自分の身の丈に合った住まいを選ぶにはどうすればいいか。金融教育家の上原千華子さんは「住宅ローンを組む際、審査に通る金額と、無理なく返せる金額には差がある。まず返済負担率20%の金額から家計に当てはめてみてほしい」という――。
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■「借りられる額」と「返せる額」は違う

首都圏を中心に、住宅価格の上昇が続いています。住宅ローン金利も上がり、今買わなければ、もう買えなくなるかもと焦るかもしれません。しかし、価格の上昇に合わせて借入額を増やせば、購入後の家計が苦しくなって、教育費や老後資金を圧迫するおそれがあります。

大切なのはいくら借りられるかではなく、将来も無理なく返していけるかという視点です。今回は、年齢・世帯年収別のシミュレーションを通して、わが家に合った「マイホームの限界額」を一緒に考えましょう。

住宅ローンの審査では、年収や勤続年数、完済時の年齢、ほかの借入状況などが確認されます。なかでも重視されるのが「返済負担率」、額面年収に占める年間返済額の割合です。審査基準は金融機関によって異なります。例えば【フラット35】では、年収400万円未満で30%以下、400万円以上なら35%以下が基準です。自動車ローンや教育ローン、カードローンなどの返済も含まれます。

実際、住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者の実態調査(2026年1月)」によると、返済負担率は「15%超〜20%以内」が26.2%と最多で、「10%超〜15%以内」が21.7%、「20%超〜25%以内」が17.8%と続きます。

■育児、介護、転職でお金が減ることも

ただし、審査に通っても、家計も安心とは限りません。審査は貸したお金を返せるかを判断するもので、購入後の暮らしのゆとりを保証するものではないのです。

同じ年収でも、子どもの人数や教育方針、生活費、老後資金の準備状況などによって、住宅に回せる金額は異なります。共働き世帯では、出産や育児、介護、転職などによる一時的な収入減も想定しておきたいところです。金融機関から「借りられる額」ではなく、家計が変化しても「無理なく返せる額」から考えることが大切です。

では、毎月の返済額を額面世帯年収の20〜25%に収めると、住宅ローンはいくらまで借りられるのでしょうか。

■年齢・世帯年収別「ローン限界額」

以下の条件で、年齢・世帯年収別に試算してみましょう。

【シミュレーションの前提】
購入年齢:30歳・40歳・50歳
世帯年収(額面):400万円・500万円・700万円・800万円・1000万円
返済負担率:額面世帯年収の20%と25%
返済期間:30歳・40歳は35年、50歳は30年
返済方法:元利均等返済、ボーナス返済なし
金利:変動金利は年1.0%、金利上昇後は年2.0%、全期間固定金利は年3.14%
その他借り入れ:なし
頭金・購入時の諸費用:住宅ローン借入額には含まない
※実際に無理なく返せる金額は、生活費や教育費、保有資産などによって変わります。
筆者作成

図表1を見てください。変動金利年1.0%の場合、世帯年収500万円だと2950〜3690万円、700万円だと4130〜5160万円、1000万円だと5900〜7380万円です。これと比較して、固定金利年3.14%の場合は7割くらいの金額になります。

30歳と40歳はどちらも35年返済で試算しているため、同じ年収・金利なら借入額は同じです。ただし、30歳で借りれば完済予定は65歳、40歳なら75歳となります。月々の返済額が同じでも、老後に残る負担は異なります(後述)。また同じ返済額でも、金利が高いほど借入額は小さくなります。

■まずは返済負担率20%で検討してみる

50歳では、返済期間を30年としているため、30歳・40歳と同じ年収でも借入額が少なくなります。変動金利年1.0%の場合、世帯年収700万円だと3620〜4530万円、1000万円だと5180〜6470万円です。

筆者作成

購入価格を考える際は、図表の上限いっぱいまで借りるのではなく、まずは下限(返済負担率20%)の金額から家計に当てはめてみてください。教育費がかかる時期や、収入が減る時期にも返し続けられるかを確認し、余裕がある場合のみ25%までの範囲内で検討すると良いでしょう。

■65歳で「残高3477万円」は危ない

30歳で35年ローンを組んで、予定どおり返済した場合、65歳で完済します。一方、40歳で35年ローンを組むと完済は75歳、50歳で30年ローンを組むと80歳です。そこで、図表1〜2の「変動金利1%・返済負担率20〜25%の借入額」で金利が返済期間中続くと仮定し、65歳時点の残高を見てみましょう(図表3)。

筆者作成

世帯年収700万円、返済負担率20%で見ると、65歳時点の残高は、40歳で購入した場合が1331万円、50歳では1945万円です。返済負担率25%まで借りると、それぞれ1663万円、2434万円に増えます。

退職後も現役時代と同じ返済額を支払えるとは限りません。退職金で完済する場合は、その分老後資金が減ることも忘れないでください。購入時には、毎月の返済額だけでなく、65歳時点の残高と、その後の収入で返せるかまで確認しましょう。

