“GPIFが優れているのは「リスクを取らないことがリスク」であることを実践している点”とマーケットアナリストの田口れん太氏は言う

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 財務省でさえ羨望の眼差しを送るのが、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が運用する巨額資金である。その運用手法は徹底した分散と長期運用の順守。決して派手な取引をしているわけではないが、いつの間にか約300兆円に積み上がっている。ならば、ただ羨ましがっているだけではもったいない。GPIFはその保有資産をすべて公開しているのだ。ここは尻馬に乗って、同じやり方で投資してみるのはどうだろうか。

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世界最大の政府系投資ファンド

GPIFをはじめとする年金基金に、より日本の金融資産にさらなる投資をしていただくという方向で後押ししたい」

GPIFが優れているのは「リスクを取らないことがリスク」であることを実践している点”とマーケットアナリストの田口れん太氏は言う

 片山さつき財務大臣が閣議後の記者会見でそう発言したのは、7月10日のこと。この時、160円台に突入してもなお先が見えなかった超円安の流れを変えるため、年金を使ってまで“円買い”の介入をしたいというわけだ。財務省にとってGPIFのマネーはそれほど魅力的に映っているということでもある。同法人の運用資産は、約300兆円。年金保険料のうち、余った分を運用したものだというが、そもそも年金とは余るものなのか?そして、どんな手法でここまで増やしたのだろうか。

 我が国の公的年金受給者の年金総額は年間約60兆円(国民年金、厚生年金など)。現役世代が保険料として支払い(ほとんどは給料からの天引き)、それを主に高齢者が受け取るというのが、基本的な仕組みである。GPIFは、その年金保険料の一部を使って資金運用を行っている。

「国民の皆さんからお預かりする年金の保険料率は法律で決まっています。しかし、企業の収益が良かったり、ボーナスが上がったりすると、当初に想定していた以上の年金保険料が政府の会計に入ってくる年もあります。我々はその上振れた分を預かって運用しているのです」(GPIFの担当者)

 GPIFが運用をスタートしたのは2001年度。当初は、大きな含み損を出して国会で問題になったこともあったが、着実に利益を積み上げ、25年度末でなんと約41兆円を稼ぎ出した。元本を合わせると約294兆円に達している。その後の株価の値上がりを考えれば26年7月末時点でさらに増えていることは間違いない。昨年度は国庫に約7000億円を納付しており、逼迫する年金財政にとっては孝行息子である。もちろん、他国を見まわしても世界最大級の機関投資家だ。

 とてつもない金額ではある一方、GPIFの組織自体は中小企業並みだ。同法人によると職員数は217人。そのうち47人が有期雇用で運用の担当者だという。巨額の資金をたったこれだけで動かしていること自体が驚きだが、実際の運用は外部の民間運用受託機関(投資ファンドなど)が行っており、GPIFの主な役割は資金の割り振りだという。

「運用担当者のほとんどが、他の金融機関からの転職組です」(同)。彼らの平均年収は1700万円。ファンドマネージャーとして多いのか少ないのかはさておいて、政府系組織の職員にしては高給であることは間違いない。しかし、ここで注目したいのは、その安定した運用法である。

リスクを取らないことがリスク

 もともとGPIFは、国内債券(主に国債)での運用が大半を占めていたが、14年に安倍政権のもとで資産の内容を大幅に多様化、今日にいたっている。運用先は、国内株式、国内債券、外国株式、外国債券。現在はそれぞれ4分の1ずつ割り振って、これを厳格に守っている。運用成績を見てみよう。過去の20年の年間騰落で比較すると、日経平均は14勝6敗。一方、GPIFのそれは15勝5敗だ。上昇率は、日経平均株価のほうが上だが、投資で重要視される変動率(ボラティリティ)では、GPIFのほうが勝っている。

 マーケットアナリストの田口れん太氏が言う。

GPIFが優れているのは、私たちの年金を運用していながら“リスクを取らないことがリスク”であることを実践している点です。40年を超える長期の運用を視野に置いていますが、長期運用の最大のリスクはインフレなのです。だから、元本保証のある国内債券を全体の25%にとどめ、元本保証のないリスク商品を75%保有するというポートフォリオにしているのです」

 たとえば資産のうち日本株が上がったとする。すると儲かった分を売却して、今度は日本国債を買う。また、米国債の値段が上がっていたらそれを売って日本株を買う。こういった“リバランス(再配分)”を四半期ごとに行って、どれか一つの資産に偏らないようにしているのだという。分散投資で使われる“卵をひとつの籠に入れない”という教科書みたいな運用をしているわけだが、実をいえば、その手法を真似た投資法も可能なのだ。ここからは、その「GPIF尻馬投資法」を伝授させていただく。

4分の1ずつ買う

 GPIFは毎年、ホームページで保有資産を公表しており、投資先は約2万銘柄にのぼる。たとえば国内株式のリストを見ると、トヨタ自動車、三菱UFJフィナンシャル・グループ、日立製作所をはじめ約1700銘柄がずらりと並ぶ。国内債券だと、国債から始まって地方公共団体の債券など約5000銘柄。これらをそっくり真似て買うことは不可能ではあるが、「疑似的な投資法は可能です」と先述の田口氏。

「日本株だったらTOPIXのETF、外国株はS&P500のETF、そして日本国債ETF、外国債券はドル建てMMFか米国債ETFを、それぞれ4分の1ずつ買っておくのです。そして四半期ごとにリバランスする。面倒な作業ではありますが、安定した投資法ではあります」(田口氏)

 いかがであろうか。世界最強クラスの政府系ファンドと同じ投資法なら、初心者でも手を出しやすいはずだ。

デイリー新潮編集部