鹿児島読売テレビ

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全国大会への切符を懸けた消防救助の九州大会。今年が最後の挑戦となる、一人の消防隊員がいました。災害現場で命を守る技術を磨き続け、仲間とともに目指す全国の舞台――。熱い夏を追いました。

■「今年が最後」ラストイヤーに懸ける思い

今年5月、日置市で開かれた県消防救助技術指導会。県内20の消防本部から選ばれた約340人の隊員が出場しました。上位チームには、熊本で開かれる九州大会への出場権が与えられます。

(円陣)
「熊本いけるー!」

障害突破の部で、見事、九州大会への切符をつかんだ霧島市消防局上窪チーム。キャプテンの上窪駿介隊員(33)には、ある特別な思いがありました。

(霧島市消防局・上窪駿介隊員)
「自分の本当に、今年ラストイヤーだと思って、みんなに言ってやってきた」

■全国へ――鍛え抜いた技術

午前8時30分。上窪隊員の一日が始まります。霧島市消防局では、午前8時半から翌日の午前8時30分まで勤務する24時間交代制です。火事や救助への対応、それに備えた訓練のほか、ガソリンスタンドなど危険物を扱う施設の検査や、学校での避難訓練など、さまざまな業務を行っています。

取材中にも指令が鳴り響き――。日々、忙しい業務の合間や休日を使って、大会に向けた障害突破の訓練をしています。何度も訓練を繰り返し話し合いを重ね、1秒でも早くタイムを縮めます。全国への切符をつかむため、妥協はありません。

上窪チームが挑むのは「障害突破」。壁の乗り越えや、高所からの降下など、災害現場を想定した5つの障害を、4人1組で突破する競技です。

最後に待ち受けるのは、約10キロの装備を身につけて挑む、全長26.2メートル、コの字型の真っ暗なトンネル。視界はほとんどありません。どうやって進むのでしょうか。

(霧島市消防局・石田朱舞隊員)
「人それぞれだが、だいたい歩数で決めている。5歩くらいきたら、壁を蹴って曲がる」

頼りになるのは、自分の感覚だけです。どれほど難しいのか。実際に体験しました。勝負する相手は、チーム最速の入佐隊員です。

(隊員)
「(はっや!何秒ですか)8秒33(8秒33!?)」

続いて、私も挑戦します。

(勝又健誠アナウンサー)
「準備よし!(転倒)ああやばい!」
「何秒ですか」

(隊員)
「13秒35(13秒35?)」

(勝又健誠アナウンサー)
「第2カーブのところで曲がり切れなくて、一周くるって一回転しました」

わずかなミスが、タイムに大きく影響します。隊員たちの技術の高さを実感しました。

■夢の舞台へ――あと一歩

実は、今年からルールが大きく変わりました。安全面をより重視するため、安全確認の動作や補助員が増え、審査もこれまで以上に厳格になりました。一人でも審判が減点と判断すれば、その記録は認められません。

九州各県の県大会では、出場チーム全体の5割以上が失格。厳格化されたルールに、多くのチームが苦しみました。そんな中、鹿児島大会を勝ち上がった上窪チーム。最大の武器は、チームワークです。現場でも、訓練でも、プライベートでも、ともに過ごしてきた4人。その時間が、強い絆を育んできました。

(霧島市消防局・中村皇志朗隊員)
「県大会当日は(上窪さんが)涙こらえてたけど、たぶん、九州大会はこらえきれないと思う」

(霧島市消防局・上窪駿介隊員)
「うれし涙流せる機会なんて、なかなかないと思うので、自分が仮に失敗しても後輩たちに助けてもらって、チームで必ず全国とって、うれし涙を流したいと思う」

同じ目標を見つめ、同じ時間を過ごしてきた4人。夢の舞台まで、あと一歩――。

■最後の夏…その先へ

運命の九州大会です。7月10日、熊本県で開かれた九州大会。39の消防本部から263人の消防隊員が出場しました。この日の熊本は、35度を超える猛暑日。厳しい暑さの中、全国大会出場となる上位3チームを目指し、上窪チームが競技に臨みます。

(霧島市消防局・上窪駿介隊員)
「本当にラスト。一緒にやってきたこいつらと、絶対全国勝ち取りたい。上の景色をみんなにも見せて、一緒に味わいたい」

会場には、家族の姿もありました。

(霧島市消防局・上窪駿介隊員)
「元気出ますね。支えがないとできないので、感謝してます」

家族の思いも胸に。最後の挑戦に挑みます。

1組目から、全国大会常連の福岡県代表が好記録をマークします。ここまでの結果は、ご覧の通りです。減点がなければ、全国大会出場となる上位3チームに入るには、2分1秒3以内にゴールする必要があります。

(勝又健誠アナウンサー)
「いま、あちらで上窪チームが準備を始めています。上位3チームに入り、見事全国大会への切符を手にすることができるのでしょうか。まもなくスタートです」

手元の計測では、2分4秒09――。競技直後、隊員たちの表情に、悔しさがにじみます。

(隊員)
「え、失格?」
「ロープ踏んだよ」

隊員の1人が「ロープを踏んでしまったかもしれない」と振り返ります。もし、ロープを踏んでしまった場合、 減点対象なので失格となります。

(隊員)
「OK」
「あーもう」
「ようやった。ようやったよ。後、信じよう」
「俺の巻き取りも遅かった。お前のせいだけじゃない。全然お前のせいじゃない」

結果発表――。全国大会へ進む上位3チームが発表されます。

(アナウンス)
「八女消防本部 溝上隊員チーム。粕屋南部消防組合消防本部 一木隊員チーム」

そして――。

(アナウンス)
「有明広域行政事務組合消防本部 水本隊員チーム」

最後まで、霧島市消防局の名前は呼ばれませんでした。結果は減点による失格。九州大会でも出場した13チーム中8チームが減点による失格となりました。

(霧島市消防局・上窪駿介隊員)
「どこの誰にも文句の言われない演技をする難しさを改めて痛感しました。自分たちで、決めた目標を、そこに向かって一つのことをやり遂げるというところは現場活動でも一緒で、自分たちは要救助者を助けないといけないですし、自分たちがやるって決めたことを、やらないといけないことを、しっかりとやり遂げられる隊員にこれからもなっていきたい」

全国への夢は、あと一歩届きませんでした。それでも、仲間と磨いた技術と絆は、これからも災害現場で人の命を守り続けます。

「ありがとうございました」
「最後、ラストイヤー取り消していいですかって」
「取り消すかもしれませんってね」
「取り消したら取材なしでお願いします。」
「悔しいっすね~」

最後の夏――。決めて挑んだからこそ、味わった悔しさ。それでも最後にあったのは、4人の笑顔でした。

(KYT news.everyかごしま 26年7月14日放送)