現代人のニーズを巧みに汲み取って、着々と数を増やしているのだ。

ただ、「いつでも診てもらえる」というメリットがある一方で、「医師がコロコロ替わる」「病気が見逃される」といったデメリットも指摘されている。現役のドクターとして医療の最前線に立つ小児科の窪田徹矢医師、内科の五藤良将医師、精神科の高木希奈医師、整形外科の亀田和利医師の4氏がコンビニクリニックの現状と課題について、想いをぶつけあった。

医療ではなく「処方サービス」

高木 何年も採血をしていない患者さんが紹介されて来て、検査をしたらリチウム中毒になっていたことがあります。脱水や腎機能の低下により、少量でも中毒を起こすことがあるので、気分安定薬として炭酸リチウムを使う場合は血中濃度を測りながら調整するのが一般的です。精神科の薬の中には腎臓や肝臓の機能障害を起こすもの、糖尿病や脂質異常症などの副作用が出現するものがあります。リチウムに限らず、採血なしで漫然と処方するのは非常に危険です。コンビニクリニックはそうなるリスクが高い。

五藤 それは精神科だけの問題ではないかもしれません。小児科でも内科でも、整形外科でも「検査をしない」「薬だけ出す」という流れは少しずつ広がっているように感じます。患者さんも「薬だけ欲しい」とはっきり言いますからね。

亀田 「患者のリクエストに応えるのが良い医師」と評価する患者さんが増えているので、そうなってしまうのかもしれませんね。でも、医療は患者さんの希望だけで成り立つものではありません。

高木 そうなんです。医師は、病気を診断し、必要なら検査を行い、別の病気の可能性を除外して初めて薬を処方する。その順番が逆になれば、「医療」ではなく「処方サービス」になってしまう。

五藤 「スマホだけで睡眠薬処方」という広告がSNSで話題になりましたよね。

高木 非常に危険です。睡眠薬や抗不安薬は「眠れなければ飲めばいい」という薬ではないのです。特にベンゾジアゼピン系の薬には依存性があり、安易に処方すべきではありません。

五藤 漫然と処方を続ければ、薬が効かなくなって、服用量が増えることがあります。そうなると高齢者の場合、転倒や認知機能への影響が問題になってくる。不眠の原因が睡眠時無呼吸症候群だった場合、睡眠薬では解決できません。

窪田 実は同じような構図がマンジャロなどの自由診療にも見られます。皮膚科なのに自由診療でマンジャロを処方しているクリニックがあり、理解に苦しみます。マンジャロはGLP-1受容体作動薬といって、嘔吐だけでなく、急性膵炎や胆のう疾患などの注意すべき副作用がありますからね。

先日、医師の友人たちとの間で話題になったのですが、カウンセラーがオンラインで説明して、最後に数分だけ医師が出てきて薬を処方するというクリニックがあるんです。バイト医が多いのですが、「『はい、大丈夫です』とだけ言ってください」とレクチャーされるのだとか。時間との勝負で一日に何人に処方できるかで利益が変わる、という話でした。

「生き残れない」という現実

高木 利用できるから使っているだけで、患者さんは悪くないんですよ。夜間往診サービスもそう。病院へ行かず、自宅で医師に診てもらえるこの仕組みは非常に便利でしたが……。

五藤 需要の広がりとともに増えたのは「病院へ行くのが面倒だから」「仕事を休めないから」という理由で往診を依頼するケースでした。

窪田 本来、夜間往診は救急対応が必要な患者さんのための仕組みです。しかし、便利さが先行すると、本来の役割とは違う使われ方が増えてしまう。

五藤 真面目にやっている医療機関ほど苦しい。診療報酬は全国一律です。患者さん一人に時間をかけて診察し、必要な血液検査を行い、生活指導まで丁寧にしていると、数をこなすことは難しくなる。利益を逃すことになります。

窪田 そうなんですよね。コンビニクリニックのように短時間で診察を終え、制度上取得できる加算を漏れなく算定し、多くの患者さんを診たほうが経営としては成り立ちやすいんです。日本の診療報酬は世界と比べて低水準にあります。なのに人件費は上がっている。医療材料費も上がっている。光熱費家賃も上がっている。それでも診療報酬は大きく増えない。制度を最大限利用して利益を最大化しないと生き残れないという現実がある。

五藤 便利な医療を求める患者。経営に苦しむ地域のクリニック。診療報酬に縛られる医療制度。その三者が複雑に絡み合った結果、生まれたのがコンビニクリニックという存在なのかもしれません。

亀田 土日祝日でも夜でも診てもらえるという価値が、患者さんにとって大きいのは理解できます。ただ、安全面や健康リスクに目を瞑(つむ)るわけにはいきません。ならば使い分けるほかないんじゃないでしょうか。例えば、慢性疼痛(とうつう)で状態が落ち着いている患者さんや、痛風など薬が安定している患者さん、リハビリを継続している患者さんが薬を処方してもらう場合はコンビニクリニックやオンライン診療を利用すればいい。

窪田 泌尿器科でも、症状が安定している場合はオンライン診療で対応できるケースがあります。

五藤 患者さんの状況に応じて、定期的に必ず対面診療を入れ、半年に一度は採血をする。必要なら画像検査をする。状態の変化を直接確認する。オンラインだけで完結させず、対面診療と組み合わせることが重要だと僕は思います。

高木 精神科はやはり対面診療が望ましいです。都市部では、比較的軽症の患者さんを対象にオンライン診療をするクリニックが増えていますが、措置入院、医療保護入院、救急精神医療、自傷・他害のリスクが高い患者さんを受け入れる病院では医師不足が深刻です。

窪田 若手の医師はコスパよく働きたい。定時に帰れて、時給1万5000円とか2万円とか、高い給料を出す医療機関に若い医師が集まりがちですね。

コンビニクリニックを悪者にしても問題は解決しません。診療報酬制度、地域医療、人材不足、患者さんの受診行動……すべてが関係しています。しかし、私たち開業医ができることは、必要な医療を守ることだと思っています。便利さと安全性。効率と医療の質。その両立こそが、これからの日本の医療に最も求められる課題なのではないでしょうか。

『FRIDAY』2026年8月21・28日合併号より