[8.7 J1第1節 横浜FM 3-4 鹿島 MUFG国立]

 シーズン移行元年の開幕戦で、舞台はJリーグ史上最多6万3960人が詰めかけた聖地・国立競技場。それも対戦相手は昨季Jリーグ王者の鹿島アントラーズ--。横浜F・マリノスに現れた16歳の新星MF三井寺眞が話題ずくめの一戦で、衝撃的なプロデビューを飾った。

 2010年4月2日生まれの三井寺は青森県出身で、中学時代を過ごしたFCフォーリクラッセ仙台(現・FCフォーリクラッセ東北)でブレイクを遂げた16歳。中学卒業後の今春から横浜FMに加入し、4か月前にプロ契約を交わしたばかりだが、キャンプからの猛アピールで16歳4か月5日という史上最年少での開幕スタメンを勝ち取ると、0-0で迎えた試合序盤にさっそく特大の爪痕を残した。

 前半7分、右サイドを攻め上がったMF近藤友喜がペナルティエリア右を切り裂き、折り返しのクロスを送り込むと、三井寺はゴール前に走り込んで反応。「近藤選手の個人技が全てだったと思うので自分は合わせるだけ」(三井寺)。相手守備陣のスペースを突いて冷静にワンタッチで合わせ、2026-27シーズンのJリーグ第1号となる先制ゴールを奪った。

 開幕スタメンに注目を集めるだけでなく、満員の国立に衝撃を与えたプロ初ゴール。三井寺は特大のガッツポーズを披露した後、先輩チームメートによる歓喜の輪に平然と囲まれており、すでにスターの風格すら感じさせていたが、実は「昨日の前泊ではずっと緊張していた」という。

 そんな16歳の心を軽くしたのは先輩たちの言葉だった。試合の準備期間から「『なんかお前決めそうだわ』みたいに言われていた」といい、この日も「いろんな先輩が話しかけてくれていたのでノビノビとプレーできた」と三井寺。ウォーミングアップの高揚感を経て、入場時には「すごい緊張していた」というが、試合が始まれば「いつも通りにできた」と胸を張った。

 そんな強心臓ぶりはピッチ上でも終始表現し、ゴールを決めた後も浮つく様子はなく、パフォーマンスは冴えるばかりだった。中でも圧巻だったのは同点に追いつかれて迎えた前半18分のプレー。DF諏訪間幸成からのロングフィードが左サイドに送られると、DF植田直通を背中で制しながら左足アウトサイドで浮き球をトラップし、その勢いで縦突破を敢行。名手を鮮やかにいなす超絶美技に国立競技場が再び大きく沸き立った。

 何より三井寺が恐ろしいのはこれを単発のスーパープレーで終えるのではなく、すぐさま次のプレーに移り、背後に抜けたMF天野純にスルーパスを通したことだ。その結果、天野がゴール前にクロスを上げ、FW谷村海那が勝ち越しゴール。三井寺は「たまたまっす。後ろのスペースが空いてるかなと思ってトラップしたら良い感じになった」と謙遜したが、大観衆の歓声には「めっちゃ気持ち良かったっす」と笑顔を見せた。

 さらに三井寺は後半13分にも、左サイドのトランジションで技術を活かし、天野へのスルーパスで3点目を演出。結果的にはチームの全3ゴールに絡む大活躍を見せ、試合を視察した日本代表の森保一監督からも「得点も決める、演出もする、素晴らしい活躍をしていた」と最大級の賛辞が贈られた。

 試合後の取材エリアでは大勢の報道陣に緊張した面持ちは見せつつも、一つ一つの質問には16歳とは思えない冷静さで応じていた三井寺。自身のゴールについては「気持ち良かった」と前向きに振り返りつつも、周囲のサポートやJリーグの緊張感を率直な言葉で口にするなど、地に足のついた姿勢が印象的だった。

 試合の総括についても、チームが3-4の逆転負けを喫したこともあり、「ゴールは取れたけど勝てなかったので。自分の中では悔しい気持ちが大きい」と控えめに話した三井寺。自身も後半16分で足をつってピッチを退いていたこともあり、責任を感じている様子だった。

「今までつったことがなかったんで、まさか60分につるとは自分の中では思っていなかった。やっぱり自分が思っている以上に緊張が大きかったんだと思う。でも60分でつってたら、これから90分の試合で使われる回数も少なくなってくると思うのでそこは今後の課題にしたいと思います」(三井寺)

 不慣れなプロでの生活にニキビが増えた時期もあり、「ドクターに相談してたけど、思春期だから(治るのを)待てって言われた。どうしようもないですかね(苦笑)」と16歳らしい一面ものぞかせた三井寺。ただピッチの上では年齢を意識することなく、活躍を続けていく気概に溢れている。

「活躍し続ける選手が上に行くと思う。自分はまだ1試合しか出ていないんで。これからチャンスを掴み続けるというのを自分のモットーにしていきたいかなと思います」。衝撃的なJリーグデビューも今や通過点。伝説の始まりを予感させた16歳に歩みを止めるつもりはない。

(取材・文 竹内達也)