2021年、村上春樹ライブラリーで開かれた記者会見に出席した村上春樹氏。AP=聯合ニュース

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韓国の出版社が沸き立つ瞬間がいくつかある。その一つが村上春樹氏の新作が出た直後だ。韓国での出版権を確保するための競争が激しくなるためだ。先月3日に村上春樹氏の16作目の長編小説『夏帆─The Tale of KAHO─』(以下、『夏帆』)が日本で出版された後も、状況は同じだった。

夏帆』は、絵本作家である主人公の夏帆が初めて会った男性から容姿をけなされた後に経験する奇妙な物語を描く。村上春樹氏の長編小説で初めて女性が主人公となった作品だ。発売日の午前0時に本を買うため書店の前に長い列ができるほど、日本国内でも関心が高かった。日本ではすでに30万部が発行された。

出版業界によると、『夏帆』の韓国での版権をめぐる競争入札が11日に締め切られた。村上春樹氏の過去の作品を出版した文学トンネ、民音社、ビチェ(キムヨン社の文学ブランド)、文学思想をはじめ、10社を超える出版社が入札に参加したとの話が出版業界から出ている。村上春樹作品の著作権を管理する酒井著作権事務所が入札を主催する。出版社は前払い印税の入札額だけでなく、マーケティング方法なども併せて提出するという。ある出版社の代表は12日、「入札額だけで決まるわけではない。出版社への信頼、広報予算などを総合的に見て、村上春樹氏が最終決定する」と説明した。

それでも、前払い印税の入札額が最も重要だという点で業界内に異論はない。前作『街とその不確かな壁』(2023年)の前払い印税は10億ウォン(約1億1200万円)台だったとされる。出版市場の不況、ウォン・円相場の下落、前作に比べ日本国内での人気が低いことなどの影響で入札額が下がるとの見方もあるが、業界では今回も10億〜20億ウォンの間で決まるとみている。一般的に前払い印税が20億ウォンなら、20万部の販売が損益分岐点とされる。ただ、マーケティング費用が加われば、損益分岐点は30万部以上に上昇する。

村上春樹氏の本の前払い印税は1990年代末までは1000万ウォンを超えなかったという。2000年代に入って億ウォン台に上がり、『海辺のカフカ』(2003年)の出版時には5億ウォン前後まで上昇した。高額な前払い印税にもかかわらず、『海辺のカフカ』は韓国国内で80万部以上売れ、出版社の文学思想は大きな利益を上げた。出版業界では「村上春樹ロト」という言葉が生まれた。版権さえ確保すれば金を稼げるという意味だった。

そのころ、酒井著作権事務所も版権の販売方式を変えた。それまでは主に文学思想から本を出していたが、公開競争入札を始めたのだ。その最初が『1Q84』(2009年)だった。文学トンネが版権を購入したが、前払い印税の契約金は8000万円(当時の為替レートで約10億ウォン)ほどだったという。全3巻の『1Q84』が韓国国内で200万部以上を売り上げる大成功を収めたことで、民音社から出版された次作『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(2013年)は前払い印税が15億ウォン水準まで上昇した。その後の作品もこの程度の水準を維持している。

版権競争の過熱を懸念する見方も多い。ある出版エージェンシーの代表は「英米圏や欧州の出版社は主に前作を出版した出版社に優先交渉権を与えて版権契約を結ぶ」とし、「公開入札競争は前払い印税を引き上げようとする日本のエージェンシーの戦略」と指摘した。出版社関係者は「最近の出版市場を考慮すれば、前払い印税に20億ウォンを払って利益を出すのは難しい」と話した。

中小出版社の関係者は「高額な前払い印税を払える大手出版社だけの祭りだ」と冷ややかに語った。この関係者は「新興出版社が最も高い入札額を提示したとしても、酒井著作権事務所がその金額で結局は大手出版社と契約するという話もある」と伝えた。村上春樹氏の最近の作品を出版した大手出版社の文学トンネ、民音社、ビチェのうち1社と最終的に『夏帆』の出版契約を結ぶだろうと、多くの業界関係者は予想した。