女優引退発表のMINAMOが語った「私とAVとお母さんのこと」 “応援できない”と言っていた母の変化 引退を伝えた両親の反応に「この決断は間違っていないと思えました」
2021年5月にAVデビューした人気女優・MINAMOが、活動5年を経て今年12月に引退すると発表した。9月には初の半自伝的小説『母の泥舟』を刊行予定。そこには母を救いたかった娘の想いが綴られているという。引退を決意した理由、そして「一番尊敬する人」と語る母への思いをライターの河合桃子氏が聞いた。
【5年前のMINAMOの写真】少女のような透明感を持つ彼女が、大胆な表情で…
母は「厳しい人」だった
「これで一生サヨナラだとしてもデビューする」
まだ「MINAMO」になる前の彼女が母親にそうメールを送ったのは、デビュー半年前の2020年末のことだった。
AV女優という職業を選ぶ女性が増えるなか、当事者にとって「家族にどう伝えるか」は深刻な問題であり続けている。
デビュー前のMINAMOにとって、母は「厳しい人」だった。家庭内も必ずしも明るい雰囲気ではなかったという。
「幼い頃からお母さんやお父さんに『そのままの私を愛してもらえていない』という思いがあって、それに傷ついていた自分がいました。お父さんは仕事の不満を家庭に吐き出す人で、お母さんはいつも泣いていた。そんなお母さんを守ろうと思う反面、『子供はこうしなさい』というのが強い人で、私には『楽しい』がないと感じていたんです」
18歳の時、両親のいる地元・京都を飛び出した。上京し、両親から離れる選択をしたのだ。
東京に出て数年が経つ頃、グラビア活動に挑戦したことが転機となる。
「グラビアを通して初めて自分を可愛いと思えたし、写真を通して多くの人に愛されることが『楽しい』と感じた。『魅せる仕事』としてAV女優に挑戦することはごく自然な流れでした」
冒頭のメールを母に送ったのは、デビュー作を撮り終えた後。久方ぶりの母への連絡だった。
「なぜAVデビューするのかを、実家に帰って近所のサイゼリヤで3時間、説明しました。借金があるわけでも、男に貢いでいるわけでもない。初めてワクワクして挑戦したいと思えた仕事なんだと伝えました。お母さんを悲しませたいんじゃなく、前向きに取り組んでいることが伝わるように、必死にプレゼンしました」
家族に内緒でAV業界に足を踏み入れる女性も少なくない。そんななか、MINAMOが母に必死になって説明したのには理由があった。
「絶縁されるかもしれないという怖さもある一方で、どこかで受け入れてほしかったんだと思います。お母さんは泣きながら聞いてくれたし、私も泣きながら話しました」
母からは「応援するとは言えない」と言われたが、その反応は恐れていた「拒絶」ではなかった。母から「お母さんも大学生の頃、AV監督になりたいと思ったことがあったんや」という思いもよらない言葉をかけられ、衝撃的だったとMINAMOは語る。
サイゼリヤから実家に帰ったその足で父に伝えると、「応援するで」という言葉が返ってきた。
「拍子抜けしましたね。幼い頃からソリが合わず、貶されるばかりでしたが、お母さんよりもお父さんが受け入れてくれたことに。もちろん、発した言葉が本心だとも思わないですけれど……」
「ほんまにそれでいいん? 後悔せえへん?」
「応援できない」と言った母の反応は、5年の活動の間で徐々に変わってきたという。
「一番ビックリしたのは、私のファンの方の名前を知っていたことです。ツイッター(現・X)を見ていたようで、私が出たイベントに『○○さん来はった?』と言ってくれたのを覚えています」
今では母と週1で電話し、「弱音や愚痴をこぼせる唯一の相手」となった。
「私が悩みを打ち明けると、『今はそう思ってるかもしれへんけど、数日経てば変わるわ』と心を軽くしてくれます。
私は誰にも弱音を吐きたくないんですよ。それを言える人の強みもあるけど、私はファンの方に少しでも不快な思いをさせたくないので」
AV女優という職業やファンへの思いは人一倍強い。それでも引退を決意したのはなぜか。
「私はただただ『エロ』が好きで活動してきましたが、世のみんなが求めるだろう『エロの出汁』が薄まっていることに気づいたんです」
独特な表現の真意を問うと、AVと向き合った深い思考を明かした。
「毎日、エロとは何かを考える5年間でした。世のみんなが求めるエロには『構造』があって、それは女優の日常だと思うんです。SNSが発達した時代、女優が発信する日常も作品に加味される。つまり、作品に対して、女優の日常は『出汁』みたいなもの。私はあくまでエロ好きとして作品に専念したかったけど、それだけでは旨味が足りないと感じるようになった。『私の出汁はそもそも薄い』と思うとしんどくなって、5年という区切りで辞めよう、もうやり切ったと思ったんです」
デビューの際に「応援できない」と言った母に引退の意向を伝えると、意外な答えが返ってきた。
「『ほんまにそれでいいん? 後悔せえへん?』って立ち止まらせるような言葉をかけてくれました。お父さんは『そうなん』と受け入れてくれて、少しはホッとした部分もあったのかな。両親ならではの温かい反応で、改めてこの決断は間違っていないと思えましたね」
もう一つ、引退を決めた理由が、半自伝的小説『母の泥舟』を書いたことだった。題名の通り、母への思いや軋轢までを認めた物語を、母にも読んでもらったという。
「気恥ずかしかったのか、『お母さん美化されすぎひん?』って言葉から始まり、『母親の失敗の過程の描写が足りない』とか『情景だけでなく匂いや温度を丁寧に描写しなさい』『情緒がない』と散々でした(笑)。アドバイスをもとにしっかり加筆修正はしましたけど。
私と同じように、家族の問題を抱えている方はたくさんいると思います。どれだけ年を重ねても当時の傷はずっと癒えず、じゅくじゅくしている人たちに届けたい。この物語に自身の姿を重ね合わせ、その胸の傷を少しでも癒やす一助になれたら嬉しいです」
今後、彼女は完全に芸能を引退するわけではない。目指す方向性とは?
「私は書くプロではないけれど、エッセイや小説の執筆は今後も続けていきたいです。AVは引退しますが、女優やタレントとしての活動も挑戦し続けたい。私としては、ヌードを完全封印するつもりはないんです。今後も女性が自身の性を肯定的に捉えられるように、そのきっかけとなる発信はしていきたい。女性が見ても魅力的なカラダでいたいと思っています」
そう微笑んだ彼女の表情からは、どこか肩の荷が下りたような柔和さと、これからを見つめる決意が感じられた。
【プロフィール】MINAMO(みなも)/京都府出身。2021年にSOFT ON DEMANDよりAVデビュー。2026年12月末日をもって引退することを発表。趣味は映画&レコード鑑賞、読書。公式YouTube「MINAMOジャンクション」でも活躍。最新写真集『愛の果実』(徳間書店)が発売中。9月14日には、初の半自伝的小説『母の泥舟』(KADOKAWA)を発売予定。
取材・文/河合桃子
※週刊ポスト2026年8月14・21日号
