「大都市一強」の時代は終わった…大阪が6年連続1位の裏で、札幌・金沢・つくばが見せた「人口減少時代の生き残りと勝ち筋」【都市特性評価2026】
森記念財団都市戦略研究所が発表した「日本の都市特性評価2026」において、大阪市が6年連続で総合1位を獲得しました。しかし、今回の調査結果が真に示しているのは、単なる大都市の優位性ではなく、都市が生き残るための「勝ち筋の変化」です。首位を走る大阪の強みと課題、追随する名古屋・福岡、そして「専門特化」で存在感を高める札幌・金沢・つくばなどの地方都市――。人口減少時代において、人や企業を惹きつける都市戦略の現在地を読み解きます。
全国136都市の頂点は、6年連続首位「大阪市」
日本の都市間競争で、大阪市の強さが際立っている。森記念財団都市戦略研究所が全国136都市と東京23区を対象にまとめた「日本の都市特性評価2026」で、大阪市が6年連続の総合首位となった。2位は名古屋市、3位は福岡市で、上位3都市の顔ぶれは前年と変わらなかった。
調査は「経済・ビジネス」「研究・開発」「文化・交流」「生活・居住」「環境」「交通・アクセス」の6分野、87指標から都市の実力を測る。単なる人口規模や経済規模のランキングではなく、企業や住民を引き付ける力を多面的に浮かび上がらせた点に特徴がある。
大阪市が首位を守った最大の要因は、経済と交通という都市活動の根幹で揺るぎない優位性を築いていることだ。「経済・ビジネス」と「交通・アクセス」でともに1位を維持。さらに「研究・開発」は6位から5位に上昇し、財政に関する評価も21位から8位へ躍進した。
大阪・関西万博を契機に、宿泊施設や再開発、交通インフラへの投資が続く大阪だが、課題もある。「文化・交流」は2位と高水準を保つ一方、「観光客誘致活動」の順位を落とした。
万博という一過性のイベントを、継続的な都市ブランドの向上に結び付けられるか。首位都市の次の焦点は、ハード整備から情報発信や文化創造へ移りつつある。
2位の名古屋市は、大阪とは異なる勝ち筋を持つ。「研究・開発」と「生活・居住」で1位を獲得。トップ大学数や論文投稿数、特許取得数で高い評価を得る一方、居住環境や生活の余裕度も改善した。
産業集積と暮らしやすさを併せ持つ「職住近接型」の都市モデルが、名古屋の底堅さを支えている。もっとも、安全・安心や育児・教育では評価を落としており、研究開発力を若い世代の定着につなげられるかが課題となる。
3位の福岡市は、ビジネス創出力と交流実績を強みに存在感を高める。九州の玄関口という地理的優位性に加え、空港と都心の近さ、起業支援、都市再開発が相乗効果を生んでいる。上位には横浜市、京都市、神戸市が続き、三大都市圏と地方中枢都市が並ぶ構図となった。
今回、特に注目されるのが札幌市だ。前年の9位から7位に上昇し、「経済・ビジネス」は14位から8位へ浮上した。観光都市としての知名度に加え、再開発や企業活動の活発化が評価を押し上げた。
文化・交流分野でも発信実績が11位から5位に改善している。一方、交通・アクセスは100位にとどまり、地理的制約をデジタル化や航空ネットワークでどう補うかが成長の条件となる。
上位20都市が示唆する規模だけではない競争力の現実
上位20都市を見ると、都市の競争力が必ずしも規模だけで決まらないことも分かる。金沢市は文化と環境、つくば市は研究集積、豊田市は産業基盤、浦安市は交通利便性や居住機能など、それぞれ明確な得意分野を持つ。松本市、浜松市、静岡市、奈良市、長野市、岐阜市、府中市も上位に入り、専門性を磨いた地方都市や郊外都市が大都市に食い込んだ。
居住者アンケートでは、東京都府中市が自然環境の満足度で1位、街路の清潔さで2位となった。西宮市は居住環境の満足度で1位を獲得した。企業や観光客を呼び込む「外向きの競争力」と、住民が感じる「内向きの満足度」は必ずしも一致しない。人口減少時代には、両者を同時に高める都市政策が必要になる。
東京23区の1位は港区
東京23区では港区が総合1位、千代田区が2位、中央区が3位だった。港区は経済・ビジネスと研究・開発、千代田区は交通結節性、中央区は生活・居住で強さを見せる。都心3区でさえ、それぞれ異なる機能に特化している。
これからの都市競争で問われるのは、何でもそろった「万能都市」を目指すことではない。自らの産業、大学、文化、自然、交通といった資産を見極め、どの分野で人や企業を引き付けるのかを明確にすることだ。
大阪の総合力、名古屋の研究開発力、福岡の成長力、札幌の発信力、つくばの専門性――。ランキングが映し出すのは順位そのものよりも、人口減少時代を生き残る都市ごとの「戦略の差」が浮き彫りとなってきた。
[参考資料]
健美家「日本の都市特性評価 2026」大阪が6年連続1位。都市競争力の「勝ち筋」が変わった。札幌、金沢、つくばが示す専門特化型の成長戦略