■金利が1%→2%に上がってしまうと…

変動金利が年1.0%から2.0%へ上昇すると、家計にどの程度の影響が出るのでしょうか。年1.0%、返済負担率20%で算出した借入額について、返済期間は変えずに、金利上昇前後の毎月返済額を比べました。

※年1.0%で算出した借入額を年2.0%、30・40歳は35年、50歳は30年で返済すると仮定した単純試算。実際の変動金利の見直し時期や、5年ルール・125%ルールの有無は金融機関によって異なる。(筆者作成)

30歳・40歳では、世帯年収400万円で月約1万2000円、1000万円で月約2万9000円、返済額が増えます。50歳では月約1万〜2万5000円増えます。借入額が大きいほど、増加額も大きくなります。

返済負担率を20%に抑えて借りても、金利が1%上がると約23%台に上昇します。当初から返済負担率25%まで借りていれば、約29%に達する計算です。金利の動きは正確に予測できません。「今の金利なら返せる」だけでなく、金利が1%上がっても家計を維持できるかどうか、購入前に確かめておきましょう。

■頭金は1〜2割、諸費用も3〜7%必要

マイホームの購入には、住宅ローン以外のお金も必要です。まずは頭金で、物件価格の1〜2割が目安の一つです。ただし頭金を入れすぎて、病気や収入減に備える預貯金まで使っては本末転倒です。購入後も生活費の半年〜1年分を目安に、すぐに使えるお金を残しておきましょう。

購入時には、不動産取得税や登録免許税、司法書士報酬、住宅ローンの手数料・保証料、火災・地震保険料などもかかります。諸費用は新築住宅で物件価格の3〜7%程度、中古住宅では仲介手数料を含めて6〜10%程度が目安です。引っ越し代や家具・家電の購入費も見込んでおきます。

購入後は固定資産税のほか、マンションなら管理費や修繕積立金、駐車場代がかかります。戸建てでも、将来の修繕費を自分で積み立てる必要があります。月々のローンだけでなく、住まいにかかる費用全体を家計に入れて考えましょう。

■「首都圏は高すぎる」どうすればいい?

冒頭で触れたように、首都圏では新築・中古問わず住宅価格が上昇しています。リクルートの調査によると、首都圏の新築マンション平均購入価格(2025年)は7324万円と最高を記録しました。東京23区は9598万円、東京市部は6557万円、神奈川県は6858万円、埼玉県5725万円、千葉県5455万円となっています。

※リクルート「首都圏新築マンション契約者動向調査(2025年)」

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希望物件が上限額を超えた場合、安易に借入額を増やすのはおすすめできません。まずは希望条件を整理しましょう。新築から中古へ、都心から郊外へと範囲を広げるほか、広さや駅からの距離を見直すと、価格を抑えられるかもしれません。中古住宅は、リフォーム費用も見積もっておきましょう。

■「50年ローン」のこわい落とし穴

購入時期をずらすのも一つの選択です。「今買わなければ」と焦る必要はありません。家賃を払い続けることにはなりますが、その間に頭金を増やせば借入額を抑えられますし、家族構成や働き方の変化を見極める時間にもなるでしょう。ただし、住宅価格や金利が動く可能性もあります。「頭金がいくらになったら」など、購入を再検討する条件を決めておくと安心でしょう。

共働き世帯では、育児や介護、病気、転職などで、どちらかの収入が減っても返せるか、家計に当てはめてみましょう。50年ローンなどの超長期ローンは、月々の返済額を小さく見せますが、住宅が安くなるわけではありません。返済期間が長いほど一般に総利息は増え、老後まで債務が残りやすくなります。

総返済額と65歳時点の残高、完済年齢を確認し、「余裕ができたら繰り上げ返済する」という計画が本当に実行できるかまで考えましょう。

マイホームの限界額は、銀行が貸してくれる金額ではなく、購入後も無理なく返せる金額です。返済負担率20〜25%を目安に、教育費や老後資金を準備しながら、収入減や金利上昇にも耐えられるかを確認しましょう。

人生には旅行や趣味子どもの教育など、住まい以外にも大切にしたいことがあります。家を買ったあとも、やりたいことを楽しめるかどうか、よく考えた上でわが家に合った価格を選びましょう。

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上原 千華子(うえはら・ちかこ)
金融教育家
金融教育家。欧米投資銀行勤務歴17年、個人投資家歴26年。証券外務員一種、最新の心理学NLPを使ったマネークリニック®認定トレーナー。2018年、ウェルス・マインド・アプローチ創業。資産運用講座を実施し、2022年より「3ヶ月マネー実践講座」を提供開始。ライフプランから資産運用までマンツーマン指導。著書に『「お金の不安」をやわらげる科学的な方法 ファイナンシャル・セラピー』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。
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(金融教育家 上原 千華子)